過去ログ - 夏向けショートショート3本立
1- 20
1: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:40:36.05 ID:Q/YIMqnfO

第一話/バチン



もう夏本番と言っていい暑さなのに今のところ梅雨が明けたという発表はなく、夜の10時が迫っても一向に過ごしやすくならない。

決して断熱性が良いとは言えない1kアパート、しかも二階だからなおさら暑いのかもしれない。


この部屋がある棟は女性専用で、玄関には電子式のオートロックが備えられていたりとセキュリティ性は多少工夫されている。

その代わり玄関を開けっ放しにはできない仕様だし、その面に備えられたシンク奥の窓は10cm程しか開かないようになっているから、部屋全体の通気性はあまり良くなかった。


それでも先週までは我慢できた。だけどもう駄目、もう無理。

あまりに不快な湿度と厳しい暑さに苛まれ、今週からは遂にエアコンを使い始めていた。

だって日曜の夕方一緒に出かけた向かいの棟のNちゃんが『まだ使ってないの? 私、6月の終わりからエアコンかけてるよ』なんて、呆れたように言うんだもの。

涼風の誘惑に負けたのは彼女のせい、私は悪くない。

SSWiki : ss.vip2ch.com



2: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:42:05.22 ID:Q/YIMqnfO

やっぱり文明って素敵。エアコンを発明した人にはノーベル賞を贈るべきだと思う。

私は伸びたTシャツの下にはブラジャーも着けず、下は脚のつけ根までたくし上げたハーフパンツという決して人に見せられない服装で、決して人に見せられないだらしない体勢をとりラタンのラグに寝そべっていた。

以下略



3: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:43:08.93 ID:Q/YIMqnfO

懐中電灯とか、たしか独り暮らしを始める時にお父さんが色んな工具と一緒にどこかに備えてくれたけど……うん、頭を捻ってもだめだ覚えてない。

どうしよう、真っ暗。怖いよ……嘘、怖くない。むしろ快適な寛ぎタイムを阻害されて不機嫌モード。

以下略



4: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:43:58.46 ID:Q/YIMqnfO

エアコンもまたフラップを動かし始め、僅かに遅れてTVの音声が流れた。

ちょっとホッとする。強がりながらも、やっぱりほんの少しだけ怖かったらしい。

以下略



5: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:45:14.44 ID:Q/YIMqnfO

電気製品を使い過ぎているのだろうか。でも思いつくのはTV、エアコン、冷蔵庫……今は洗濯機は動いていないはず。これらは今週、毎晩同時に使用する機会はあった。

暗闇の中でしばらく考えて、またブレーカーを上げる。数秒、やはり同じ繰り返し。視界は漆黒に染まった。

以下略



6: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:45:54.02 ID:Q/YIMqnfO

スマートホンの照明は点けたままで、私は通話アプリの連絡帳を開いた。遅い時刻に構わず、向かいのNちゃんに発信する。

お願い、出て。願いながらゴクリと唾を飲み込んだ。

以下略



7: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:46:35.75 ID:Q/YIMqnfO

「ほんとごめんね、さすがにちょっと怖くなっちゃって……」

《ううん、気にしないで。どうしてもダメならウチにおいでよ》

以下略



8: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:47:14.13 ID:Q/YIMqnfO

エアコン用のコンセントは高いところにあるから踏み台を持っていかないといけない。

通話は繋いでいたいけど、明かりも必要になる。スマートホンを耳から離して通話画面の右上にあるスピーカーのマークを押した。

以下略



9: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:47:54.40 ID:Q/YIMqnfO

「だめだ……食べ物どうしよう。とりあえず暑いからベランダの窓を開けるよ──」


またリビングを振り返った。その時、Nちゃんはさっきまでとは明らかに違う怯えた声で言った。
以下略



10: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 20:48:37.43 ID:Q/YIMqnfO

──その後、私はNちゃんの言った通り隣の部屋に助けを求め匿ってもらった。

Nちゃんはすぐ110番に通報し、間も無く警察が駆けつけた。

以下略



11: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 21:23:43.31 ID:2Lq8bAWao

第二話/空っぽの帰港



以下略



12: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 21:24:16.81 ID:2Lq8bAWao

キーを挿しスターターを捻ると、やはり前回以上にモーターが回る音は遅く弱い。

古いエンジンとはいえ寒い時期に比べればかかりやすいはずなのだが、それでも始動は叶わなかった。

以下略



13: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 21:25:27.80 ID:2Lq8bAWao

「やあ、おはようございます」

「これから釣りに?」

以下略



14: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 21:27:21.51 ID:2Lq8bAWao

「アンカーは?」

「最初に積み込んだよ」

以下略



15: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 21:27:56.98 ID:2Lq8bAWao

それから三時間ほど経った頃、僕は早朝に目論んだ通りキャビンの日陰にマットを敷いて寝そべっていた。


充電が満足なレベルに達するには今しばらくかかるだろう。
以下略



16: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 21:28:30.88 ID:2Lq8bAWao

「お帰りなさい」

「ああ、どうも。まだ船の機嫌は直りませんか」

以下略



17: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 21:29:18.46 ID:2Lq8bAWao

潮の加減や水温、様々な要因はあれど結局のところ釣果は時の運というもの。

残念ながら今日の彼らは豊漁の神に加護を受ける事は叶わなかったようだ。

以下略



18: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 22:06:52.85 ID:2Lq8bAWao

第三話/交替人員



以下略



19: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 22:23:19.72 ID:2Lq8bAWao

私たち女性の看護師の内で独身の者の一部は、その病院の福利施設である女子寮に住まっていた。


『ねえ、やっぱりチーフの時も鏡に落書きがあったって』
以下略



20: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 22:24:44.92 ID:2Lq8bAWao

2ヶ月ほど前の夜、同僚の金切り声が廊下に響いた。

何人かが慌てて駆けつけてみると、声の主は鏡の前に屈み込み震えていた。

以下略



21: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 22:25:40.68 ID:2Lq8bAWao

それから今までの間に4回も同じような出来事があった。

鏡に現れる悪戯、裏面から書いたとしか思えない血糊の文字。

以下略



28Res/22.03 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice