過去ログ - 鷺沢文香「燃える彼女がくれるもの」
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2: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:11:55.34 ID:xxHx5Jku0

「よろしくお願いします!!!」

一際大きな結びの言葉を発した少女は、その小さな体を、見事に90度に曲げてお辞儀をしている。今にも"ピシッ"という音が聞こえてきそうだ。
どうやら自己紹介は終了したらしい。
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3: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:13:02.55 ID:xxHx5Jku0

少しばかりの時間が過ぎ、茜が顔を上げる。
自分は今、目の前の少女にどんな目を向けているだろうか。懐疑? 恐怖? それとも驚き?
別段、怒りの感情が込み上げているわけではない。ただ少し、長い時間を物言わぬ古書との対話に費やしてきた自分にとっては、少しだけ、刺激が強かった。それだけだ。

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4: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:14:01.26 ID:xxHx5Jku0

「……」

茜がこちらを見つめている。恐らく、こちらの自己紹介をまだ待っているのだろう

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5: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:15:01.84 ID:xxHx5Jku0

自分はアイドル事務所に籍を置いている。
というと回りくどい言い方になってしまうのだが、いかんせん"アイドルです"と自己を紹介するには経験も実力も足りていないのだから仕方がない。

この事務所に所属してはや数ヶ月。100人近くを数える先輩アイドルたちは、どこを見ても眩しくて、一番の新人である自分は恐縮しきりの毎日であった。
以下略



6: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:17:01.27 ID:xxHx5Jku0

そんな彼女とは、翌日も顔を合わせることになった。

昨日の会話は、自分が部屋で本を読んでいる時に、プロデューサーが茜を連れてきたことによって始まった。
しかし、この日は逆だ。自分が朝、事務所の部屋に入ると、ソファの上に、なんとも落ちつかなそうな表情の茜が座っていた。
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7: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:17:55.20 ID:xxHx5Jku0

「えっと、アイドルのことは良くわからないのですが、鷺沢さんは、デビューとか、そういうのはまだなんですかっ?」

茜が尋ねる。
そういえば、自分がまだ新米であることすら話していなかった。
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8: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:18:37.11 ID:xxHx5Jku0

しかし、昨日今日と、全ての会話において茜から話を振ってもらっている気がする。流石に話題提供の一つでもするべきか。
そう感じた結果、適当な話題を振ることにした。

「茜さんは、昨日、あの後は何をされていたのですか?」
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9: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:19:26.52 ID:xxHx5Jku0
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ある日の午後、レッスン後にいつものように事務所で読書をしていると、ふいに声が掛かった。

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10: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:20:04.91 ID:xxHx5Jku0

「まあいいわ。あの娘、昨日から本格的にダンスレッスンが始まったらしいんだけど」

「はい」

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11: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:20:45.23 ID:xxHx5Jku0

「しかも、それだけじゃないの」

「え?」

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12: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:21:19.57 ID:xxHx5Jku0

多少の不安を抱えたまま迎えたダンスレッスン。
レッスン室に行くと、既に茜はウォーミングアップを開始していた。

「! 鷺沢さん! よろしくお願いします!!!」
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