過去ログ - 終結の彼方
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15:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:20:39.90 ID:c9hFcx2r0
「世界に向けて歌うようになって、本当に頑張ったよ小梅」

「へっ、平和には……ならなかった……です」

「小梅は悪くない。小梅は必死に頑張った」
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:21:12.87 ID:c9hFcx2r0
「ぷっ、プロデューサーさん……!」

「この人達を見捨てる事しか出来ない。このシェルターの中にいる限り助ける事は……」

窓から見えた研究員も落ちてくる破片に押し潰されて視界からは消えてしまった。研究員の返り血が窓を真っ赤に染め上げていくと自分は耐えきれずに吐瀉。人が目の前で消えていく光景、自分が生き残るために他を犠牲にする罪悪感と自分が生き残る意味はあるのか、これからどうなるのかという不安と疑問で頭の中が割れてしまいそうだ。


17:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:21:43.53 ID:c9hFcx2r0
「こういう時は大人がしっかりしないといけないのに。ごめんね小梅」

「だっ、大丈夫……です」

小梅の不安そうな顔を見ると自分がこのまま不安に飲み込まれると小梅もただでさえ不安なのにこの不安を大きくしてしまう、そう思うと少しは落ち着く事が出来た。そして自分が大丈夫だと精一杯の笑顔を作ると怯えて体が震えている小梅の頭を撫でてあげた。
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:22:12.83 ID:c9hFcx2r0
「ぷっ、プロデューサー……顔色悪い」

「いや、大丈夫。少し疲れてるのかも。小梅は大丈夫?」

「大丈夫……です」
以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:23:01.77 ID:c9hFcx2r0
「……サー……」

「…………」

「プロ……サー……」
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:23:58.72 ID:c9hFcx2r0
「やっ、やっと……起きました……」

「寝てる場合じゃなかったよね。ごめん」

どうして眠ってしまったのかまるで覚えていない。覚えているのは小梅の歌声だけ。それから後の事は何も覚えていない。思い出そうとしても変な頭痛が邪魔をしてくるせいで諦める事にした。
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:24:45.44 ID:c9hFcx2r0
「先に出てみる。小梅は待ってて」

「でも……」

「すぐに戻ってくるから」
以下略



22:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:25:14.65 ID:c9hFcx2r0
不安な要素は消えないし外に出たいとは思わない。それでも生き残った自分には次を見届けなければいけない。例えそれがどんな風になっていても受け入れて最後まで見届ける、争いばかりの次の世界、もしかしたら自分達が求めていた世界かもしれない。

唾を飲み込みもう一度小梅に視線を向けると、小梅はコクりと頷いてくれる。彼女も覚悟が出来たのだろう。シェルターの扉は壊れたのかそれとも意図的になのか分からないけど半分に割れてしまい壊れていた。

「じゃあ、行くよ」
以下略



23:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:25:52.16 ID:c9hFcx2r0
狭いシェルターの壊れた扉、小梅と二人で恐る恐る近付いていく。割れた扉をどかしてその先の世界に足を踏み入れる。

「何もない……」

そこは薄暗く強い風と雪だけが降り積もっていて人類が作り出した建物や自動車、それだけじゃなく人類その物が自分と小梅だけでそれ以外は死体も残さずに跡形もなく消えていた。広がる景色は雪に埋もれた枯れた草原だけで生き物なんてまるでいない。
以下略



24:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:26:33.53 ID:c9hFcx2r0
「ぷっ、プロデューサー……さん……」

「これから二人きりの世界でどうしようか」

「あの子が最後に言ってた……。歌ってて」
以下略



25:名無しNIPPER[saga]
2015/10/21(水) 21:27:05.40 ID:c9hFcx2r0
小梅は音のないこの終わりの世界で歌い続ける。何度も何度も何度も何度も。歌う事をやめない、自分も止めようとはしなかった。ただただ小梅の歌声に魅了されてずっと聴いていた。何度も繰返し終わらない歌を聴いていた。

「ひっ、ひかり。太陽だ」

薄暗いだけの世界に太陽が訪れ照らしてくれる。次第に雪は溶け、陽に当たる枯れた草は緑に染まって草原は生い茂る。冬を越して春が始まったかのように動物達が顔を出す。太陽に照らさせれて歌う小梅はいつの間にか笑顔だった。


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