1:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 00:56:06.07 ID:NYPOpsNEo
京子「ちなつちゃーん、劇の台本書いて見ない!?」 
  
  9月も半ばに入り、夏休みボケも少しずつ抜けて来て、本格的に秋めいて来た今日この頃。 
  一足先に部室に着いた私が、今日のお茶は緑茶と麦茶どっちにしようかなんて考えていると、 
  京子先輩がそんなことを叫びながら慌ただしく部室の戸を開けた。 
  
 ちなつ「なんですか、藪から棒に」 
  
  あまりにも唐突な問いかけに、私はびっくりして手に持っていた湯のみを落としそうになり、 
  京子先輩に非難の視線を向ける。 
  
 京子「ああ、ごめん、あのね……」 
  
  京子先輩は特段悪びれた様子もなく、ゆっくりと私の正面に腰を下ろした。 
  余程急いで走って来たのか、ぜいぜいと息を切らしている。 
  
 ちなつ「そんなに慌てて、よっぽど重要な要件なんですか? 今のって」 
  
 京子「いや、結衣とどっちが早く部室に着くか競争してたんだけど、結衣がのってこなくて……」 
  
  それじゃ勝負になってないじゃないですか、という突っ込みを飲み込んで、私は立ち上がってお茶を取りに行く。 
  今の話のとおりなら、すぐに結衣先輩も部室に着くはずだ。 
  時間もなさそうなので、取り敢えず麦茶の容器を持って部屋に戻る。
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 00:57:05.24 ID:NYPOpsNEo
 京子「お、ちなつちゃん気が利くぅ〜」 
  
  何を勘違いしているのか上機嫌で湯呑みを差し出している京子先輩をスルーして、容器をテーブルに置く。 
   
 京子「あれ? 走り疲れてる私のために用意してくれたんじゃないの?」 
3:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 00:57:39.93 ID:NYPOpsNEo
 京子「うん。まぁ厳密には生徒会が主催でごらく部が協力するって形みたいなんだけど、 
    ごらく部主導でいろいろ考えてもいいってさ」 
  
 ちなつ「それで、やるって言ったんですか?」 
  
4:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 00:58:06.07 ID:NYPOpsNEo
 ちなつ「しれないけど、なんですかぁー」 
  
 京子「そ、その、来月はミラクるんのオンリーイベントがあるから、そっちの作品に集中したいなあって……。 
    あっ、勿論練習にはちゃんと参加するし、手を抜くつもりはないよ!」 
  
5:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 00:58:56.12 ID:NYPOpsNEo
 ちなつ「京子先輩! 私が台本を考えるってことは、配役とかストーリーとか全部私の好きにしていいってことですよね!?」 
  
 京子「え? ああ、うん。その辺も自由に決めていいって言ってたよ」 
  
  私の勢いにおされたのか、京子先輩が少したじろぎながら答える。 
6:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 00:59:37.23 ID:NYPOpsNEo
 ちなつ「そ、そそそそそれ本当ですか!? マジですか!? 確かに結衣先輩がそう言ったんですか!?」 
  
 京子「え、う、うん。確かに聞いたよ」 
  
  京子先輩がぶんぶんと首を縦に振る。 
7:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:00:25.45 ID:NYPOpsNEo
 京子「あ、結衣、遅かったじゃーん。あかりも一緒なんだ」 
  
 結衣「ああ、途中でばったり会ってさ。職員室に用事があるって言うから少し待って一緒に来たんだ」 
  
  京子先輩もついて来ていたようで、私の後ろから二人に声を掛けたが、そんなこともお構いなしに 
8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:01:01.19 ID:NYPOpsNEo
  *  
  
 ちなつ「と、言うわけで。協力してね、あかりちゃん」 
  
 あかり「うん、あかり、頑張ってアイデアだすよぉ」 
9:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:01:29.26 ID:NYPOpsNEo
  結衣先輩と私が結ばれる話ならいくらでも思いつくけど、折角なら一番ロマンチックなシチュエーションを演出したい。 
  それにあくまで文化祭の出し物という形で話を持ってきて貰ったんだから、私と結衣先輩だけじゃなくて、 
  きちんとごらく部と生徒会の劇という形で台本を書かなきゃならない。 
  
