2: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:01:48.61 ID:2jYFvZQ+0
あるところにそれはそれは可愛らしい女の子がいました。
目鼻立ちの整った顔に、ガラスの鈴のように透き通った声。流れる黒髪は艶やかで、誰からも好かれる良い性格。
天は彼女に全てを与えたというような、そんな子でした。
ですが、自分の持つものを自慢するわけでもなく、爽やかに過ごす子でしたので、世界中の人が彼女を愛しました。
3: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:02:28.15 ID:2jYFvZQ+0
やがて時はたち、二人は美しい女性へと成長しました。しかし、やはり愛されもてはやされるのはあの子だけ。
しだいに彼女は、あの子がいなければいいのに、と思うようになりました。
あの子がいなければ、彼女が世界で一番美しい女性になるのです。
あの子がいなければ、世界中の人々の愛は、彼女の方へ向くのです。
4: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:03:50.84 ID:2jYFvZQ+0
彼女の憎しみは大きくドス黒く成長していました。大きな大きな不の塊になりました。
そこに目をつけたのは、一匹の悪魔でした。
大昔、それこそ西暦が始まるずっと前、悪魔は大いなる存在として力の限りを振るっていました。
ですが、力をつけ強くなった古の人たちに封印され、力を失ってしまったのです。
5: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:04:56.68 ID:2jYFvZQ+0
「だったら、だったら、全世界があの子を嫌うようにして!!」
6: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:06:28.04 ID:2jYFvZQ+0
翌朝起きると、悲鳴が聞こえました。
あわてて外に出てみると、あの子が殴られ蹴られていました。
「やめて!! お母さん、やめて!!」
7: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:08:31.61 ID:2jYFvZQ+0
野次馬も入り、暴行の嵐が始まりました。白い陶器のようだった肌が血と汗と泥で汚れていきます。
男があの子の腹を蹴り抜きました。
女があの子の足を踏みつけました。
気絶しそうになったあの子に、老人が冷たい水を浴びせました。
8: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:09:13.84 ID:2jYFvZQ+0
「あ、ぐ、ああ、あ」
指先は妙な方向にひしゃげ、血濡れで震えるあの子を見て彼女はだんだんと吐き気を催すようになりました。
「どこかに片付けてくれない?」
9: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:10:08.48 ID:2jYFvZQ+0
それからというもの、彼女は世界一の美しい女性としてもてはやされ、愛されるようになりました。
彼女の笑顔は花が咲き誇ったようで、彼女の声は小鳥のさえずりのようだと口々に褒め称えられるようになりました。
「ふふ、うふふ」
10: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:11:32.04 ID:2jYFvZQ+0
ある朝のことです。彼女は朝日を浴びに屋上へと出ました。
柔らかな日差しが彼女の髪を輝かせ、花のにおいが優しく彼女をつつみこみます。
うーんと伸びをしますとなにやらあくびが出てきましたので、口に手を当ててふわあ、と可愛らしく息を吸い込みました。
11: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:13:39.27 ID:2jYFvZQ+0
あの子は誰かに脱がされたのか、生まれたままの姿で立っていました。
頬は腫れ上がり、美しかった髪は無残に切られ、過去の美しさをとどめていませんでした。
指先は紫色に変色し、太ももからは血が流れていました。
お尻や背中には無数に蚯蚓腫れが走り、足にも青あざがいくつもありました。
12: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:15:00.60 ID:2jYFvZQ+0
あの子は死んでしまいました。しかし、彼女はまったく悲しくありませんでした。
どうやって屋上までたどりついたのかは分かりませんが、あの子はもうこの世にはいません。
名実共に、彼女は世界で最も美しい女性になったのです。
彼女の気分は爽快でした。
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