過去ログ - 全身が鉄でできている人の話
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5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:35:52.22 ID:SluoaBc3o
小学校では体育館裏にある小さな農園、中学校では屋上へと続く階段の踊り場、
高校では教師から鍵をちょろまかした生物準備室。
そのあたりが彼の定位置だった。
誰かが訪れる心配ない場所でしか彼の気は休まらなかった。
一人きりで腰を落ち着けて、本を読んだり宿題を済ませたりしながら、
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:41:29.09 ID:SluoaBc3o
こんな見てくれだからこそ、せめてある程度の学歴は持っておいた方がいい。
進学を決めたのは自分でそう判断したからだったけれど、
それでもこれから始まる大学生活のことを考えると彼の気持ちは重たく沈んだ。
どうせまた、遠巻きにされるんだろうなあ。


7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:47:44.04 ID:SluoaBc3o



大学生活が始まってからも、彼の日々の過ごし方は特に変わらなかった。
突き刺さる視線に気づかないふりをして素早く移動、
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:53:26.63 ID:SluoaBc3o
彼はゆっくりそのベンチに腰掛けて、それが自重で壊れてしまわないことを注意深く確認した。
それからため息を深くついて、この新しい秘密基地の景色を改めて眺めた。
亀裂を埋めた痕跡が所々残る校舎、苔むした地面、ドロドロになった排水溝、そして冷たいベンチ。
このじめじめした薄暗い空間は、たいそう彼の気に召した。

以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/02(土) 17:56:54.75 ID:JK49vbgvO
新種のSCPかな?


10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/02(土) 17:59:39.17 ID:vOYu1CYh0
シザーハンズじゃないですかー


11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:04:26.53 ID:SluoaBc3o
秘密基地を見つけてからしばらく経ったある日。
彼が代わり映えもなくベンチの上で本を読んでいると、
急に誰かの足音が近付いてきた。
それまでこの場所を人が通りがかることなんて一度もなかったから
これだけでもう彼は飛び上がらんばかりに驚いた。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:09:14.85 ID:SluoaBc3o
真っ白になった視界が色を取り戻すまでに数秒の時間を要した。
なんとか極度の驚きと緊張から身体の主導権を取り返して、
顔は文庫本に向けたまま、彼は横目で隣の様子を窺った。

俺のことを知っていて近づいてきたのだろうか。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:14:11.79 ID:SluoaBc3o
彼は顔を上げて、隣を見た。
そこに座ってたのはおそらく大学生であろう女の子で、
小柄な体躯と不釣り合いに大きな鞄とギターケースを肩に負い、
そして厳ついヘッドホンを首から下げていた。

以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:19:35.27 ID:SluoaBc3o
彼はしばらく黙ったままだった。
これは別に彼女の話を聞こうとしていたわけではなくて、
単純に彼の喉から声が出てこなかっただけだ。
経験がある人には分かるだろうけれど、長らく何も話していないと
言葉を口にするのはどんどん億劫になってくる。
以下略



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