  相談したいことは山ほどあるし、私は一度何かに夢中になると他のものが見えなくなってしまうところがあるので、 
10:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:01:55.32 ID:NYPOpsNEo
 ちなつ「はい、あかりちゃん。一応これをベースにして作ってみようかなって思うんだけど……」 
  
 あかり「あ、う、うん……け、結構な枚数だね……」 
   
  紙芝居を持ってあかりちゃんの方へ戻る。 
11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:02:36.47 ID:NYPOpsNEo
 ちなつ「どうしたの? あかりちゃん」 
  
  あかりちゃんがいつになく必死な様子なので、私は紙芝居を一旦机に伏せて、あかりちゃんを見る。 
  
 あかり「う、うん。紙芝居を見せて貰う前にどんな話か聞いておきたいかなぁって……」 
12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:03:16.14 ID:NYPOpsNEo
  確かに結衣先輩の王子様描写を増やすことに気を取られ過ぎていて、配役を増やすことまで気が回ってなかった。 
  ちゃんと劇の形にしなきゃいけないとは考えていたのに、書いてる間はそんなこと全然気づかなかった。 
  早速あかりちゃんに助けて貰っちゃったな、と思いながら私はうなだれる。 
  
 ちなつ「そっかー。ごめんねあかりちゃん。さっそく助けられちゃった」 
13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:03:44.39 ID:NYPOpsNEo
 ちなつ「実際のお話?」 
  
 あかり「うん。おとぎ話とかで、実際に王子様とお姫様が出てるお話をモデルにするの。 
     これなら登場人物が多いお話もあるんじゃないかなぁ」 
  
14:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:04:23.54 ID:NYPOpsNEo
 * 
  
  幕間 
  
 「シンデレラのはなし」 
15:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:04:56.90 ID:NYPOpsNEo
 「するとその時、シンデレラのもとに一人の魔法使いが現れました」 
  
 「魔法使いは、シンデレラが舞踏会に行きたがっていることを知ると、シンデレラにかぼちゃを一つ持ってくるように言いつけました」 
  
 「そうすれば、シンデレラを舞踏会に行かせてあげるというのです」 
16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:05:22.47 ID:NYPOpsNEo
 「シンデレラはうちへ帰ると、魔法使いへたくさんお礼を言いました。 
  お城での出来事はシンデレラにとって最高のひとときでした」 
  
 「やがてシンデレラの二人の姉も舞踏会から帰ってきました」 
  
17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:06:14.43 ID:NYPOpsNEo
 「すると二人の姉はぷっと吹き出して、シンデレラをあざけり笑いました。 
  しかし役人はシンデレラの顔を見て、ぼろを着ているものの、シンデレラが珍しく美しい娘であることに気付き、 
  王子様の言いつけであると言って、シンデレラにも試させることにしました」 
  
 「シンデレラが椅子に腰かけて、役人が靴を足にはかせると、それはするりと、具合よく入って、まるでろうで固めたように 
18:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:06:40.45 ID:NYPOpsNEo
  *  
  、 
 ちなつ「シンデレラかぁ……」 
  
  シンデレラ。 
19:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:07:06.99 ID:NYPOpsNEo
 あかり「まず、ちなつちゃんがシンデレラで、結衣ちゃんが王子様だよね」 
  
 ちなつ「勿論よ。取りあえず、登場人物を整理してみよっか」 
  
  ノートに鉛筆でシンデレラ、王子様と書き込み、その横に私と結衣先輩の名前を書き込む。 
20:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:07:34.65 ID:NYPOpsNEo
  まま母と二人の姉は一旦置いておいて、次の人物を考え始める。 
   
  誰よりも綺麗な心を持ちながらも、みすぼらしい格好で家の隅に追いやられるシンデレラと、 
  美しい衣装に身を包んで家中を闊歩する二人の姉。 
   
21:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:08:04.36 ID:NYPOpsNEo
 あかり「シンデレラがとっても可愛くて、優しくて、頑張り屋さんだったからだよ」 
   
  私があれこれ考えていると、あかりちゃんはいつもの笑顔で、呑気な台詞を口にした。 
  さっきも聞いたような台詞。 
  単純というか何というか、あかりちゃんらしいといえば、らしい答えだった。 
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