過去ログ - 東郷あい「ピースの匂いがする」
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22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:43:57.28 ID:Ha53zHbko
 ラジオは長々とした解説と雑談が済んで、ようやく次の曲に移った。
 また同じバンドだった。

「好きってほど、好きじゃない。嫌いではないけど」

以下略



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:46:18.36 ID:Ha53zHbko
 曲が終わり、長々とした解説と雑談のあと、また次の曲が始まって終わる頃、車は目的地へ着いた。
 駐車場に停めて、二人で車を降りた。

 昼下がりの蕩けるような太陽が、アスファルトにぼたぼたと日を落としていた。
 僕らの他に人は居なくて、鮮やかでグロテスクな秋の陽があいさんの姿を写している。
以下略



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/10/06(月) 21:48:25.05 ID:MXjb6Z3ro
いいねいいね
俺もピース党だからたまらんね


25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:48:32.58 ID:Ha53zHbko
――――

 秋はいつの間にか始まって、いつの間にか終わるものらしい。
 十一月ともなると、雪は降らないまでも乾いた風は斬りつけるような冷たさだ。
 もうじき冬が来る。
以下略



26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:49:55.81 ID:Ha53zHbko
 あれ以来、一度もあいさんに好きだと言っていない。
 もしかしたら、僕が彼女を好きだということも、伝わっていないのかもしれない。

 もう一度言う勇気はある。本当だ。
 本当だが、あいさんに何度言っても伝わらないと、不思議と確信を持っていた。
以下略



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:52:25.40 ID:Ha53zHbko
 秋の終わり、夕暮れの土手の道を歩いている。
 空は血が滲んだような赤紫で、映る物全てを影絵に変えていた。
 燻る雲と対照的に空気は冷たく、風に身震いしてしまうほどだ。

 高架の下をくぐり抜けて行ったところで、僕は足を止めた。
以下略



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:54:45.17 ID:Ha53zHbko
 踵を返し、高架下の土手を覗きこんだ。
 誰かが土手に腰を下ろして、サックスを吹いていた。
 あいさんだとすぐに分かった。

 彼女の丸められた背中と同じく、サックスの音は弱々しくて今にも消えそうだった。
以下略



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:56:56.30 ID:Ha53zHbko
 土手を歩いているうちに、早送りの太陽が地平の裏へ転げて見えなくなった。
 空はまぶたを閉じて、暴力的な赤を失い、夜へと翻った。

 僕はこの夜にあいさんが取り残されているのが怖かった。
 冷たい空気が指先を濡らすので、僕は高架下へ戻ることにした。
以下略



30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:58:21.24 ID:Ha53zHbko
「いつも、ここでサックスを吹いているんですか」

 ようやく息切れが収まって、僕は言った。

「君は……その、なにしてるんだ」
以下略



31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:59:18.33 ID:Ha53zHbko
 そう言うあいさんはジーンズにシャツ、それにカーディガンだけで寒そうに見えた。
 僕は上着を脱いで、彼女の肩にかけた。

「寒そうです」

以下略



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 22:01:57.62 ID:Ha53zHbko
「たまにね。ここにサックスを吹きにくる。夕方とか、夜とか。雰囲気あるだろう?」

「寒くないですか」

「平気さ。夏は蚊が出るからもうちょっと向こうで吹くんだが、秋から冬は高架下で」
以下略



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