7: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:47:18.27 ID:81cm0N8d0
卒業式当日、昼過ぎに会社のロビーで待ち合わせた。
やってきた橘さんは、目尻が赤くなっていた。きっと卒業式で泣いたのだろう。改めて橘さんが中学を卒業したのだと思うと、三年と少しつきあってきたぼくにも感慨深いものがあった。
「卒業おめでとう、橘さん」
8: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:48:30.21 ID:81cm0N8d0
と、笑顔を見せてすぐに「でも」と橘さんは切り出した。
「ひとつ不満があります」
思いもよらない言葉にぼくは焦る。デザインが露骨すぎたのか。いや、橘さんがそこに不満を言うとは思えない。
9: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:49:56.03 ID:81cm0N8d0
それから五分後、泣き止んだありすちゃんと車に移動した。走りだした車内にはなんとも言えない空気が漂う。
気まずい。なにかを話さないと。そう思っても言葉がうまくでてこず、口をぱくぱくさせるだけだった。
「あの……ごめんなさい」
10: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:51:19.10 ID:81cm0N8d0
「そっか。うん、まあ、わかっていると思うけど、ぼくはありすちゃんを嫌っているとか、そういうことはないから。むしろ好きだよ。気づかなくてごめんね」
確かに三年半年近くを一緒に過ごしてきた相手に苗字呼びされたら距離を感じるのかもしれない。了承を得ていたとしても、続けていけば不安が過るかもしれない。思春期は不安定な時期なのだ。都度確認をしていくべきだった。気持ちが変わってもおかしくはないと、自分の経験からもわかるはずなのに。
つまるところコミュニケーション不足だ。ぼくは大人なのだから、もう少し気にかけるべきだった。
11: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:53:40.00 ID:81cm0N8d0
「えっ、待って。あれ、本気だったの」
「本気です。いまも」
泣いたからか開き直っているらしい。言葉に付随する意味を理解して、それでもなお、ありすちゃんは堂々と言った。
12: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:54:34.89 ID:81cm0N8d0
最後の右折をして、ありすちゃんの自宅の前に車を停めた。エンジンを切って車から降りる。外に出ると優しい日差しが気持ちよかった。車体左側に回り、後部座席の扉を開く。ぼくは手を差しだした。
ありすちゃんはぼくの手を取って車から降りる。向かい合うとなんだか気恥ずかしい。
「私はもう高校生です。つまらないことに拘るのはやめました。子供っぽいと思うことも、恥ずかしいからと躊躇うこともやめにします。だから覚悟してください。絶対に振り向かせてみせますから。見ていてくださいね」
13: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:55:09.02 ID:81cm0N8d0
ありすちゃんを卒業して三年。ありすちゃんは中学校と同時に橘さんを卒業して、ありすちゃんになった。
14: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:55:50.99 ID:81cm0N8d0
終わり。
15:名無しNIPPER[sage]
2016/12/09(金) 23:03:28.14 ID:fF8pXOcGo
最高だ
16:名無しNIPPER[sage]
2016/12/09(金) 23:22:26.31 ID:l5mjezsUo
ありすちゃんかわいい
17:名無しNIPPER[sage]
2016/12/13(火) 22:26:19.20 ID:1rCC0v+mo
おつおつ
あと3年後にはもう一度橘さんを卒業しそうだなw
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