過去ログ - 高森藍子「カフェで加蓮ちゃんを待つお話」
1- 20
1:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:42:53.73 ID:c9YrBNdm0
――おしゃれなカフェ――

それは、ほんのちょっぴりのいたずらごころでした。





――まえがき――

レンアイカフェテラスシリーズ第43.5話(その2)です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

〜中略〜

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「膝の上で よんかいめ」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「手がかじかむ日のカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「1月のカフェで」
・北条加蓮「カフェに1人で来た日の話」


SSWiki : ss.vip2ch.com



2:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:44:13.64 ID:c9YrBNdm0
ちいさい頃、よくからかわれることが多かったんです。
あんまりてきぱき動くことができなくて……ノロマ、って言われることも多くて。
小学校の給食の時でも、私が食べ終わった時にはもう教室に誰もいなくて、よく寂しい思いをしていました。
あと、怒るのも苦手だったから。
反撃されないって分かって、またいじわるされることがあったんです。
以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:44:43.12 ID:c9YrBNdm0
後から聞いたお話です。
意地悪をする人って、反応を楽しんでいるんですね。
むきになったり、悲しんだり、泣いちゃったり。それを見たいから、ちょっかいをかけてしまう。
思い通りにならないって分かれば、やる気をなくして何もしなくなる――って。
そこでプラマイゼロになるだけじゃなくて、プラスになる辺りが"らしい"よねー、って、どこか誇るように付け加えてたのが印象的です。
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:45:13.03 ID:c9YrBNdm0
眼に2つの感情が混ざっていたことを、よく覚えています。
1つは、寂しそうな気持ち。加蓮ちゃん、いつも私をからかって楽しんでいますから。楽しくなくなっちゃったら、きっと寂しくなるんだと思います。……できれば、もっと別の楽しみを見つけてほしいんですけれど。
もう1つは、どこか期待している気持ち。
演技が下手だって自覚しています。加蓮ちゃんからも、よく呆れられちゃいます。それってつまり……私が意識した反応をできるようになったら、演技力が上がったってことになりますよね。アイドルとして、1つのステータスを得たってことになるのかもしれません。加蓮ちゃんはそれを期待しているんだと思います。

以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:45:43.28 ID:c9YrBNdm0
私だってやられっぱなしじゃないんですよ?
勝ち負けにこだわるつもりはないんですけれど、ときどき、勝っちゃうんです。
テーブルに突っ伏せて、頭から煙を吐かせちゃうんです。
思い返しても、私の何が加蓮ちゃんに……クリーンヒット? って言うのでしょうか。弱点に入っちゃったのかは、今でも分かりません。

以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:46:13.15 ID:c9YrBNdm0
待ち伏せです。
先回りです。
やってきた加蓮ちゃんに、いっぱい待った、なんて言っちゃうんです。
ほんのちょっぴりだけ。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:46:43.23 ID:c9YrBNdm0
ここから加蓮ちゃんの家までは、20分くらいかかります。
1人の時間、あと20分だけ。
もしかしたら、これはもう「1人の時間」とは呼べないのかもしれません。お話することを思い出したり、写真フォルダを見返して見せたい写真を探したり、今日の気分を予想してメニューをめくったり。何をしたとしても、その先には確かに加蓮ちゃんがいるんです。それってもう、私の中に加蓮ちゃんがいるようなものなんです。もう、1人の時間じゃない。

さて、何を注文して待っていましょうか。
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:47:13.42 ID:c9YrBNdm0
時間は楽しい物だけではありません。
小学校の給食は美味しかったけれど、食べ終わった時に誰もいないことはすっごく寂しかった。
加蓮ちゃんとお話するのは楽しい。でも、楽しいばかりじゃない。傷つけることもあって、傷つけられることもある。
私が何を望んでも、何を望まなくても、関係なく。
私は私で、加蓮ちゃんは加蓮ちゃんですから。
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:48:13.16 ID:c9YrBNdm0
学校で「結婚」という単語を習った時、お母さんに聞いてみたことがあります。お母さんとお父さんはどうして結婚したの? って。
色々なお話を聞きました。好きになってからのお話や、ケンカが3日も長引いてしまったこと。お父さんのお仕事が上手くいかなかった時のこと。
そして最後に、「辛いことや楽しいことが色々あって、人生よ」って、綺麗な笑顔で言っていました。
達観した表情の意味を、当時の私は……ううん。ちょっと前までの私は分かっていませんでした。
どうして辛いことが必要なのだろう。楽しい時間や、幸せな時間だけがあればいいのに、って、ずっと思っていましたから。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:48:43.21 ID:c9YrBNdm0
おっと。のんびりばかりもしていられません。早く決めなきゃ、加蓮ちゃんが来ちゃう。
メニューを開いて、うーん、とわざとらしく唸ってみます。わざとらしく唸ってみましたけれど、アイディアが、すとん、と落ちてくることなんてありませんでした。
……ひらめく時だってあるんです。ひらめいたことが正解とは限りませんけれど……それどころか加蓮ちゃんに「……えー」って顔をされちゃったこともありますけれど……。あれはまだ好き嫌いがぜんぜん分かっていなかった時のことなんですっ。あと、ここのメニューを制覇していない頃だったから、食べたことのない物を一緒に食べたいなって思っただけで――

……って、誰に言い訳しているんでしょうね、私。あはは……。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:49:13.35 ID:c9YrBNdm0
ふと、いたずらごころ、って単語を思い出しました。
ズルしちゃおっかなぁ。
店員さんを呼びました。朗らか笑顔で「どうされました?」と尋ねてきます。なんだか、すっごく期待している感じの声です。

