過去ログ - 律子「待ちくたびれたプロデューサーへ」
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11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:07:51.82 ID:O6N65gcso

 最近、ずっとこんな調子だ。集中しようと必死になるほど、気持ちが離れていく。
 結局、今日のレッスンもどこか浮いたような感覚をこそぎ落とせずに終わった。

 着替えを済ませてから、荷物と傘を取ってスタジオを出ると、プロデューサーが待っていた。
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:08:19.13 ID:O6N65gcso
「あのぅ、プロデューサー。今日は私、一人で帰ります」

「どっか寄って行くのか?」

「まあ……、そんなところ。せっかく迎えに来てもらって、申し訳ないけど」
以下略



13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:09:00.01 ID:O6N65gcso
 私は水辺の道を、よたよたと歩いて行く。
 ふと、今日が私の誕生日だったと気づいた。私は十九歳になったらしい。

「また、忘れたのね」

以下略



14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:09:49.57 ID:O6N65gcso
 4

「そういえば、この間、私の誕生日だったんですよ」

 プロデューサーとの軽い打ち合わせを終えてから、私は不意にイジワルをしてみたくなった。
以下略



15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:10:29.76 ID:O6N65gcso

 わざわざ、気を使わなくてもいい――心からそう思っていたら、口に出すものか。
 本当は気を使ってほしい、贅沢を言えば忘れないでいてほしかった。

 私のファンや、以前に仕事をした人、学生時代の友だち、家族――色んな人が私の誕生日を祝ってくれた。
以下略



16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:10:56.29 ID:O6N65gcso

「私、なんだか、おかしな勘違いをしちゃったな」

 ほろ苦さにもう一度笑う気力はなく、今日まだ途切れない雨を傘で断つ。
 踏みつけた水たまりは思ったよりも柔らかく、スニーカーの布地に染みる冷たい感覚が足を引っ張った。
以下略



17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:11:34.76 ID:O6N65gcso
 5

 ステージ衣装を着ると、まさに身が引き締まる。
 身体のラインを綺麗に見せるために、少しタイトに作ってあるせいかもしれない。

以下略



18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:12:01.46 ID:O6N65gcso
 衣装合わせにはたっぷり時間をとるのがプロデューサーのやり方だった。
 スタジオで実際に衣装を着て、パフォーマンスに支障がないか確かめる。
 衣装の中には以前に使ったものもあって、なんだか懐かしい気持ちになる。

 ふと、プロデューサーは口を開いた。
以下略



19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:12:42.53 ID:O6N65gcso

 ラストコンサートは目前に迫っていた。準備の方もいよいよ峠を越えたらしい。
 プロデューサーは、やっと寝る時間ができたと冗談めかして笑っていた。

 私はと言えば、まだどこか信じられない気がしていた。
以下略



20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:13:12.86 ID:O6N65gcso
 6

 リハーサルではまず会場の大きさに圧倒されたけれど、観客が入り始めると、また違う種類の緊張が身体の中に意識される。
 私の身長くらいありそうなスピーカーが、開演までの間を埋めるようにBGMを流している。

以下略



21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:13:39.60 ID:O6N65gcso
 開演十分前を知らせるアナウンスが会場へ放送されると、熱せられたように観客の声が波立った。
 嫌でも、身体に力が入る。

「リラックスしろ」

以下略



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