過去ログ - ありすは激怒した。 プロデューサーをぎゃふんと言わせねばならぬと決意した。
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1: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 11:57:38.31 ID:qqktYKOO0
ありすは激怒した。

必ず、かの女心の分からぬプロデューサーをぎゃふんと言わせねばならぬと決意した。

ありすには料理がわからぬ。

少し前の料理番組に出演してそのことを学んでから、頑張って勉強した。

今やタブレットのメモリは沢山の料理の電子書籍が詰まっている。

ありすは、アイドルである。

歌を歌い、踊りを踊るのが仕事である。

けれどもそれ以外のこと対しても、人一倍に負けず嫌いであった。

きょう未明ありすは家を出発し、スーパーに寄り食材を買い、つくった料理を抱いて電車で十里を駆けて自分達の事務所にやって来た。

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2: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 11:58:53.27 ID:qqktYKOO0
ありすには一人、プロデューサーがいる。

プロデューサーは、ざわめく街の中のたくさんの人の中から私を見つけ、ここまで連れてきてくれた恩人である。

なかなか素直になれないが、とても沢山の感謝の想いを抱いている相手だった。
以下略



3: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 11:59:36.79 ID:qqktYKOO0
ひっそりしている。

もう日が昇って時間も経って、既に朝食を摂った後なのかもしれないが、けれども、なんだか、そのせいばかりでは無く、事務所全体が、やけに寂しい。

ありすも、だんだん不安になって来た。
以下略



4: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:00:54.42 ID:qqktYKOO0
「前の料理番組の惨状を思い出せ」とも言った。

「どうしてそんなことを言うんですか」

「いちごをメインの材料に使うからだ、誰もそんな、いちごがいっぱい入った料理なんて求めていねーよ」
以下略



5: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:01:40.06 ID:qqktYKOO0
ありすは、後ろを向いた。

プロデューサーがそろそろ料理に手を付けてくれた頃かと思ったのだ。

そこには、4分の1ほどになったいちごハンバーグを席に残したままコーヒーサーバーにしがみついているプロデューサーがいた。
以下略



6: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:02:30.10 ID:qqktYKOO0
「生クリームがですか」橘は、憫笑した。

「じゃあ生クリームを外して食べればいいじゃないですか」

「勘弁してくれ」
以下略



7: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:03:12.12 ID:qqktYKOO0
「言いましたね」

橘は、さっと顔を挙げて報いた。

「分かりました。今から家に帰って私の得意料理であるいちごパスタを作り直してきます。あまりの美味しさにほっぺが落ちても知りませんから」
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2016/11/20(日) 12:09:51.15 ID:+N0J2I8bo
実際苺はソースにしたりと割と火を通して料理に使うんだよなあ……


9: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:11:45.78 ID:qqktYKOO0
「......プロデューサーさん、きっと大丈夫です。......パスタは比較的早く出来上がると言います」

二人のやりとりを後ろで眺めていた鷺沢文香がずっ、と前へ出た。

「......ありすちゃんは約束を守ります。......彼女を、三時間だけ......許して下さい。......もしものことがあれば、私が代わりに収録に出ましょう。......それでもご迷惑をおかけするでしょうが......お願いします」
以下略



10: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:19:46.26 ID:qqktYKOO0
「願いを、聞いた。三時間後には必ず帰って来るように。おくれたら、二人ともどもとときら学園で罰ゲームだ」

「ちゃんと帰ってきます。罰ゲームになんてなりません」

「はは。ちょとだけ遅れてきたら、今回の放送は園児服を勘弁してやろう」
以下略



11: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:27:21.73 ID:qqktYKOO0
「大丈夫、美味しい」

ありすは、満足のいく味に仕上がったことにうなずいた。

時計を確認すると、まだかなり時間に余裕があることが分かった。
以下略



12: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:28:38.41 ID:qqktYKOO0
タブレットの目覚ましアプリが起動し、ありすは跳ね起きた。

ちょうど良い時間である。

これから支度をして出発すれば、約束の刻限に十分間に合う。
以下略



13: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:32:32.92 ID:qqktYKOO0
それでも、走らなければならぬ。

私を信用してくれた文香さんのために走らねばならぬ。

とときら学園はバラエティーである。
以下略



14: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:33:33.19 ID:qqktYKOO0
改札をくぐって、電車に飛び乗った。

ありすは額ひたいの汗をこぶしで払い、次の駅に着くのをまった。

待ちながら、考えた。
以下略



15: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:34:27.43 ID:qqktYKOO0
見よ、前方の広告を。

同じ事務所の別の部署。

押しも押されぬ人気アイドルの佐久間まゆが、お弁当を作っている様子が描かれたスターライトステージの広告を前に彼女は茫然と、立ちすくんだ。
以下略



16:名無しNIPPER
2016/11/20(日) 12:35:23.14 ID:qqktYKOO0
「私はきっとあんなふうにはなれません」

「あんなに可愛くないし」

「あんなに美味しいご飯もつくれっこないし」
以下略



17: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:55:11.32 ID:qqktYKOO0
一人、自分だけに聞かせるつもりでこぼした言葉に応える声があった。

「そんなことはない!シャキっとせんかい!」

「巴さん!」
以下略



18: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:55:42.42 ID:qqktYKOO0
「プロデューサー、文香さん。約束のとおり、いま、帰って来ました」

車の中で巴に勇気づけられたありすは、そう大声でプロデューサーと文香さんむかって叫ぶつもりであったが、やはり自分の数少ない得意料理をプロデューサーに食べられる前、と

いうことで緊張してしまい、うまく声は出せなかった
以下略



19: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:57:25.11 ID:qqktYKOO0
ありすは眼に涙を浮べて言った。

「私を殴ってください。私は、途中で一度、ずるいことを考えました。文香さんがもし私を殴ってくれなければ、私は抱擁する資格さえありません」

 文香は、すべてを察した様子でうなずきながら優しく微笑んだ。
以下略



20: ◆E055cIpaPs
2016/11/20(日) 12:57:58.21 ID:qqktYKOO0
おしまいです。
読んでくださった方、ありがとうございました。


21:名無しNIPPER[sage]
2016/11/20(日) 13:06:43.47 ID:195g4dU40


次は人間失格だな


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