過去ログ - シェアハウス (オリジナル百合)
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24: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 18:42:16.09 ID:CnMOex1r0
翌日。
私は普段通りベッドからのそりと起きて、カーテンを開けた。
朝から隣のおじさんがごうんごうんと洗濯機を回していて、それがうるさくていつもよりも早く起きた。
私と生活のリズムが違うのは仕方がないけど、勘弁してほしい。
25: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 19:01:06.04 ID:CnMOex1r0
会社でも、久しぶりに情けないミスをしてしまった。
慰めてくれるのは、ちょっと香水のきつい隣のお姉さんだった。
愛想笑いで、涙ぐむのを必死にこらえた。
なんとかこの癖を直さないと、いつまで経ってもこのままのような気さえした。
情緒が豊かなのか、不安定なのか。
26: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 19:18:28.74 ID:CnMOex1r0
ばきり、と子気味良い音が上の方で聞こえた。
やってしまったかな。
私はここぞとばかりに下に引っ張った。
瞬間、鉄板が目の前を落下して、脚立に当たって、盛大な音と共にカーペットで跳ね上がった。
耳の中に響くような金属の音。
27: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 19:24:20.36 ID:CnMOex1r0
あまりの出来事に心臓が踊り狂っていた。
後ろに後ずさる。背中に何か柔らかいものが当たった。
「い!?」
28: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 19:54:36.60 ID:CnMOex1r0
夢を見ているのかと思った。
できたら、夢であればとも。
でも、祭ちゃんの少し冷たい手は本物だった。
その手は、私が比較的落ち着いたのを知ると、離れていった。
祭ちゃんに体を抱き抱えられたまま、私は吃音を繰り返す子どものように言葉を紡いだ。
29: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 20:14:00.52 ID:CnMOex1r0
彼女はあの日駅で別れた時と同じような寂しそうな顔をした。
「妻鳥もやっぱり私のこと見放すんだ」
「……おかしいよッ。なんで、あんな所に……いつからいたの」
30: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 20:29:12.74 ID:CnMOex1r0
笑いながら、私の方に手を伸ばしてきたので、とっさに近くにあった本で彼女の頭を殴ってしまった。
鈍い音がリビングに落とされた。
「った」
31: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 21:00:05.54 ID:CnMOex1r0
子どものように、彼女は唇を結んでいた。
私は今までの経験をフル活用しても、彼女を受け入れるような自信はなかった。
突然の再開はあまりにも薄ら寒い印象を与えていたし、昔となんら変わっていない祭ちゃんはにわかに本人だとも信じがたかった。
私があぐねいていると、
32: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 21:11:11.90 ID:CnMOex1r0
祭ちゃんは、ソファの上にあったぬいぐるみを掴んだ。
茶色いクマを掲げる。
その後ろに顔を隠した。
「もう、おしまいだ。住む所もバレてしまった。奴らが今にやってきて、僕をここから追い出すだろう」
33: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 21:20:54.92 ID:CnMOex1r0
「祭ちゃん……」
私は膝立ちで彼女の名前を呼んだ。
彼女は私の薄いブラウスを握りしめた。
甘える子犬が匂いを嗅ぐように、顔を埋めてくる。
34: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 21:41:22.94 ID:CnMOex1r0
「祭ちゃんに会いたくて……私、泣くのは祭ちゃんの胸でって決めてたんだよ」
体を離して、そう言ってやった。
それから、彼女の胸に、拳を打ち付ける。
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