過去ログ - ゆき「亜人?」
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552: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:13:31.12 ID:e9pvm4lpO

蛍光灯の薄い灯りのもと、この施設の休憩スペースらしいその場所に、七人の男女がいる。壁に隅には、二台の自動販売機が並んで置いてあったが、その中身はとっくにすべて持ち出されていて、いまではすこし色が褪せた商品サンプルをむなしく披露しながら、白い灯りを浴びて佇んでいる。

場の上座とおもわれる場所に、ワイシャツの袖をまくった戸崎が立っている。前方に並んで立っている戸崎と下村から、今後の活動方針についてレクチャーを受けるように、四人の黒服がそれぞれ席についている。黒服たちのテーブルから離れた場所に、オグラが座っており、そのテーブルのうえの灰皿には、すでに十本ほどのタバコの吸殻が捨ててあった。戸崎はオグラのほうに視線をむけ、話をするよううながした。

以下略



553: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:14:42.84 ID:e9pvm4lpO

平沢「事態を見る限り、成功したとは言いがたいな」

オグラ「当然だ。そもそも、目に見えない物質をどうやって利用する? 前提から間違ってんだよ、これを作ったやつらは。IBM粒子を亜人の肉体以外に定着させたところは興味深いが、それ以外は完全な失敗だ」

以下略



554: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:15:50.04 ID:e9pvm4lpO

平沢「血流が低下してるといってたが、それは麻酔銃の効果は望めないということか?」

オグラ「そう受け取ってもらってかまわない。事実、麻酔に限らずだが投与した薬物の効果が現れるまで極端に時間がかかるようになった」

以下略



555: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:16:54.52 ID:e9pvm4lpO

戸崎「ベトナム戦争終結後、米軍の完全撤退が完了して一年が過ぎた、一九七六年のことだ。その人物の弟がいまだベトナム国内に捕虜として囚われているとの情報を入手した米軍は、彼を佐藤が所属していた特殊部隊に同行させ、ベトナムの奥地まで送り込んだ。そこは、戦争終結後も戦いはまだ続くと信じていた、ベトコンのなかでもとくに狂信的な集団百人ほどが潜伏している地域だった。厳重な警備をくぐり抜け、佐藤らチーム四名は捕虜を救出。あとはピックアップポイントまで後退すればそれで任務はおわるというときだった。発砲ひとつ、わずかな物音ひとつすらたてなかった佐藤が、突然、拳銃を手に取り、引き金をひいた。一発の銃弾が、百人の敵を呼びよせた。おびただしい数の敵との戦闘。なんとかヘリまでたどり着いたものの、チームのひとりは死亡、もうひとりは重傷。佐藤も片足を失った。佐藤が拳銃の引き金をひく直前、チームに同行した彼は、ポーカーフェイスと渾名された佐藤の表情が変わるのを初めて見たそうだ。その表情は、われわれでいう、喜びの表情そのものだった、と彼は語ってくれた」

戸崎「佐藤のテロリズムには、政治的目的も宗教的目的も存在しない。争乱を引き起こすこと、戦いそのものがやつの目的だ。このような事態の渦中であろうと、それでわれわれが滅びようと、やつの本質が変わることはない。佐藤は必ず人類に対して戦いを仕掛けてくる。われわれが生き残るためには、佐藤を止めるより他に選択肢はない」

以下略



556: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:18:02.13 ID:e9pvm4lpO

次に発言したのは、黒髪をオールバックにした年配の男だった。


黒服・1「生き残るにしても戦うにしても、どっちにしろやることに変わりなさそうだ」
以下略



557: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:19:52.32 ID:e9pvm4lpO

戸崎と下村は休憩スペースから離れ、割り当てられた業務用の一室にむかった。白っぽい、無味乾燥とした廊下ですれ違うものはだれもいなかった。施設を自由に行き来できる収容者は限られていたため、ある特定のスペースには雑然と人でごった返しているのに、その他、施設のほとんどのスペースは無菌室のように白く閑散とした空白ばかりが目に映るといったありさまだった。

戸崎は部屋にむかいながら、現実問題として、佐藤と戦える猶予はそう残されていないと考えた。人的資源も、物的資源も、時間経過に比例するように減ってきている。そういった資源の減少がなくとも、日常が一変し、外に出ることはかなわず、一か所に押し込められ、外に出れば“かれら”の群れにはらわたを喰われることを覚悟しなければならない、そんな状況では精神的に磨耗するしかなかった。時間がたてばたつほど、われわれは弱くなっていく、と戸崎は思った。

以下略



558: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:22:30.29 ID:e9pvm4lpO

下村「戸崎さん、大丈夫ですか?」

戸崎「なにがだ?」

以下略



559: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:24:07.97 ID:e9pvm4lpO
銃弾は、生命維持装置の上を通り過ぎ、装置の真上にある壁にちいさな穴をあけた。意志的な力を失い、残された運動は、重力によって床に接地するだけになった死者は、まるで壁にあいた穴に吸い込まれるように、身体をぐにゃんと傾け、生命維持装置めがけて倒れこもうとしていた。


下村「あっ」

以下略



560: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/09/11(日) 00:26:21.95 ID:e9pvm4lpO
おまけAおわり。戸崎たちのいる施設の描写はかなり適当です。

われながら、半感染状態の佐藤さんはいいアイデアだと思うんですがどうでしょう?


561:名無しNIPPER[sage]
2016/09/11(日) 16:21:50.29 ID:M4RlIWatO

佐藤編だけで中編一本いけてしまう


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