過去ログ - 「怪物は誰かと友達になりたかった」
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1:名無しNIPPER
2015/03/07(土) 01:29:20.81 ID:eA/I8H4n0
怪物はひどく醜い格好をしていた。
誰からも忌み嫌われる事なんか分かっていたし、世の中の誰からも必要とされていないことも理解できていた。
水に写る自分は地獄からの使者。腕は枯れ木のようで、大事なものが抜け落ちたように窪んだ瞳には、何も煌めいてはいなかった。
怪物は聡明である。
他人を襲う事もしなければ何物をも殺めることを良しとしなかった。
朝早くに起き出して水を汲み、生きるのに要る分だけ木の実を取って食べる毎日。
そうして誰にも見られないようにひっそりと死んでいくのだろうと半ば諦めていた。
言葉は知っていた。
でもここ何年も、ただの一言すら話さない日々が続いていた。
自分が発する声は地鳴りのように重く響いて、聞けば鳥すら逃げていく。
結局誰にも届かないので全部独り言。
朝にさえずる鳥の歌を邪魔しないように、怪物は毎日必死に息だけで泣いていた。
怪物は聡明である。
『誰か』の居る連中よりもずっと怪物は聡明である。
子どもの作り方も空の蒼さの秘密も鶏と卵はどちらが先かも通りゃんせの行き着く先すら知っていたが、誰とも共有できない知識のなんと虚しいことか。
本をめくるたび、怪物の頭の中には嫌なことが増えた。
孤独だった。
もう物理法則でもヘドロでもビニール袋でも、何でもいいから友達が欲しかった。
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2:名無しNIPPER
2015/03/07(土) 01:34:21.90 ID:eA/I8H4n0
寂しくて寂しくてどうしようもなくなっても、死ぬ事は出来なかった。
もしかすると期待なのかもしれない。
半ば諦めていたのは本当だが、残りの半分ではまだ、誰にも気づいてもらえないSOSを出し続けているのだ。
今ただの一人でも友達が居て、手を握りながら傍にいてくれたら、それだけで何回[ピーーー]るか分からない。
3:名無しNIPPER[sage]
2015/03/07(土) 01:34:55.91 ID:DBZ06cOZ0
お、やるのか、頑張れ
4:saga
2015/03/07(土) 01:40:26.07 ID:eA/I8H4n0
「いっそ地中に手足を縛って沈めてください。どんなに望んでも何も出来ないように、そしてそのまま窒息させて失意のままに死なせてください。いっそ太陽にすら照らされる権利のない透明にしてください。触れたいと思って伸ばした手で誰かが穢されないように、そしてそのまま誰にも気づかれないよう、森の木陰でそっと存在を消してください」
或る日怪物は窓から差し込む日差しに向かって膝をついた。
こんなお願いも聞き入れてもらえないとなると、とうとう神さまですら愛想をつかしてしまったか。はたまた、最初から神に見向きもされなかったからこんな姿に生まれたのか。
5:saga
2015/03/07(土) 01:45:35.86 ID:eA/I8H4n0
何万滴目の涙を拭いてふと外を見ると、家の傍にある湖にいつもと違うものが見えた。
さらさらと流れる金色の髪と、真っ白な肌。
人間の女の子?
6:saga
2015/03/07(土) 01:46:16.48 ID:eA/I8H4n0
【きよやか・きよらか】清く美しいさま。
【きよら】垢抜けして美しいさま。《第一流の気品ある美》
【きよげ】美しいさま。見た目にきれいなさま。《表面上の美、第二流の美》
【きよけく】くもりや汚れのないこと。
【きよし】くもりや汚れがなく、余計なものがないこと。《きたなしの対》
7:saga
2015/03/07(土) 01:46:49.28 ID:eA/I8H4n0
全部違った。
彼女はそんな人じゃない。
もう一度見て確かめなくては。
この窪んだ闇みたいな目に彼女を反射させてみたい。
8:名無しNIPPER[sage]
2015/03/07(土) 02:04:49.78 ID:8dLkJ75DO
期待
9:saga
2015/03/07(土) 02:09:49.29 ID:eA/I8H4n0
花瓶を倒した音で彼女は振り向いてしまった。
どうしてもこの姿は見せたくなかったが、などと冗談を言う隙もない。
目が合った。
満月の瞳が大きく見開かれる。
10:名無しNIPPER[sage]
2015/03/07(土) 02:21:02.41 ID:DBZ06cOZ0
sagaそこちゃうで(小声)
11:名無しNIPPER[sage]
2015/03/07(土) 03:09:40.09 ID:DTKd2+oDO
浦沢直樹のmonsterかな?
12:名無しNIPPER[sage]
2015/03/07(土) 08:14:04.21 ID:8dLkJ75DO
怪獣のバラード思い出した
13:名無しNIPPER[saga]
2015/03/08(日) 15:07:50.97 ID:fFk3narc0
「もしもし」
いませんよ。
「誰かいませんか」
14:saga
2015/03/08(日) 18:28:15.79 ID:fFk3narc0
「ごめんください……おや? 布団が丸まっている」
もうわざとやっているんじゃないかと思う程堂々と入ってきてしまった。
15:名無しNIPPER[saga]
2015/03/08(日) 18:41:05.97 ID:fFk3narc0
「お邪魔しまーす」
「しすぎですよ!帰ってください!!」
「来たばっかりなのに、どうしてそう冷たいことを言うのですか?」
16:名無しNIPPER[sage]
2015/03/08(日) 18:53:17.61 ID:vu/BC83Wo
フランケンシュタインの怪物的なアレでいいのかな
17:名無しNIPPER[saga]
2015/03/08(日) 19:06:03.44 ID:fFk3narc0
「『鍵』って面白いな。でもどうして」
「帰ってくれ……」
18:名無しNIPPER[saga]
2015/03/08(日) 19:15:24.21 ID:fFk3narc0
錆びついていた喉は急に動かして不具合を起こした。
気管がきゅっと狭まって咳が出る。
口元に少し垂れた涎は、どう猛さを増すポイントにでもなっただろうか。
19:名無しNIPPER[sage]
2015/03/10(火) 20:43:45.84 ID:8vMxHb7Io
しえん
20:名無しNIPPER[saga]
2015/03/16(月) 19:20:48.89 ID:FXxuJLph0
「わわ分かった、ごめん、そんなに言うつもりは……俺に出来る事なら何でもするから……」
「ホント?!」
「え?!」
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