616:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:00:07.92 ID:kHht+3Bto
 アミ「!? ま、待ってよヤヨイっち! 何を……」 
  
 ヤヨイ『決まってるだろ? 私は閣下と共に行く。 
    せっかく助けてくれたけど、お前たちとはここでお別れだ』 
  
617:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:01:25.33 ID:kHht+3Bto
 アミたちは焦燥から目に涙すら浮かべ、 
 自らも怪ロボットを殴り、蹴り、必死で引き剥がそうとする。 
 ノイズの混ざったヤヨイの声を聞きたくないとばかりに、抵抗の叫びを上げ続ける。 
  
 しかし、その叫びと抵抗を、静かな短い言葉が止めた。 
618:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:05:42.27 ID:kHht+3Bto
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 ハルシュタイン「……裏切り者が、なんのつもりだ」 
  
619:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:07:29.85 ID:kHht+3Bto
 平常のヤヨイであれば、この言葉に身を震わせ、 
 必死に弁明を始めていたところであろう。 
 しかし今のヤヨイは全く動じない。 
 ハルシュタインに抱きついたまま、落ち着いて答え始めた。 
  
620:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:09:22.10 ID:kHht+3Bto
 ヤヨイの話した内容を聞きハルシュタインは眉をひそめた。 
 理由を聞いてはみたものの、やはり分からなかった。 
  
 ハルシュタイン「理解できんな……。 
       勝者に擦り寄るなら分かるが、なぜ死を待つばかりの敗者に付く必要がある? 
621:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:13:27.38 ID:kHht+3Bto
   “敬愛するハルシュタイン閣下” 
   “親愛なるハルシュタイン閣下” 
  
 そんな言葉は今まで幾度となく聞いてきた。 
 しかしそれはどれも、勝者としての自分に向けられる言葉だった。 
622:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:17:33.60 ID:kHht+3Bto
 瞬間、ハルシュタインの脳裏に蘇る。 
 散っていった二人が残した言葉、そして表情……。 
 それまで何の感慨もなく素通りしていたものが今、 
 改めて自身の体を巡っていく。 
  
623:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:18:43.54 ID:kHht+3Bto
 ヤヨイ「ですから、閣下。ずっと一緒に居てもいいですか?」 
  
 ヤヨイの問いに、ハルシュタインは答えなかった。 
 沈黙が続き、ヤヨイは顔を上げて改めて声をかけようとする。 
 しかし、それは叶わなかった。 
624:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:21:54.63 ID:kHht+3Bto
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 ハルシュタインは消えた。 
 怪ロボットたちも、動きを止めた。 
625:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:25:51.51 ID:kHht+3Bto
   「――ただいま」 
  
 自室に帰ったアミとマミは、誰も居ない部屋に向かって呟く。 
 マミの手には、小さな紙袋が端を摘まれるように持たれていた。 
 それを無造作に机の上に置き、二人は同時にベッドに倒れ込む。 
626:名無しNIPPER[saga]
2017/03/11(土) 22:27:57.44 ID:kHht+3Bto
 結局ヤヨイにはプレゼントを受け取ってもらえなかった。 
 しかしそのことを知った二人は、特に気を落とすことはなかった。 
 と言うより、気持ちが上下するような精神状態ですらなかった。 
  
 地球を救えた喜び、ハルシュタインやヤヨイを救えなかった悲しみ、 
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