3:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:30:54.82 ID:JvRyHgVUO
  
  自らを知り、自らの長所を武器として高みを目指す。それぞれがスタンドアローンたるアイドルであり、何よりも自分の実力がものを言う。 
  
  それがUTX学院のスタイルだ。 
  
4:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:34:28.58 ID:JvRyHgVUO
     † 
  
  レッスンは直ぐに始まった。 
  合同レッスンや個別のレッスンは毎日続いたが、十名も候補生がいながら、ほとんど会話はなく、互いの事などほとんど知りもしないのは変わることはなかった。 
  
5:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:37:12.37 ID:JvRyHgVUO
 「でも、少しだけ」 
  
  そう言って、つばさはスマートフォンを取り出して、友達へとメールを送る。少しでも認められたという嬉しさがちょっとでも伝わればと、タッチパネルに指先を走らせる。 
  送信してから驚くほど早く、返事は届いた。 
  
6:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:38:43.87 ID:JvRyHgVUO
 「ねぇ、優木さん?」 
  
 「はい?」  
  
 「私、あなたの歌がとても気に入ったって言ったらどうする?」 
7:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:41:46.97 ID:JvRyHgVUO
      † 
  
  入学して5か月。長いようで短い時間はあっという間に過ぎていた。 
  
 「これが製品になる最終的な状態のものだ」 
8:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:42:32.00 ID:JvRyHgVUO
 「うちの会社は私が生まれる前から大きくはありましたが、それでも父は私の歌をよく聞いてくれました。でも、会社が大きくなっていくうちに、家族の時間は減っていきました」 
  
  そしていつの日かほとんど会話もしなくなり、父が家に帰る事自体が少なくなった。あんじゅが父を訪ねて話をしても、返事は素っ気ないものになっていた。 
  
 「ある日、私はお友達と一緒に行ったライブを見て、アイドルを目指そうと思いました。歌は小さい頃から好きでしたし、母の薦めで音楽の勉強もしていました。それに何より父にもう一度聞いて欲しかった」 
9:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:43:13.70 ID:JvRyHgVUO
 「私もさ、そういう時期があって喧嘩した事があったんだけどね。父親ってさ、娘との距離感がわからないらしいのよね。どう話して良いのかわからなくて、それで適当な感じになってしまうって聞いたわ」 
  
  つばさがアイドルを目指すと決めて直ぐの頃は、つばさも父親とは沢山喧嘩した。 
  今から考えれば父は父なりにつばさの将来を心配していたのだろうが、夢を追うつばさに負けたのか、ある日ゆっくりと話をしてくれた事があった。 
  普段はあまり多くを語らない父が、口下手ながらに色々な事を話してくれたことは今でも忘れていない。 
10:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:45:02.12 ID:JvRyHgVUO
 「それじゃあ、始める前に紹介しておくね」 
  
  告げてからつばさは、あんじゅの事を他の友人たちへと話した。 
  あまり先入観を抱かせても良くないので、歌がとても上手いことやお嬢様であること、それ以外にも普段つばさが感じた事をかいつまんで話す。 
  
11:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:45:56.67 ID:JvRyHgVUO
  こうして、一年生3人による限定ユニットが誕生し、これから入学を考える子にとってインパクトのあるものには確かに仕上がった。 
  入学して半年程度でこれだけのパフォーマンスが出来るのだと知れば、"私にも"と、入学したいと思う者も多いだろう。 
  
 「うわぁ〜3人ともすごーい」 
  
12:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:48:17.37 ID:JvRyHgVUO
 「いいえ、私が……自分自身が気づくべきだったの。だから、あんじゅがそんな顔をする必要はないわ」 
  
  苦しそうな表情を浮かべているあんじゅの横髪にそっと触れて、つばさは静かな口調で告げる。  
  
 「それでも私は伝えるべきでした。自分では見えないものも、見つけて教えて上げたかった。私と父の問題につばささんが気づいてくれたように、今度は私が助けたかった……」 
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