83: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 04:40:37.22 ID:KlUD8s2/0
異界物流センターからディーの運転するスポーツカーがどんどん離れていく。ディーの運転するスポーツカーを猛追する車の群れがあった。その数二十。数が多いだけならよかったのに、見た目が悪い。
どれもこれも非常に物騒な車ばかりだった。戦車に車の車輪をつけたような車、装甲車である。
84: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 04:45:15.04 ID:KlUD8s2/0
ディーのうなずくのを合図に京太郎は助手席の窓から体を乗り出した。びゅうびゅうと風が吹いていた。京太郎の髪の毛が風に吹かれてゆれていた。
しかし京太郎の体は少しもぶれなかった。京太郎はこれから、デリンジャーという小さな銃を使って装甲車たちを足止めするつもりなのだ。しかもはじめて使う武器を使ってである。無謀だった。しかし、これしかなかった。京太郎の目に恐れはない。
一方で、体を乗り出した京太郎を見て虎城は驚いていた。顔色が真っ青だ。目を大きく見開いていた。虎城は見てしまったのだ。何の支えもない状態でスポーツカーの窓から京太郎が上半身を外に出している姿を。
85: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 04:49:54.13 ID:KlUD8s2/0
少しはましになるかとほっとしたところで、虎城が悲鳴を上げた。小さく短い悲鳴だった。彼女は自分たちを追いかけてくる怪物の群れをみたのだ。
スポーツカーを追いかけてくる怪物の群れは松常久の部下たちが呼び出したものだ。装甲車が一時的に使えなくなったために仲魔を使うことで京太郎たちを追い込もうとしたのである。
この怪物たちというのはまったく統一感がなかった。羽の生えた怪物、四足歩行の怪物、半分透けているような怪物と、とりあえず呼び出したという感じがしてしょうがない。まともに統率された軍団ではなかった。
86: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 04:54:29.04 ID:KlUD8s2/0
何十回と引き金を引いたあと、少ししてから空を飛ぶ悪魔たちが落ちていった。まだまだ空を飛ぶ悪魔は多い。空はほとんど追いかけてくる悪魔たちで占められている。しかしそれでも何匹かの悪魔は落ちていた。
京太郎の乱射が続いた後、空を飛ぶ悪魔たちからの攻撃が緩んだ。そうするとスポーツカーが一瞬、無重力状態になった。何が起きたのか把握できたのはディーだけだった。
87: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 04:57:24.06 ID:KlUD8s2/0
怪我を回復している虎城を確認して京太郎は助手席に戻った。
そしてあっという間に窓から体を乗り出し、はるか上空を睨みつけた。助手席に戻るときに、スポーツカーの中にある不思議な空間に放り出されていたデリンジャーを拾っている。
京太郎が動き始めたのは、不思議な気配を感じたからである。なんとなく何かが来ているような気がする。そんな不思議な気持ちに従って、京太郎は動いたのだった。
88: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:00:32.90 ID:KlUD8s2/0
暗闇の中を車は進んでいった。ヘッドライトが進行方向を照らしてはいた。しかし光が届かない部分が多すぎた。太陽の光が奈落の底まで届かないのだ。ランタンのひとつでもたっていればいいが、そういう類のものもない。完全に真っ暗闇。頼れるのはヘッドライトだけだった。
運転手のディーは困ったようにこういった。
89: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:03:39.15 ID:KlUD8s2/0
オロチの石碑の前に車を止めるとディーは運転席から降りて、石碑に近づいていった。非常に早足だった。そして石碑に手を触れこういった。
「オロチよ、マグネタイトを対価に支払う。どうか龍門渕までの道を教えてほしい」
これがオロチに道を教えてもらうための呪文なのだ。しかし呪文といってもこの通りに唱えなければならないわけではない。マグネタイトを支払うので、道を教えてほしいですとはっきりと伝えさえすれば、オロチは答えてくれる。
90: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:07:39.77 ID:KlUD8s2/0
京太郎がスポーツカーに戻ったとき、後部座席の不思議な空間で虎城が小さくなっていた。ひざを抱えて震えていたのだ。
助手席に座った京太郎が心配して虎城にきいた。
「大丈夫ですか? 顔色悪いっすよ」
91: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:11:56.36 ID:KlUD8s2/0
ディーは車をいったん止めて、こういった。
「怪しいな。いったいなんだ?」
明らかに怪しい女性から十五メートルほど離れたところにスポーツカーは止まった。ディーが車を止めたのは、怪しい女性が何かたくらんでいる雰囲気があったからだ。それこそ不用意に近づくとパクっとひとのみにされる雰囲気だった。
92: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:14:57.38 ID:KlUD8s2/0
次の道に続く坂道に向けて京太郎は歩いていった。不思議と京太郎は微笑を浮かべていた。恐れはもちろんある。襲い掛かられたとして対応できない可能性もあるのだ。
しかしそれを考えたとしても、目の前の奇妙な女性は魅力的だった。肌がぴりぴりするほどのマグネタイトの圧力。その密度。
「もしも戦いになったとしたらどうなるだろう」
93: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:18:24.25 ID:KlUD8s2/0
マグネタイトを吸い上げている怪しい女性にディーが攻撃を仕掛けようとした。怪しい女性の握手から一秒とたっていない。怪しい女性が京太郎に邪念を持ったのを戦闘開始のゴングと受け取ったのだ。
悪魔がマグネタイトを交渉の材料にすることはある。しかしそれ以上を求めようとするのは見逃せなかった。攻撃の態勢に入ったディーの手のひらに奇妙な力が集まり始めていた。小さな粒が次々と生まれ、太陽の周りを回る惑星のように動き始めている。
戦いが始まるかと思われたが、つかまれていない左手でディーにくるなと京太郎は合図を出した。自分の右手を握る女性の目を京太郎は見つめていたのだ。
265Res/788.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。