4:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:28:33.31 ID:cSUEPfQ20
「……なんもないなぁ」
イチがつまらなさそうに項垂れる。今日は風が吹かないので、長いポニーテールも、心なしか萎れているように見えた。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:30:02.12 ID:cSUEPfQ20
「羨ましいの?」
「そりゃ少しは……」
6:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:31:30.51 ID:cSUEPfQ20
窓から風が入る。部室は風通しが悪いので、イチはありがたそうに両手を広げて、少ない風を受け止めた。
「俺に風がこないんですけど」
7:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:32:59.94 ID:cSUEPfQ20
……やはり、見えそうで見えない。
角度の問題で、俺の位置からはギリギリ制服の胸元を覗くことができない。
ここで立ち上がれば完璧なのだろうが、あいにく、俺にはその程度の度胸もなかった。
8:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:34:10.21 ID:cSUEPfQ20
「遅かったね、何してたの?」
「校内に迷い込んでしまったカナブンを窓の外に出していました」
9:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:35:39.78 ID:cSUEPfQ20
「そうですか」
少しつまらなさそうにカバンから水筒を取り出すと、ナナコは湯気が立つお茶を一口飲んだ。
10:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:36:48.50 ID:cSUEPfQ20
趣味なんてみんなバラバラだし、クラスも違う。共通の友達は部活のメンバーくらい。
そもそもこの部活には、ここにいる三人と、あと三人しかいない。
窓からささやかな風が流れてくる。初夏の緑の匂い。
11:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:39:33.27 ID:cSUEPfQ20
「『右は正直村?』?」
「違う」
12:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:41:03.24 ID:cSUEPfQ20
窓の外に目をやると、まだ日は高いようだった。最近は日が沈むのも遅くなってきている。もうすぐ夏だ。
「……あ、いま何時?」
不意に、イチが口を開く。
13:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:42:24.17 ID:cSUEPfQ20
しかし、部長の居場所と言っても、どこにいるのか検討もつかない。
イチもナナコも部長も、基本会う時は部室。三人とも文系棟だから、俺とは教室も遠いし。
俺と同じ理系棟には、理数科のチヨがいる。
14:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:43:39.12 ID:cSUEPfQ20
渡り廊下に続く扉を開けると、ひんやりとした鉄の感触が手のひらに伝わってくる。
扉を開けると、顔に風が吹いてきて、少し目を細めた。
ここ、三階の渡り廊下は、青空天井となっている。つまりは天井がない。
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