とある後日の幻想創話(イマジンストーリー)4
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628: ◆A0cfz0tVgA[saga]
2016/05/23(月) 01:12:58.89 ID:+1M4Crvn0
――――少女は元々、この国の山奥にある小さな村に住む娘だった。
世界を巻き込んだ未曾有の大戦。それに敗北した日の本の国。
629: ◆A0cfz0tVgA[saga]
2016/05/23(月) 01:14:16.42 ID:+1M4Crvn0
日の出と共に、布団から起き上がり。
河のせせらぎを傍らに田畑を耕し。
630: ◆A0cfz0tVgA[saga]
2016/05/23(月) 01:14:50.29 ID:+1M4Crvn0
予兆はなかった。もしあったというのなら、誰かしらが気づいていたはずだ。
単調な流れの中にいる者にとって、『変化』はどうしようもない『違和感』として感じてしまうもの。
故に『それ』は前触れ無く突然に降りかかり、当たり前であるはずの日常を霞のように吹き散らした。
631: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:15:25.28 ID:+1M4Crvn0
助け出された男は、ふらつくように立ち上がると、直ぐ傍にいた彼を支えていた家族――――
その者は彼の兄だった――――に近づき、思いっきり前から抱きついた。
助かったことに喜びを感じたのだろうと、一瞬和やかが雰囲気が周囲に漂ったと思った瞬間、
632: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:17:09.25 ID:+1M4Crvn0
その声は、正しく断末魔に等しいもの。
一同の背筋に、氷柱を脊椎に押し込まれたかのような震えが走る。
声の方を見やると、相も変わらず兄を抱きしめている男の姿。
相も変わらず、兄弟愛をかんじる光景である。
633: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:18:25.02 ID:+1M4Crvn0
眼球を真紅に輝かせ、異常にまで伸びた犬歯を剥き出しにした『人だったモノ』が周囲の人間に次々と食らいつく。
そして食らいつかれた者もまた、餓鬼のような呻き声を上げ、他の人間に襲いかかる。
狂気が狂気を産み、正気は狂気に飲まれていく。それはあたかも、細菌が増殖していくように。
634: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:19:14.47 ID:+1M4Crvn0
結局の所村民達は、真実を知ることもなくその日の内に死んだ。
日の光を浴びて消滅したのではない。殺されたのである。
635: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:19:57.31 ID:+1M4Crvn0
その時の光景を、少女は今でも覚えている。
自分の見知った人々が。
636: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:20:51.72 ID:+1M4Crvn0
その地獄を経験しながら、彼女がこれまで正気を保っていられたのは。
村の皆が最後まで少女の身を案じていてくれていたと言うことだろう。
己の内から沸き上がる吸血衝動。『吸血殺し』によって制御不能となっていたはずのそれを、
彼等は最後の最後まで理性によって押さえつけようとしていた。少女を傷付けまいとしていた。
637: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:21:59.89 ID:+1M4Crvn0
(だけど。 ただ一つだけ。 願いがあるとしたら。)
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