過去ログ - ひよっ子魔女とその師匠
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31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:19:30.99 ID:TmyX6+Eao

「君は魔法の助けによって何かがなくなったのは分かっていた。
 実際に確かめてみて何かがなくなった実感もあった。
 だけどじゃあ何がなくなったのか、それは分からなかったんだ」
 違う? と夫は訊いてきた。
以下略



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:20:15.06 ID:TmyX6+Eao

 光の一つが宙に舞った。
 ふよふよと頼りない軌道を描いてヘレナの方に近寄ってくる。
 ヘレナはそれを振り払おうとした。
 が、光は手の間をすり抜けた。
以下略



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:20:57.63 ID:TmyX6+Eao

 あれは。
 そう、「大好きだ」というあの言葉は。
 夫の最期の言葉だ。



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:22:06.35 ID:TmyX6+Eao

 小さい頃は町住みで猫を飼っていた。
 その頃は自分も人並みに明るい性格で笑顔もそれなりに上手だったように記憶している。
 人と自分がどこか違うと感じるようになったのは猫がすっかり大人になったあたりで、みんなと同じように物を考えることがいつの間にかできなくなっていた。

以下略



35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:22:34.55 ID:TmyX6+Eao

 確か自分が十四歳になった頃だ。
 猫が死んだ。
 干からびるほど泣いた。

以下略



36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:23:11.23 ID:TmyX6+Eao

 各地をさすらっているうちに、自分が魔女であることを知った。
 世の不思議、魔法とともにある存在らしい。
 確かにいろいろなことが不思議と思い通りになるなとは思っていた。
 だがどうでもよかった。
以下略



37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:23:53.92 ID:TmyX6+Eao

 そんなことが何回も続いた。
 つまり何回も青年の顔を見ることになった。
 本当奇遇だねえと彼は笑ったがこちらは理由が分かっていた。
 魔法だ。
以下略



38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:24:45.73 ID:TmyX6+Eao

 あるとき山越えでドジを踏んだ。
 地面の窪みに気づかずに足を挫いたのだ。
 あまりにひどくひねったのでそこから一歩も動けなくなった。
 食料は最低限しかなく防寒の準備も十分ではないのに雪が降りそうな空模様だ。
以下略



39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:25:18.76 ID:TmyX6+Eao

 それからいろいろあった。
 海に出て一緒に釣りをしたり長い地底洞窟を手をつないで歩いたり。
 ある村に住まいを定めてからは大きな出来事はそうそう起きなくなったが、それでもいろいろあったことには違いない。

以下略



40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:25:56.20 ID:TmyX6+Eao

 夫は流行り風邪で肺を悪くして亡くなった。
 大好きだ。
 彼はあえぐように言った。
 大好きだよ、ヘレナ。
以下略



41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:26:24.49 ID:TmyX6+Eao

 どうということはない。
 その時に頭に浮かんだのはそういう乾いた言葉で、本当に心からどうでもいいと思った。
 一人だったのがそうじゃなくなり、そしてまた一人に戻ったというだけだ。
 だから自分は泣かなかった。
以下略



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