20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:17:20.99 ID:lE2tgw5So
ことりはいま、何を見ているのだろう。
ちらと見えた顔は目を閉じたまま、
フェルメールが描いた女性たちのように、安らかな表情をしている。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:17:47.54 ID:lE2tgw5So
では、あとはどうぞ、と手を引くのを今日のことりは許してくれない。
「海未ちゃん。こっちも」
22:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:18:14.09 ID:lE2tgw5So
見上げると、覚悟を決めたのか、
ことりは目をつむったまま少し上半身をそらしてみせているようだった。
両腕はだらりと下がったまま、膝だけ寄せた脚もその先は広げたまま。
23:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:18:40.69 ID:lE2tgw5So
鼻がぶつかりそうなほど、
唇や肌から立ち上るかすかな熱気すら感じる場所まで。
閉じられた瞼にさらに力がこもって、睫毛の一本にまで緊張が伝わる。
前髪から落ちた水滴が涙のように頬を伝っていく。
24:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:19:07.29 ID:lE2tgw5So
しないの? ――ことりが言う。
わかりませんか。 ことりは応えない。
25:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:19:33.84 ID:lE2tgw5So
指を離した途端にことりが呼んだ。
目を閉じたまま私に手を伸ばそうとして空を切っている。
半ばに泡をまとったあの子は毛を刈られかけた仔羊のようで、
26:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:20:00.42 ID:lE2tgw5So
やだなあ、これはじょうだんです。
喉が震えていた。
ことりはもっと、隠し事が上手だったはずなのに。
27:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:20:26.99 ID:lE2tgw5So
私の腰に、ことりの指が触れる。声を洩らしてしまう。
伸びた腕が私の背中を強く引き寄せる。
28:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:20:53.56 ID:lE2tgw5So
体冷えちゃうね、とことりが言う頃にも、
私はまだことりと繋がっているようで、生まれたばかりのようにぼんやりしていた。
すると急に頭の上から暖かい水流が降り出す。
29:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:21:20.25 ID:lE2tgw5So
「うみちゃ、シャワー、なんとかして、ぷふっ、鼻にはいる」
「あはっ、すみません、」
手探りで蛇口を締めた。
いろいろな後遺症がまだ続いている。
30:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:21:46.81 ID:lE2tgw5So
「……海未ちゃん。ちゅうして」
動けない私の腕を引く。
床にはしたなく身体をもたげたまま、
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