過去ログ - 【モバマスSS】香水 あるプロデューサーの物語
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:07:58.85 ID:mPSzAJE90
西門慶という男は、「西門製薬」という大手製薬会社の御曹司である。
西門家は、江戸時代末期のとある蘭学者が開祖らしい。らしい、というのは、慶が自分の家の由来など特に気にしていないためだ。
江戸幕府の終焉、明治政府の樹立、富国強兵策の推進、そして対外戦争。江戸末期から明治の激動の時代に、この蘭学者は医学から薬学の道を志し、巨万の富を築き上げた。
何をしたのかと言うと、日本は文明開化によって爆発的に人口が増えること、戦争では必ず負傷者が出ることに着眼し、必然的に医薬品の特需があることを予想したのである。
以下略
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:08:34.10 ID:mPSzAJE90
大企業の御曹司なのだから、芸能プロダクションで働くことはおかしいと思われるだろう。しかし慶には兄がおり、慶自身には一族の継嗣たる資格は無い。
父親は、慶に西門製薬本社の役員、またはグループ会社の役員の席を用意していたが、彼はにべもなく断った。面倒ごとは兄に任せて、自分は放埓に生きればいいと思っていたからである。
そんな西門慶が、なぜ346プロダクションなどという畑違いの会社に入社したのか、それは二つの理由にある。
以下略
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:09:08.86 ID:mPSzAJE90
二つ目の理由は、慶自身にある。それは、慶が非常に好色であるということだ。
彼が職場を選定する際、真っ先に考えたのは、女性と触れ合う機会が多い場所が良いということだった。
十代の頃から、不純異性交遊によって親を困らせてきた彼だから、女性、それもとびきりの上玉と出合える場所と言えば、芸能プロダクションだろうと安易に考えたのだ。
では、346プロダクションに入社した彼が、ただ窓際で遊んでいただけかと言えば、決してそうではない。
以下略
7
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:09:55.67 ID:mPSzAJE90
◆
慶が廊下を歩いていると、前方から清川武大(きよかわ たけひろ)が現れた。
以下略
8
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:10:36.42 ID:mPSzAJE90
もっとも、慶自身も、他人に容喙できるような立場ではない。担当アイドルに手を出しているという噂に始まり、慶自身の圭角もあり、あまり周囲からの評判は芳しくないのだ。
しかし慶の場合は、嫉視反感に財閥の御曹司というファクターが多分に含まれている。そんなものは幼い頃から経験しているため、腫物扱いは気にもならない。
「聞いているよ、西門君。最近、また新しいアイドルをデビューさせようって話じゃないか」
以下略
9
:
名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:11:12.18 ID:mPSzAJE90
何を言っても、嫌味に聞こえないのが清川の美点かもしれない。他に二、三言葉を交わし、二人は別れた。
慶が廊下の曲がり角にさしかかった時、後ろで女の声が聞こえた。振り返ってみると、清川が、自身の担当アイドルの神谷奈緒と、何か話しているところだった。
神谷奈緒は、いまのところ芽が出ていないアイドルである。少し恥ずかしがりやで、扱いにくいように見えるかもしれない。
以下略
10
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:11:50.81 ID:mPSzAJE90
◆
ジュースキントの、「香水 ある人殺しの物語」という小説をご存じだろうか。
超人的な嗅覚を持つ主人公グルヌイユが、街中で出会った女性の香りに憧憬を抱き、その香りを香水で再現しようとして、次第に狂気に取り憑かれていく物語である。
以下略
11
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:12:43.22 ID:mPSzAJE90
「これが例の香水か。ただの水にしか見えないけどな」
「間違っても飲んじゃダメだよ。試すなら、一吹きだけにしてね。名付けて、『サテュリオン』なのだ」
「ラブ・ポーションじゃないのな」
以下略
12
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:13:23.77 ID:mPSzAJE90
慶は、一ノ瀬志希に自分のタワーマンションの一部屋を与えていた。慶が、フロアごと借りているうちの一室である。
志希と出会ったのは、慶が以前にアメリカにいた時だ。
偶然慶が住んでいた都市に、飛び級で大学に入学し、化学を専攻している日本人がいると聞いて、興味本位で会いに行ったのだ。
アイビーリーグの某大学に、飛び級で進学しているとあって、当初、彼女との会話にはついていけなかった。
以下略
13
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:14:12.97 ID:mPSzAJE90
“……では特別に、奥様だけにお教えしましょう。いいですか? 例えばマチンという薬を最初は一グラム、次の日は二グラムと量を増やしていくと、二十日目には二十グラムのマチンを一度に摂取することになりますが、死ぬことはございません”
“まあ、そうなの?”
“しかし、最初から二十グラムも接種してしまうと、その人にとって猛毒になるのです。こうすれば、同じ瓶から飲んでも、相手だけ殺せるでしょう?”
以下略
14
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名無しNIPPER
[saga]
2016/03/28(月) 23:14:56.14 ID:mPSzAJE90
その日は、穏やかな日差しの昼下がりだった。
大学の図書館には、幾人かの学生の姿が見受けられ、アメリカン・ボザール様式の館内は、学問に対しての誠実さを要求してくるような、森厳な雰囲気を醸成している。
しかし、その一角で交わされている慶と志希の会話は、鴆毒に等しいものだった。外の天気とは正反対に、そこだけ淫雨が降り注いでいるようだ。
「……そんじゃあさ、あたしも連れてってくれない?」
以下略
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