10:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:10:08.48 ID:jvzcG60Ao
アズサ「まぁ……今日はもういいわ。時間も遅いし、帰りなさい」
はーい、と明るく返事してアミとマミは元気に椅子から立ち上がる。
そのときペロッと舌を出したのは、いつもお世話をかけてごめんなさい、という
二人なりの合図だということをアズサはわかっている。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:10:50.02 ID:jvzcG60Ao
引き出しから取り出された真っ白い封筒を、アズサはマミに手渡した。
はさみも使うことなく、マミが器用に封を切るのをアミが見守る。
中にあった便箋を広げ、文面に目を走らせる二人を、
アズサもなぜか少し緊張して見守った。
しかしすぐに二人の顔がパッと明るく綻ぶ。
12:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:16:57.12 ID:jvzcG60Ao
・
・
・
夕暮れの山道。
山頂へと向かうバスの中で、アミとマミは隣同士の席に座り、
13:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:18:34.35 ID:jvzcG60Ao
何度目かのカーブを曲がった頃、窓の外に黒く巨大な球体が見えてきた。
月の裏側より飛来して以来ただ黙して鎮座するばかりの、謎の巨大物体。
黒き月の涙と呼ばれるようになったそれは、
アミとマミが暮らすこの町にも落着していた。
14:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:22:11.82 ID:jvzcG60Ao
長きに渡り周囲の風景を反射するのみであった球体の表面に、
今、光を放つ縦一文字の亀裂が生まれた。
初めは鋭利な切り口を思わせた裂け目であったが、
それは見る見るうちに広がり、ぽってりとした楕円状になった。
まるで球体が口を開いたかのように。
15:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:24:07.34 ID:jvzcG60Ao
アミの指した先を見たマミはその途端、アミと同様に両手で耳をふさぐことを忘れた。
光を放つ球体の口腔に、人型を形成する影が現れたのだ。
それは、あまりにも巨大。
響き続ける轟音をまとい、まさしく巨人は、球体の中からのそりと進み出てきた。
16:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:25:56.09 ID:jvzcG60Ao
・
・
・
「ンフフフフ。始まりましたわ、ハルシュタイン閣下」
17:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:27:12.10 ID:jvzcG60Ao
《常勝》とは困難な戦いを勝ち抜いてこそ輝く称号である。
勝利がわかりきった作戦など、彼女にとっては侮辱以外のなにものでもなかった。
ハルシュタイン「イオリ……。あの星を、甘く見ない方がいい」
18:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:28:21.18 ID:jvzcG60Ao
――山が燃え盛る炎に包まれる中、
アミとマミは煤だらけになりながらもようやく祖父の研究室にたどり着いた。
乗って来たバスは火災によって立ち往生し、二人は山の中腹から徒歩を強いられた。
その間にも怪ロボットは山を燃やし尽くしながら市街へと向かい、
混乱のエリアを拡大し続けている。
19:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:30:56.57 ID:jvzcG60Ao
アミ「じいちゃ……」
もう何度目かわからない声を張り上げようとしたところで、アミがふいに言葉を止めた。
どうしたのかとマミは振り向こうとしたが、理由は聞かずともわかった。
二人の行く先に、淡く輝くものがあった。
639Res/544.18 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。