過去ログ - 提督「グラーフ・ツェッペリン、割り箸を割る」
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20:名無しNIPPER[saga]
2016/08/13(土) 01:51:11.30 ID:IPF1yQGEO
「別にとぼけるつもりはありませんよ」「どういうことだ」
「そうですね。心を牛に喩えて悟りに至る過程を描いた『十牛図』というものがありまして、それは牛を探すところから始まり手懐けたりするなど十枚の絵で構成されています。
 グラーフ・ツェッペリンさんが言う悟りとは八枚目の「人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)」になります」

「八枚目?」「そうです。まだ二枚残っています。そして残りの二枚は解脱から世界に戻る過程になっていて、最後の「入?垂手(にってんすいしゅ)」では普通の人の外見で描かれています」
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2016/08/13(土) 01:51:57.74 ID:IPF1yQGEO
鳳翔は去った。金剛と違い湯飲みはちゃんと片づけていった。しかし、謎を残していった。グラーフ・ツェッペリンはいまだ一本の割り箸を掌で転がす。

結局どうすれば。金剛も鳳翔も仮説「艦娘は提督への好意を機械運命論的に決定づけられている」という問題を回避する方法は教えてくれた。どちらも距離の取り方で感情の「本物/偽物」の境界を見えなくする手段であった。

金剛は感情に過剰に接近し、つまりその内で生きることによって感情の真偽区分をなくし、鳳翔は反対に感情から過剰に離遠し、つまりその外から眺めることによって真偽区分の意味をなくす。
以下略



22:名無しNIPPER[saga]
2016/08/13(土) 01:53:18.24 ID:IPF1yQGEO
二人のやり方を拒否するグラーフ・ツェッペリンにとっては「アドミラルのことを好いている」と「感情が偽物の可能性」と両方を認める道しか開かれていないように思えた。

さらに「偽物の可能性」から「可能性」という言葉もなくそうと決めた。つまりそれは「私はアドミラルのことを好いているが、しかしその感情は偽物である」ということを承認することである。安直な賭けで問題を放棄しないようにと自戒したのだ。

パスカルは神の存在を証明する際に賭けの理論を持ち出した。
以下略



23:名無しNIPPER[saga]
2016/08/13(土) 01:54:53.30 ID:IPF1yQGEO
そもそも根本的な矛盾はグラーフ・ツェッペリンが己を「偽りの愛に従わない」とするのに、自分で「その愛は偽物」としてしまっている点だ。理論的ザックガッセ、いわゆる詰みだ。どうしようもない。

苦悩を重ねる内にふとグラーフ・ツェッペリンは「私はどうしてこんなにも愚かなのか」と考えた。普通ではない。

普通ならそもそも仮説である「提督への好意を持つように艦娘は設計される」という点の事実確認を行うのではないか。大本営の研究室にでも潜り込むという一大スペクタクルを演じるべきではなかったのか。
以下略



24:名無しNIPPER[saga]
2016/08/13(土) 01:56:45.24 ID:IPF1yQGEO
更に言ってしまえば、グラーフ・ツェッペリンのように疑い深い精神にとっては地球上全てでその事実が確認できなかったとしても、何か我々には与り知らぬ原理を疑うかもしれない。

そこまでいくともはや人間をわざと誤謬させるあの底意地悪いデカルト的悪神を信仰するかの如くである。絶対確実なものを求めるために間違いの可能性があれば全てを切り捨てる方法。

デカルトは切り捨てたものを結論的には神の誠実性によって回復しようとした。「私があるというのは確実である。そしては私は神が誠実であるという観念を有する。確実なものから出た命題は確実だ。神は断じて人間を騙す悪神ではないのだ。ゆえに懐疑によって一度捨てたものの確実性は保証される」
以下略



25:名無しNIPPER[saga]
2016/08/13(土) 01:59:09.92 ID:IPF1yQGEO
この明らかな愚かさこそが、グラーフ・ツェッペリンにとって自分生来のものであるという根拠になる。理想兵器の設計書には愚かであることは計画づけられていないはずだ。

グラーフ・ツェッペリンは割り箸を眺めた。そう根本的に艦娘も割り箸も同じだ。設計的には道具として位置づけられている。本来無一物。感情や意志など余分なものはなかったはずだ。

しかし、それはどういうことだ。この愛が設計されたものでないにせよ、出自は完全に不明。結局振り出しではないのか。堂々巡りだ。
以下略



26:名無しNIPPER[saga]
2016/08/13(土) 02:04:04.76 ID:IPF1yQGEO
曇天の宵空からは月の朧気で曖昧な光が僅かに差し込むばかり。明晰を好むグラーフ・ツェッペリンにとって、曇天は昼には好ましいが夜には厭わしい。世界はまったく不条理だ。

かすかな光量の空に一瞬だけティーポットが見えた。いつのまにか金剛のティーセットは消えていた。いつの間にか飛び去っていたのか。暗がりで気付かなかった。グラーフ・ツェッペリンはその「天空のティーポット」を思い馳せた。

誰も空にティーポットが浮かんでいたなんて信じないだろう。でも、グラーフ・ツェッペリンはその存在を確かに知っている。
以下略



27:名無しNIPPER[saga]
2016/08/13(土) 02:09:50.95 ID:IPF1yQGEO
恐らく純愛ものなのではないでしょうか?

前スレ
提督「空母水鬼のいる街角」
ex14.vip2ch.com
以下略



28:名無しNIPPER[sage]
2016/08/13(土) 02:14:19.92 ID:He9SZwxAO
ツェッペリン入れすぎで読むの疲れる
最初だけで後はグラーフだけの方がスッキリしそう


29:名無しNIPPER[sage]
2016/08/13(土) 03:55:57.92 ID:v6pkMfdQo
SSでこんなに思考エネルギーを消費するとは思わなかった…哲学だなあ
軽視されがちな仏教的観念を巧く西洋哲学と対比させてて唸らされた
論理として綺麗なのは金剛だと感じたけどグラーフの思考が一番好み


30:名無しNIPPER[sage]
2016/08/13(土) 04:01:10.45 ID:Qjzbb3vgO
湧き上がる感情は行動を促すものであるがその感情が偽物である(とする)。偽物に従いたくない。でも、したい。
すげーフラストレーション溜まるだろうな、中毒者の理屈そのものだ。提督は麻薬か何かかw? 防衛機制の昇華とかしかするしかないんじゃないか


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