1: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:51:39.37 ID:9CplnFxm0
 
  長編・地の文初挑戦です。 
  アイドルやPの出番までかなり間があります。ご容赦ください。 
  シリアス成分、ファンタジー成分が含まれます。お医者様にこれらの摂取を禁じられている方はこっそり読んでください。 
   
  よろしければお付き合いくださいませ。 
   
   
  桃華ちゃま誕生日おめでとう!
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2: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:53:22.80 ID:9CplnFxm0
  
  ざらざら、ざらざらと。 
  今日も雨が降っている。ここのところは特に雨続きだ。季節はまだ、春だというのにね。 
  こんな天気じゃあ、咲いた桜もすぐに散ってしまうことだろう。 
  なんとも悲しい話だ。ここに桜の木なんて一本もありはしないのだけど。 
3: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:54:55.26 ID:9CplnFxm0
  
  ……初対面のお客様に、いきなり話すようなことではなかったかな。 
  どうも、はじめましてかな? それとももう、何度か会っているかな? 
  挨拶はこんにちはでいいだろうか。それともこんばんはと言うべきか。あるいはおはようと言った方がいいのかもしれないね。 
  申し訳ないね、さっきも言ったように雨続きなものだから。 
4: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:55:45.13 ID:9CplnFxm0
  
  意地悪だと思うかな? 
  ごめんごめん。でもここは本当に退屈なんだ。 
  だから珍しい客人を相手に、ちょっと遊びに付き合ってもらおう……なんて、考えてしまうのも仕方ないことなのさ。 
  代わりと言ってはなんだけど、ボクも君の名前は問わないでおこう。 
5: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:56:35.53 ID:9CplnFxm0
  
  好きなものを好きなように扱ってくれていい。 
  別にそんな、価値のあるようなものがこんなところにあるはずもないからね。 
   
  おっと、口が滑った。仮にも司書がそんなことを言ってはいけないな、うん。 
6: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:58:20.31 ID:9CplnFxm0
  
  「……」 
  そう言ってわたしに白いカードを押し付けると、彼(?)は入口の方へと戻っていきました。 
  いったい何者なのだろう、彼は。自分のことをボクと呼んでいた以上、おそらくは男性なのでしょうが。 
  しかしその背も、体格も小柄で、大人にはとても見えません。 
7: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:02:08.77 ID:L/XPeEV/0
  
  ぎいぎいと、蝶番が悲鳴をあげながら開いていきます。 
  図書館のドアがこんなにうるさいのはいかがなものでしょうか――と思いますが、しかし実際、問題はなかったようです。 
  なぜならその部屋は、真っ暗だったからです。 
  他の利用者などいようはずもありません。 
8: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:04:11.37 ID:L/XPeEV/0
  
  「……ふぅっ」 
  「ひぃぁぅっ!?」 
   
  突然真後ろから声が聞こえ、生暖かい空気が首筋を舐めて行きました。 
9: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:05:14.70 ID:L/XPeEV/0
  
  ……あれ? 
  彼、先ほど会ったときに見たものとは、別の仮面をつけています。 
   
  茶色がかった髪の、カチューシャをつけた可愛らしい女の子の仮面。 
10: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:07:14.26 ID:L/XPeEV/0
  
  そこには、棚がありました。 
  でも本棚ではありません。棚です。ショーケース、というのが的確でしょうか。宝石店にあるようなたぐいのものです。 
  しかし、よくわからないのがその中身。 
   
11: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:08:11.02 ID:L/XPeEV/0
  
  ちょっと待ってね、と彼がカードのようなものを取り出します。 
  先ほどもらった貸し出しカードに似ていますが、彼の持っているものは黒い色をしています。 
  それを読み取り機のようなものの上に近づけると、ピッと音がしてショーケースの蓋が開きました。 
   
12: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:09:22.60 ID:L/XPeEV/0
 Memory - サッカーボール 
  
  女の子がいます。 
  背の高さはわたしの腰よりちょっと高いくらいの小さな子です。小学校に入ったばかり、といったくらいの歳でしょうか。 
  その女の子の前には柵がありました。わたしの背丈よりも高さがあって、柵の先が槍状になっています。 
13: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:11:27.94 ID:L/XPeEV/0
  
  ……ちょっと、悲しい風景です。 
  それなら、わたしがなんとかしましょうか。 
   
  ――ねえ、あの子たちと一緒に遊びたいの? 
14: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:13:00.90 ID:L/XPeEV/0
  
  「いいの」 
  「きっと、ゆるしてもらえないから」 
   
  許してもらえない? 
15: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:16:45.91 ID:L/XPeEV/0
  
  「ああいうことをすると、おかあさまやおとうさまが、いやがります」 
  「だから、がまんします」 
  そう言って、うつむいてしまいました。 
   
16: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:19:14.74 ID:L/XPeEV/0
  
  「あ」 
   
  男の子の蹴ったボールが、空高く放物線を描いて、こちらに飛んできます。 
   
17: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:20:26.30 ID:L/XPeEV/0
  
  「……大丈夫。一回くらいなら、バレないよ」 
   
  そう、口にしていました。 
   
18: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:21:16.34 ID:L/XPeEV/0
 プロローグ - 2 
  
  眠りから覚めるように、意識が戻ってきます。 
  ぼんやりとした視界。 
  黄色く光り、ときおり明滅する白熱灯の明かり。 
19: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:22:18.43 ID:L/XPeEV/0
  
  ――読む。 
  ボールに触れる前にも聞いたその言葉に、はっとします。 
   
  (……これが読むということ?) 
20: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:24:15.22 ID:L/XPeEV/0
  
  「その顔を見れば何を考えているか大体察しが付くけどね。……そんなに良いものじゃないよ、これは」 
   
  ショーケースの向かい側から彼が言います。 
  表情は読めないけれど、仮面の奥では苦虫を噛み潰したような表情をしているような、そんな気がしました。 
21: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:28:09.21 ID:L/XPeEV/0
  
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