15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:33:56.96 ID:Ha53zHbko
「覚えてないです」
「……そういうものか?」
「さあ」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:34:54.52 ID:Ha53zHbko
「僕も、似たような理由で別れたような気がします」
「君は言われた側?」
「ええ、はい。たぶん」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:37:00.38 ID:Ha53zHbko
――――
プロダクションのビル、その屋上へ続く扉はリウマチ持ちだ。
錆びついた蝶番がギシギシと鳴っていて、微かに歪んだ隙間から風が通るので、
扉から内側はとても寒い。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:38:26.83 ID:Ha53zHbko
「他に吸えるところ、なかったっけ」
「どこもかしこも禁煙ですから」
一口吸うと、もう根本まで灰が伸びていて、ジジと音がした。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:39:00.89 ID:Ha53zHbko
「鱗雲だ」
「秋の空ですから」
「青い空だな」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:40:52.39 ID:Ha53zHbko
屋上を降りて、デスクから荷物を取って、車へ乗り込んだ。
助手席でシートベルトを締めたあいさんの横顔を、僕は盗み見た。
彼女とは軽口を叩き合うくらいに、打ち解けているはずだった。
以前から、打ち解けていると思っていた。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:41:42.67 ID:Ha53zHbko
狭い車内が寒いほどに静かなのが気詰まりだったのか、
あいさんはカチリとカーラジオの電源を入れた。
色々チューニングを変えて、いつもの番組に落ち着いた。
ちょうどリクエストの曲が終わったところで、その曲とバンドについて解説していた。
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:43:57.28 ID:Ha53zHbko
ラジオは長々とした解説と雑談が済んで、ようやく次の曲に移った。
また同じバンドだった。
「好きってほど、好きじゃない。嫌いではないけど」
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:46:18.36 ID:Ha53zHbko
曲が終わり、長々とした解説と雑談のあと、また次の曲が始まって終わる頃、車は目的地へ着いた。
駐車場に停めて、二人で車を降りた。
昼下がりの蕩けるような太陽が、アスファルトにぼたぼたと日を落としていた。
僕らの他に人は居なくて、鮮やかでグロテスクな秋の陽があいさんの姿を写している。
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/10/06(月) 21:48:25.05 ID:MXjb6Z3ro
いいねいいね
俺もピース党だからたまらんね
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:48:32.58 ID:Ha53zHbko
――――
秋はいつの間にか始まって、いつの間にか終わるものらしい。
十一月ともなると、雪は降らないまでも乾いた風は斬りつけるような冷たさだ。
もうじき冬が来る。
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