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2013/12/22(日) 22:13:53.30 ID:QCk4Nap1o
アナウンサーが今日は冬至だと言っていた。
一年で一番昼が短い日ということらしい。
それはひっくり返すとつまり一年で一番夜が長い日ということだ。
正確には違うかもしれないが、おおむね間違ってはいないと思う。
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2013/12/22(日) 22:14:37.45 ID:QCk4Nap1o
ぼくが玄関を出ると既に外は暗かった。
日没からもう二十分くらいはたっているしそうなるとあっという間に暗くなってしまうのが冬だ。
西の方の空には鈍い光に照らされる冬雲があり、風除室の引き戸の隙間からは甲高い音が響いている。
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2013/12/22(日) 22:15:18.55 ID:QCk4Nap1o
玄関先のハナミズキはもう夜の闇に呑まれてしまっていて、近くによらなければそれとは分からなかった。
枝には雪がところどころくっついていて、それが街灯の光を反射している。
寒いけれど風はない。
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2013/12/22(日) 22:15:59.37 ID:QCk4Nap1o
足元に水たまりが光る。
道の両脇は柵が立てられ、だがその内側には背の高い草が生え散らかっているだけ。
秋ならば虫の合唱がうるさいくらいに聞こえただろうけれど、今はささやかに草がこすれる音しか聞こえない。
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2013/12/22(日) 22:16:43.23 ID:QCk4Nap1o
それは街灯の下で、不格好に揺れていた。
すぐに人と気づいたけれど、どうやらおかしいのは歩き方のようだった。
右足に力をかけて、左足を引きずる要領。
足の悪い人の足の運びだ。
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2013/12/22(日) 22:17:11.24 ID:QCk4Nap1o
「大丈夫ですか?」
ぼくの声は心配よりもためらいの響きがありありと出ていたと思う。
彼女は腕を突っ張って上体を起こし、こちらに顔を向けた。
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2013/12/22(日) 22:17:43.67 ID:QCk4Nap1o
「ありがとう」
再び助け起こすと彼女は何故かにやにやしながら「シナノ」と続けた。
「シナノ?」
「わたしの名前。みたいな」
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2013/12/22(日) 22:18:15.69 ID:QCk4Nap1o
シナノに家の場所を訊くと、ぼくが元来た住宅地の辺りにあるらしかった。
「え?」
ぼくは怪訝に思ってもう一つ訊ねた。
「家に帰るところじゃないの?」
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2013/12/22(日) 22:19:33.66 ID:QCk4Nap1o
大通りには帰宅の車が何台も行き交っていたが、歩行者はいなかった。
信号を渡って、真っ直ぐ進んだ。
川沿いの道で、右側に土手、左側に昔ながらの小ぢんまりとした民家が並ぶ。
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2013/12/22(日) 22:20:07.01 ID:QCk4Nap1o
それからまたしばらく黙々と二人で進んだ。
右に小さな橋が川をまたいで掛かっていて、向こうに大きな建物の影が見えた。
確か小学校があったはずだ。かつてはぼくも通っていた小学校である。
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2013/12/22(日) 22:20:32.81 ID:QCk4Nap1o
仕方なくぼくは別の話題を探した。
シナノのような若い子の話すことなんて分からなかったし、同世代とだって上手く話せない自信があったけれど仕方なくだ。
「夜って閉じてるよね」
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