過去ログ - ありす・イン・シンデレラワールド
1- 20
2:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 08:55:47.16 ID:Gcj069EQ0
 1

 秋から冬へと空気の冷たさが変化していく季節、一人の少女が草木を掻き分けるようにして走っていた。時は空が白み出す前の誰もが未だ夢の中、そこは人々にとって間隙であり一人の少女はとある総合病院の緑多い中庭の奥へと足を踏み入れていった。
 その姿はまるで、ウサギを追ってこれから不思議の国へと迷い込む"アリス"のようであった。病や怪我を負っている人の心を癒やすために設けられた草木生い茂る中庭は大きく、少女が進む奥へと向かうほど緑は深くなっていく。
 腰まで届く黒髪をハーフアップにして青い大きなリボンで留め、チェック柄のマフラーを首元に巻いて袖と裾に意匠を凝らしたコートの下には学校の制服を着ている。コートの裾からは深い青のプリーツスカートが覗け、そこから伸びる細い脚は頼りない。
以下略



3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/01/11(土) 08:58:10.07 ID:gACGd1+AO
橘ァ!今日は俺と子作りのレッスンだ!!


4:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 08:58:19.06 ID:Gcj069EQ0
「それなら」
 ぐっと拳を握り、灯が掴んだ答えは最初から彼が気付いていたものだった。灯は自分と同じく少女に置き去りにされたチェック柄のマフラーへと視線を向けた。


 その日の夕暮れ時、ありすはあの場所へと戻ってきていた。逃げるように、実際に逃げ出したのだが慌てて鞄とタブレットPCを手に取ったためにマフラーが手からこぼれ落ちてしまったのだ。本当ならすぐに取りに戻るはずなのだが逃げ出した相手を前にどう対処すれば良いのか分からずに学校からの帰りに意を決して足を踏み入れたのだ。
以下略



5:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/01/11(土) 08:58:52.15 ID:gACGd1+AO
橘ァ!今日は俺と子作りのレッスンだ!!


6:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:00:05.89 ID:Gcj069EQ0
 2

 アイドルプロデューサー灯と、少女ありすが出会いと別れと再会を果たした日から数日が経ったある日にありすは『三笠 灯』と書いてある名刺を手にして応接用のソファーに腰掛けていた。
 彼女が居るのは大きなオフィスビルの一フロア、デスクが並ぶ事務所の一画にて目隠しとなる仕切りが設置、ソファーが足の短いテーブルを挟んで向き合っている。その片方にちょこんと座るありすは心細さを感じてしまう。
 灯はありすにアイドルとなってもらうためにスカウトして相手の両親と顔を合わせて承諾をもらい、ありすを事務所へと招いたのだ。病院での中庭で少ない言葉を交わした日から再び会うのはこれで初めてとなる。
以下略



7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/01/11(土) 09:01:25.23 ID:SHXNhlMfo
もうすこし行間空けるなりしないと読みにくい


8:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:01:32.17 ID:Gcj069EQ0
 3

 それから数日後、オレンジ色の空の下でありすは河川敷沿いを走っていた。長い髪を後ろで束ねて真っ青なジャージ姿をして横には同じくジャージ姿の灯がいる。その後ろには自転車に乗るちひろも居て単純な話、体力作りのために二人で走り込みを行っているところであった。
 ありすの初仕事、宣伝材料用写真の撮影を終えた後にボイストレーニングを行ったのだがそこで重大な事実が判明する。橘ありすという少女はアイドル活動をするには決定的に体力が足りないのだ。
 簡単なボイストレーニングを十分間ほど続けただけで全身から汗を噴き出して息を切らしてしまった、更には気分の悪さまで訴える始末。トレーナーに指摘を受けて灯はありすに基礎体力をつけさせるためにランニングをしていた。
以下略



9:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:03:31.34 ID:Gcj069EQ0
 申し訳ありません。行間については今回は利用していないのですが有用に使う場合があるので空けません。


10:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:05:45.97 ID:Gcj069EQ0
 4

 またある日、スチール製空気振動遮断ドアを越えて防音設備の整ったレッスンスタジオにてジャージ姿のありすは壁を覆うパネルミラーに映る自分と向き合ってダンスの振り付けを一つ一つ確認しながら踊っていた。
 まだアイドルとしてデビューをしていない少女に持ち歌もそれに合わせた振り付けもなく、ありすは自分が所属するマネキプロダクションに在籍する先輩アイドルのそれを真似ていた。
 いつも持ち歩いているタブレットPCを鏡に立てかけて画面に映る眩しい笑顔を浮かべるアイドルの動きを再現する。それを巨大な鏡できちんと再現出来ているか確かめていく。そこに灯がやって来る。
以下略



11:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:07:14.89 ID:Gcj069EQ0
「あははっ、それも何でかよく言われるんだよ」
 ありすが深く息を吐いてそれと共に肩から力を抜いていく。脱力を自然と出来る自分に少しだけ驚きながら年上の男に何を言っても駄目そうなので一緒に踊ることを決めて鏡に映るちぐはぐな男女と向き合う。
 二人は踊りながら、
「プロデューサーはどうしてアイドルプロデューサーになったんですか?」
 ありすから声を掛けられて灯はいつもよりも声を弾ませて、
以下略



12:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:10:07.98 ID:Gcj069EQ0
 5

 オフィスビルの一フロアにある三笠 灯と橘ありすが籍を置くマネキプロダクションはアイドル業界では中堅どころとしてそこそこ名の通った事務所であった。自社ビルではないもののビル群の中で頭一つ高いビルに収まっている。
 そのビルの中にはアイドルとは縁遠い企業も入っているために時として背広を着た男性と奇抜な格好をしたアイドルが同じエスカレーターに乗ることもある。最上階ボタンを押せないほど小さな女の子とその母親と同い年のOLが乗り合わせることもあり、このビル内では日々奇々怪々な光景が展開されていた。
 そんな日常の中で終業を知らせる夕暮れ時、オレンジ色に全てが上塗りされるが冬場のために今はこの時間は儚い。窓から夕日の色を受け取る通路を背の高い男と背が低く髪を三つ編みで纏めた女性が並んで歩く。
以下略



50Res/84.63 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice