22:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:33:49.39 ID:IXgA3K/jo
  
 「俺が生まれなければさ」 
  
  と、そんな仮定を、ときどき持ち出したくなる。 
  
23:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:34:18.98 ID:IXgA3K/jo
  
 「……でも、ずっと剥がれないんだ」 
  
  知ってしまったことを、後悔するわけじゃない。 
  それなのに、知ってしまってから、俺の視界にはいつも、とれない曇りのように何かが張り付いたままだ。 
24:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:34:46.60 ID:IXgA3K/jo
  
 「きらきらしてた。きらきらしてたんだよ、知る前までは」 
  
 「……」 
  
25:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:35:14.32 ID:IXgA3K/jo
  
 「ねえ、タクミくん、あの夏休みに、タクミくんがこの街に来たのは、どうしてですか?」 
  
 「……え?」 
  
26:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:35:47.82 ID:IXgA3K/jo
  
 「本当に、きらきらだけでしたか?」 
  
 「……」 
  
27:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:36:32.08 ID:IXgA3K/jo
  
  そうしたら、その子の親が学校に来たんだ。 
   
  担任の先生に、子供が無視されてる、いじめられてるって、言った。 
  
28:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:37:04.73 ID:IXgA3K/jo
  
  俺はそれからも、そいつとは話さなかった。 
  誰かが俺を嫌うようになったわけじゃない。 
  
  それでも俺は、なんとなく、学校に行くのが怖くなって。 
29:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:37:51.05 ID:IXgA3K/jo
  
  そうだ。 
  俺はあのとき、 
  どこにも行きたくなかったし、誰にも会いたくなかったんだ。 
  本当は。 
30:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:38:27.80 ID:IXgA3K/jo
  
 「でも、タクミくん、わたしには、きらきらしてましたよ」 
  
 「……」 
  
31:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:38:55.16 ID:IXgA3K/jo
  
 「きらきらだけでは、ないかもしれない。消せない曇りも、あるかもしれない。 
  でもそれは、きらきらしたものが、ないってことを意味するわけじゃないと思う」 
  
  だから、だからね。 
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