中野一花&二乃&三玖「そうだつさばいぶ」
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2:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:42:42.45 ID:ukwsVoEQ0
 唐突だが二択だ。一つの選択肢は『遠回り』、もう一つは『見て見ぬふり』。登校時間を考慮したときに前者は遅刻覚悟になるためちと厳しく、されど後者は著しく成功率が低そうだと考えるだけで分かる。
 俺が何から逃れようとしているのかという問いに関しては、『面倒ごと』の一言で全て片付く。最近しょっちゅう襲ってくる悪い予感というやつが、今日も朝からエンジン全開だ。たまには俺を休ませてくれないものかと毒づいてみても、現実問題として設置型の爆弾が視界に収まっている以上対処しないわけにはいかない。肺を空にする勢いで長く息を吐いて神経を尖らせ、ポケットから取り出した単語帳に意識を預ける。幸いにも向こうはスマホをいじるのに必死なようだから、気づかれないうちに強引に突破するしかないだろう。
 少しでも不自然な動きを見せればこちらを注視されてしまうだろうから、ここは駆け出したい心を必死に殺して普段と変わらぬペースで優雅に歩く。あくまで視線は前に向け、横にあるものにはまるで意識が向いていないとでもいうような涼しい表情を浮かべながら。


3:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:43:25.77 ID:ukwsVoEQ0
 対象との距離が縮まるごとに表情筋が引き攣りだすのが分かったが、それでも限度いっぱいまで平静を貫く。せめて朝くらいは平穏無事な生活を送らせて欲しいのだ。
 そんな俺の願いが神様にでも通じてか、彼女の様子に変化はない。俺が血相を変えて声でもあげるだろうと高を括っていたのではないか。その油断が命取りだぜと心の中でほくそ笑み、目の前を悠々と通り過ぎる。これで俺の勝ちは揺らがないものに変わった。
 だから今急に鳴り出した俺のケータイの着信音は、きっとらいはからのものに違いない。それ以外、誰が該当するというのだ。馬鹿馬鹿しい。
 その場で立ち止まって、ディスプレイに表示された名前を確認する。まあ、なんだ。念のためというか、一応というか。いたずら電話の可能性だってあるのだし、迂闊に行動して良いこともないからな。
 そんな俺の懸念はやっぱり杞憂だったようで、コール音の主はきちんと電話帳に登録された人物だった。これでいたずらの線は消えたなとうっすら笑いながら、通話ボタンに手をかける。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:43:54.46 ID:ukwsVoEQ0
「…………もしもし」
「なんで逃げ切れると思ったの?」

 自分の声があまりに苦しげ過ぎて驚いた。どうやら想像以上に肉体が絶望しているらしい。いや、確かに、最初から成功率の低い賭けだとは承知していたけれども。
 俺は律義にケータイを通して声を発したが、相手に関してはしょっぱなからそんなのお構いなしで肉声を用いてきた。漢気に溢れすぎていて、俺は今にも泣いてしまいそうだ。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:44:29.04 ID:ukwsVoEQ0
「しゅ、集中しててな」

 手に持った単語帳を強調する。俺はすっかり勉強に没入してしまっていたから、周りのことになんかなんら意識が移らなかったのだと。

「あんたさ」
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:45:17.23 ID:ukwsVoEQ0
「はい」
「お、おう。サンキュ」

 なんてことなく目の前に差し出され、特に思うこともないまま受け取ろうと手を伸ばす。ありきたりな善意に感謝こそすれ、この場において警戒を払うに足る要素が存在するとは思えなかった。……が、まあ、それが結局のところは俺の大いなる過失で。
 完全に気を抜いていた折にぎゅっと力強く袖を引かれ、つんのめるようにして彼女との距離が意図せずして詰まる。最近よく嗅ぐ匂いがして、状況的な類似点から、これは中野家で使用しているシャンプーの香りなのだなと理解した。身長差がそこそこあるせいで、基本的に俺の鼻の位置はこいつらの頭に寄る。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:45:45.37 ID:ukwsVoEQ0
「昨日すれ違った時にもちらっと見えてたんだけど、これ」
「虫刺されだ」
「そう、最近多いもんね」
「ああ、ほんと多すぎて困ってる」
「で、どんな虫だったの?」
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:46:13.28 ID:ukwsVoEQ0
「教えてよ。あんたと私の仲じゃない」
「なんだその仲……すまん俺が悪かったからやめてくれ無言で腹をさすらないでくれ」
「で、誰?」
「…………言えない」
「三玖?」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:47:32.50 ID:ukwsVoEQ0
「三」
「…………」
「四」
「…………」
「五」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:48:02.34 ID:ukwsVoEQ0
「……はぁ、仕方ないから今回だけは見なかったことにしてあげる」
「すま……助かる」
 
 謝るのは何かが違う気がして、感謝の方に舵を切った。まだそこまで暑い季節ではないはずなのに、俺の冷汗はまるで引く気配を見せない。

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/20(日) 20:48:42.91 ID:ukwsVoEQ0
「それは……困るが」

 だからといって、首の肉をこそぎ落としでもしない限り消えることはない痕だ。そしてそんなことをした暁には出血過多で即ゲームオーバーである。頸動脈のパワーを侮ってはいけない。

「消し方、教えたげよっか?」
以下略 AAS



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