1:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 14:59:21.06 ID:lWDqkljoo
 
  
  
  『――高垣楓!!』 
  
  
  
 名を呼ばれた瞬間、ホールが拍手と歓声に沸きました。 
 ゆっくりと立ち上がって、そこかしこへ深く腰を折ります。 
  
  
  『高垣さん、前へどうぞ!』 
  
  
 アナウンスに導かれるまま舞台へと歩き出します。 
 けれど、どうしようも無く後ろ髪を引かれて。 
 目立たぬようにほんの少しだけ背中を振り返りました。 
  
 もちろんそこには私のプロデューサーが座っていて。 
  
  
  「…………」 
  
  
 顔を覆って、肩を揺らして。 
  
  
  
 誰かに赦しを乞うかのように、彼は俯いたまま涙を零していました。 
  
 
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 15:00:00.92 ID:lWDqkljoo
  
  
  
  『さぁ、お待ちかね! いよいよ第一位、シンデレラガールの栄冠を戴くのは――』 
  
3:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 15:00:42.28 ID:lWDqkljoo
  
 シンデレラこと高垣楓のSSです 
  
  
 i.imgur.com 
4:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 15:05:14.54 ID:lWDqkljoo
  
  ◇ ◇ ◇ 
  
  
 昔、むかし。 
5:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 15:15:31.25 ID:lWDqkljoo
  ― = ― ≡ ― = ― 
  
  
  「詳しく、聞かせてもらえますか」 
  
6:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 15:22:40.97 ID:lWDqkljoo
  
  「正確には、まだ反対……ですね」 
  
 椅子を勧められて、私も腰を下ろしました。 
  
7:名無しNIPPER
2015/12/25(金) 15:26:51.23 ID:tevYvGhEO
 Twitterから。やっと新作きたー! 
8:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 15:29:32.80 ID:lWDqkljoo
  
 プロデューサーがちらりと時計を確認します。 
 11時45分。そろそろ収録へ向かう時間になっていました。 
 同時に椅子から立ち上がって、そして同時に背伸びをします。 
  
9:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 15:45:53.57 ID:lWDqkljoo
  
  ◇ ◇ ◇ 
  
 男の子は、ちょっと背の低い、どこにでも居る普通の少年でした。 
 魔法使いは、誰もが想像する所のいわゆる魔女。その風体そのままでした。 
10:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 15:56:39.04 ID:lWDqkljoo
  ― = ― ≡ ― = ― 
  
  「そこまで。15分の休憩にしましょう」 
  
  「はい」 
11:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 16:14:21.86 ID:lWDqkljoo
  
  「はい。あ、トレーナーさん今日の――」 
  
  
 ――ライバルファンの耳を根こそぎ奪うような、他を圧倒するような、新曲。 
12:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 16:25:18.20 ID:lWDqkljoo
  ◇ ◇ ◇ 
  
  「採って来ましたー……」 
  
  「ご苦労」 
13:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 16:32:49.68 ID:lWDqkljoo
  ― = ― ≡ ― = ― 
  
  
  「――世紀末歌姫!」 
  (楓さんっ!) 
14:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 16:41:05.97 ID:lWDqkljoo
  
  「……な、何故だ! 憂いなど我が翼が払おう! 我らは同胞ではないか!」 
  (何でやめちゃうの!? 悩みがあるなら、私だって相談に乗れます!) 
  
  「いいえ。憂いなんてありませんよ、蘭子ちゃん。CGプロはとっても良い事務所です」 
15:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 16:54:57.08 ID:lWDqkljoo
  
 さらさらの銀髪をそっと撫でて、後ろの二人を見ました。 
  
  「肇ちゃんもアーニャちゃんも。同じ事を訊かれて、考えた事があると思うの」 
  
16:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 17:00:50.81 ID:lWDqkljoo
  
  「はい。このままだと今年は私がシンデレラガールまっしぐらですね」 
  
 三人の動きがぴたりと止まりました。 
 えーと。分かりやすく、分かりやすく。 
17:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 17:13:58.59 ID:lWDqkljoo
  
  ◇ ◇ ◇ 
  
  
  「あなたには魔法の素質があります。それも、私以上の」 
18:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 17:25:01.50 ID:lWDqkljoo
  ― = ― ≡ ― = ― 
  
 事務所へ帰る途中の車内で、完成したばかりのデモテープを聴いていました。 
 夢を見るという事を唄った、緩やかに流れるような優しい曲。 
 まだ練習の予定も立てていないのに、自然と口ずさんでしまいます。 
19:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 17:49:30.83 ID:lWDqkljoo
  
  「…………『新約シンデレラ』?」 
  
  「文香ちゃんに勧められたんですけど……私も少し、その、思う所があって」 
  
20:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 18:20:17.13 ID:lWDqkljoo
  
  「どんな本なんですか? 見覚えの無い作者さんですけど」 
  
  「そうですね……題の通り、まさに童話のシンデレラを元にした本です」 
  
21:名無しNIPPER[saga]
2015/12/25(金) 18:39:39.06 ID:lWDqkljoo
  
  ◇ ◇ ◇ 
  
  
 ――あなたには、私のようになってほしくないのです。 
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