オススメはありますか? って聞いてみました。
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:49:43.08 ID:c9YrBNdm0
なんだか加蓮ちゃんの気持ちが分かってしまいました。気を遣われるのって、辛いんですね……。
……たった1度のことで分かったつもりになったら、怒られちゃうのかもしれません。
加蓮ちゃんの気持ちって、分かる時と分からない時があるんです。同意できる時と同意できない時。共感できる時と共感できない時――
素直に、分からない、って言う方が、加蓮ちゃんは喜ぶみたいです。少なくとも、怒りはしないみたいです。
言ってほしいことや言いたいことを、はっきりと言う方が好きなのが、加蓮ちゃんです。
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:50:13.13 ID:c9YrBNdm0
ヒントは、「すぐ行くー」ってメッセージ。今から行く、ではなくて、すぐ行く、ってことは、何かお話したいことがあるって感じがします。
面白い話題でも見つけたのかな?
それとも、私に聞いてほしいお話があるのかな?
どっちでも楽しみです。それは決して、必要とされているからって理由じゃありません。ありませんし、たぶん、私には説明できない理由なんです。だって考えようとしたら、その、顔がにやけちゃって……。

以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:50:43.91 ID:c9YrBNdm0
分かってはいるんですよ。さすがに何度もステージに立って、CDを出して、ユニットも組んで……そうすれば、自分がアイドルだって自覚くらいは生まれます。あと、過度な謙遜はよくないっていうのも社会に出て学びました。ちょっとは学びました。

でも、加蓮ちゃん。
本気になっている時のあなたの顔がどれほど美しいか、知っているんですか?
あれを見たら、胸を張るなんてできなくなってしまうんですよ。
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:51:13.91 ID:c9YrBNdm0
あっ、今は加蓮ちゃんの食べたい物のお話ですね。
お話しやすくて、食べやすい物。サンドイッチはパス。1週間くらい前にブームは去ってしまったみたいですから。
じゃあ……手堅いところでクッキー? でもそれはご飯ではありませんよね。
おにぎりでもいいですけれど、息が荒れている時のおにぎりって食べづらいですよね。さすがに、ここに走って駆けつけてきたりはしないでしょうけれど……。早歩きで来る、くらいは予想できちゃいます。

以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:51:43.14 ID:c9YrBNdm0
少しだけ、店員さんとお話しました。
野菜定食がオススメな理由とか、2月の限定メニューの予定(秘密の内容らしいです。常連の特典ですね♪)とか。
あと、最近は写真を撮ることにハマっていて、良い写真が撮れたらお店の中に飾りたいってお話をしてもらえました。
是非見に来ますね、とお伝えしたら、畏れ多いです! なんて言われちゃって、背筋をビシっと伸ばして敬礼されちゃました。
お、畏れ多いって……。私は普通に写真を撮るのが好きなだけなんですけれど……。
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:52:13.15 ID:c9YrBNdm0
それなら、飲み物も変えた方が良さそうですね。
お茶をお願いします。2人分。そう伝えると、もちろんです! という返事が来ました。
2人分、ってところへの「もちろん」なのかな?
店員さんが足取り軽く立ち去ったところで、加蓮ちゃんの席に落ちちゃったメニューを拾いに行きます。

以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:52:43.13 ID:c9YrBNdm0
メニューはそのままに、自分の席へ戻ります。
そういえば、私たちはいつも同じ場所に座っています。店の入り口から見て右手側、一番奥の席。加蓮ちゃんが手前側で、向かい合うように私が座っています。奥の方が入り口からパッと見えなさそうだから、っていつか加蓮ちゃんが言っていたことを覚えています。私たちはアイドルだから、バレちゃう可能性はちょっとでも減らした方がいいだろうって。
普段、カフェでどこに座るかなんてぜんぜん考えていなかったから、少しびっくりしちゃいました。

でも実際は、店の入り口からでもこの席は見通せます。加蓮ちゃんが先に来ている時は、店内に入ってすぐに見つけられます。それどころか最近では加蓮ちゃんが手を振ってこっちこっちって言っています。
以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:53:13.24 ID:c9YrBNdm0
「こんにちは、加蓮ちゃん。外、寒かったですか?」

「こんにちは、藍子。そりゃーもう寒いよー。でもあんまり凍ってはなかったなぁ。ほら、前にペンギン歩きってやってみたじゃん。あれ、もう使うタイミングはなさそうだね」

「残念。ペンギンさんみたいに歩く加蓮ちゃん、可愛かったのに」
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:53:43.10 ID:c9YrBNdm0
コートを脱ぎ終わって投げちゃったところで、ふと目線が下に向きました。
少しの間だけ、怪訝な顔。
それから、まるで困っている私をからかおうとしているクラスメイトみたいに、口の端を上げました。

「メニューを見てたら手が滑った、とかでしょー。ダメだよ、ちゃんと戻さないと」
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2017/01/21(土) 18:54:13.18 ID:c9YrBNdm0
「変なの。あ、店員さんだ。やほっ。私は――え? あ、もう注文はしてる? それの確認? ふうん。藍子、注文しててくれたんだ」
「……何が来るかは、来るまでのお楽しみですっ」
「だね。その方が面白そうだし。ってことで店員さん、ナイショでいいよー。わざわざありがとね」

いいえ、と首を軽く振った店員さんは、ふと、私の顔を見ました。それから、加蓮ちゃんの顔を見て、大きく頷きました。
以下略



24Res/20.86 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice