過去ログ - 提督「ドッキリで死んでみる」
1- 20
4:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:03:30.40 ID:iHsws6qc0
提督のあたかも死体的な様子、傍に転がる「ドッキリ成功!」のプラカード。これはどのような命令を意味するのだろうか。やはり提督が残す言語的痕跡「ドッキリ」という語が重要に違いなかった。

「ドッキリ成功!」とはこの場合、提督のダイイングメッセージである、なぜなら、何らかの意図がなければ、わざわざ「ドッキリ」によって殺される道理はないからだ。提督が意図的に「ドッキリ」によって殺されることに成功したとするなら、「ドッキリ」の意味について考える必要がある。

榛名は「ドッキリ」の場面に遭遇したのは初めてだが、「ドッキリ」とは何かについて知識はあった。一般的にドッキリとは対象を非現実的特殊な状況に直面させて反応を見る悪戯と考えられている。
以下略



5:名無しNIPPER[sage]
2015/10/28(水) 01:04:54.57 ID:8aRhP2ymo
哲学の人か


6:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:05:01.76 ID:iHsws6qc0
ドッキリには親しい間柄において関係を盛り上げる小さな悪戯的用法があるに違いなかった。この線で考えるならば、提督は榛名と「親しい関係」にあるということになる。榛名は感激した。提督がそのように考えていてくれるなんて。

「このドッキリは私たちの関係を深めるための手段なのですね」榛名は判断する。状況の意味が固定されると、そこを足がかりに榛名が今何をなすべきか自ずと明らかになった。

結婚。それ以外ありえなかった。
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:07:18.20 ID:iHsws6qc0
榛名は書斎机の引き出しをダズル迷彩の艤装をバールのように用いてこじ開ける。ケッコンカッコカリの書類を取り出し、名前欄に「提督」と「榛名」と丁寧に綴る。印章が必要らしかったが、印鑑が見当たらないので、提督の親指を傷口に添えて血判させた。死人に意志はないので、榛名が全ての意志であった。

榛名は左手薬指にはめた指輪をうっとりと眺めた。婚約の証である指輪は榛名の方だけがつければ良い。鎮守府では重婚が認められていた。提督は何人も妾を持つことが許され、それが好ましいことだとさえされる一方で艦娘達は一途に操を立てなければならなかった。

提督と艦娘の関係は非対称的であり、それを「性的搾取」であると糾弾する社会運動もあったようだが、艦娘たる榛名にとっては提督と「常に一緒に」いるという日暮しであるのだから、「重婚は不誠実だ」と主張されても、己に関わる問題だという実感はありえなかった。
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2015/10/28(水) 01:07:43.43 ID:kQcYu6Rjo
パニックなのか、安定的に頭おかしいのか


9:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:09:13.03 ID:iHsws6qc0
すなわち。提督は確かに既に死体であった。しかし、榛名が指輪をはめたことにより、法的事実世界において停止条件説的に死体である提督に対して遡及的に「榛名に愛の告白をする意志」が発生したのだと考えてよい。

死してなお中絶されることのない原液的な愛の関係に榛名は酔った。「双方の合意」なんぞに頼り、「死が二人を分かつまで」という宣誓で結ばれる軟弱な関係では決してない。榛名は今の私たちの関係こそ愛の最も理想的な形であると信じて疑わなかった。

提督との愛に陶酔する榛名はそのうち内心だけで処理しきることが出来ないほど己の情熱を大きくしてしまい、仕草に落ち着きのなさが現れる。それは良人に何か尽くしてやりたいという女的欲求を喚起させた。尽くすことによっていかんともしがたい愛の膨張を抑えようというわけだ。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:11:39.34 ID:iHsws6qc0
提督の表情が落ちてしまった。正確には提督の顔が落ちてしまった。目のあった場所は眼裂さえなくなり、鼻部分の隆起は真っ平らになってしまった。口に関しては最初から死人に口無しだったので気にする必要はない。

榛名は無貌となった提督を見て狼狽した。最近の掃除用品がここまで肉体の識別性を損なうものだとは考えていなかったのだ。指紋を薬品で焼き消すなんてことはドラマなどではそれなりに親しいシーンではあるが、顔ごと消すとなると。

確かに現状では顔無しは最も目立つ特徴であるかもしれないが、それは一時的なものに過ぎないのは明白である。クレンザーと激落ちくんで落ちる程度のものだ、人が考えるより顔なんてものは人間の同一性にとって案外どうでも良いものなのかもしれない。
以下略



11:名無しNIPPER[sage]
2015/10/28(水) 01:11:43.35 ID:ALrLFJIAO
激落ちくんに草


12:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:13:35.39 ID:iHsws6qc0
女の服飾は委ねるように投げ出され受動的であるように運命づけられてきた。しかし、女にも能動性の獲得が期待されるようになり、女が自ら服を着脱するようになっても、服飾の構造に変化はなかった。精神が変わろうとも環境がそれに追いつくことがないというのはよく知られるところである。

瞬足と鈍足の二人三脚は互いに足を引っ張り合い、互いの利点である先進性も堅実性も食い合いもたつくのであるが、それに慣れてくると奇妙な技術が磨かれてくる。榛名の手つきはまさにそれであった。本来受動的な服を能動的に着るように慣らされた榛名にとって本来能動的な服を受動的なものとして脱がせることは造作もないことであった。

だから、榛名が提督の服を滑るように脱がしたからといって、それは時代的技術であるかもしれず、榛名に淫乱の気質があったり発情したりしたと考える必然はないはずだった。
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:16:58.48 ID:iHsws6qc0
黒いオーバーニーブーツも脱ぎ捨て裸足になり、純真無垢な白い下着姿となると提督に添い寝するように布団の盲縞を波立たせた。提督の胸元をワイシャツ越しにしばらく撫で回すと、噛み付くように小さなボタンを一つ一つと一息もらしながら、ゆっくり開けていく。

開いた隙間から指先を滑り込ませる。ぞっとするほど冷たかった。冷気は指先から上腕を伝い背筋を流れてつま先をぎゅっと縮め込めた。榛名は上腿を交差するようにして腰をくねらせる。それは提督の冷たさに不気味さを覚えたわけではなく、冷たい炎で暖をとろうとしたような観念と事実とのズレに驚く肉体的反応に過ぎなかった。

しかし、また榛名がその冷たい生命としての提督にある感激を覚えたのも事実ではあった。マネキンのような無関心に起因する人工的冷たさではない。擬死的な冷たさ。生を中断し己を完全に委ねるような冷たさ。完全な委託。絶対的信頼の証。女性的庇護欲を刺激された榛名はしばらく死体に向かって己の肉体を擦り付けるように蠢かせた。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:19:33.11 ID:iHsws6qc0
榛名は提督の腕を人形遊びでもする如く自由に曲げて遊んだりし、次に榛名は内ももで提督の陰嚢をぐいと押し込んだ。ぐにゅりと逃げるような感触。普通の男性なら痛がって榛名を叱責するところだが、死体である提督は寛容にもその粗相を許しきっている。榛名は肉体に過負荷を与えることに愉悦を覚えた。

しばらく嗜虐的母性を満足させるべく榛名は性的遊戯にふけっていたが、そのうち落ち着きを取り戻してくる。なぜなら、死体には生殖能力がないので、榛名と提督の状況はいつまでたっても遊戯の領域を超えることがなかったからだ。

また提督の精神状態も冷静さの要因であった。広く死者に認められる精神的症状の特徴として完全な無気力と感情の平板化に伴う徹底的な沈黙が挙げられる。どれほど挑発的な言葉を治療者が放とうとも無関心は持続する。死の状態は最近の研究において「全知全能の存在との受動的な結合という性的な願望と関係がある」と考えられており、榛名にとって全知全能を演ずるのは少し重荷であった。
以下略



29Res/26.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice