38:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:29:49.24 ID:6BNWGd8K0
その後、少し歩き疲れたので、おあつらえ向きにあったベンチに二人座る。
さっさっ、と三葉はベンチを軽く手で撫でた。
巫女さんをやってただけあって、そういう所は礼儀正しくて、女の子女の子してる所が、可愛いと思う。
39:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:30:31.31 ID:6BNWGd8K0
たまにこうやって、お姉さんぶるのも、どうしようもなく愛おしい。
一緒に居て、全然退屈しない。
まるで優しく包み込まれているような安らぎと、ラッピングされたプレゼントを開ける時のドキドキ、そのどっちも味わっているような、そんな気分になる。
40:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:31:45.48 ID:6BNWGd8K0
「その語源ってさ、誰そ彼って言うんだって。夕方は、昼でも夜でもない時間。人の輪郭がぼやけて、彼が誰だか分からなくなる時間。人ならざるものに出会うかもしれない時間……逢魔が時とも言うよね。糸守じゃあ、かたわれ時って言うんだけど」
「……かたわれ時」
「うん、高校の時の国語の先生が教えてくれたの……なんか思い出したから言っちゃった」
41:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:32:50.70 ID:6BNWGd8K0
「……なに? 瀧君」
じっと見ていたからだろうか。
三葉が俺の手を握り、首をこくんと傾げて、そう聞いてきた。
42:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:33:51.08 ID:6BNWGd8K0
「……三葉が綺麗すぎて、時々幻みたいにふっと消えちゃうんじゃないか、って思うよ。
でも例え三葉が世界中のどこに行ったって、俺は必ず会いに行くよ」
――いつか言ったような、伝えたかったかも知れない言葉だ、と不意に思った。
43:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:35:03.65 ID:6BNWGd8K0
……一瞬、地獄に落とされた人間の気持ちが分かるほどの絶望を感じ……
「……だって私、瀧君の赤ちゃん、欲しいもん」
……そして、地獄から天国に昇った人間の気持ちが分かった。
44:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:36:25.37 ID:6BNWGd8K0
朝、目が覚めると泣いていた。
鏡を見ると、目が真っ赤だった。
そこには、いつもの私。女の子の、中学一年生の、いつもの私だ。
45:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:37:32.30 ID:6BNWGd8K0
今日は土曜日。
ネットを彷徨ったり、国会図書館に行ったりして、あの事件について調べていた。
しかし、これと言った収穫はなかった。
46:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:38:27.08 ID:6BNWGd8K0
次の日の朝。
今日も朝起きたら、泣いていた。
どうやら私は、泣いちゃうくらい、彼の事が……その、アレらしい。
47:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:39:37.36 ID:6BNWGd8K0
……どこに行くの?
靴を履いていると、後ろから声を掛けられた。
振り返ると、そこにはお母さんの姿が。
普段は、この時間なら家族全員寝てるのに……ドタバタしていて、起こしてしまったようだ。
48:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:40:34.93 ID:6BNWGd8K0
……うん、やっぱり、よく似合うわ。いつかあなたにあげようと思ってたんだけど、つい渡しそびれちゃってて。
鏡の前に立って、自分の髪型を見る。
お母さんの言うとおり、我ながら良く似合っていた。
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