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2011/01/19(水) 20:20:41.76 ID:IClwZiHj0
気付いた時、既にいーさんは隣から消えていた。唐突にこんな事を言っても理解が難しいとは思うが実際そうだったのだからそうとしか言いようが無い。ついさっきまで今後どうするかを話していた……はずなのに。で、ありながら。
二分前か、三分前か。五分前か十分前か。まるで神隠しにでもあったみたいに忽然と。
辺りを見回してみても一本道の裏路地である。ここを二人で並んで歩いていたはずなんだ。さっきまで。
おいおい、レベルの高い迷子能力だななどと、皮肉を少しばかり響く声で口走ってみても音沙汰無し。
……これはもしかして、敵の攻撃ってヤツか?
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2011/01/19(水) 20:25:43.43 ID:IClwZiHj0
「えーっと、ああーっと……オデットさんや?」
とにもかくにも話し合いを試みる俺。そうだ、きちんと向かい合って話し合わないからお互いを理解出来ずに戦争が始まってしまうのだろう。であるならば、言葉が通じる以上無用な血を流す必要なんてどこにも無いんだ。そうだろ?
人間関係は信頼関係。きっと電波さんとだって分かり合えなくとも共存の道は有るはずさ、どこかに。
……どこかとは言ったものの窓やらに柵の付けられた病院しか想像出来はしないのだが。
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2011/01/19(水) 20:28:50.76 ID:IClwZiHj0
ああ、これで終わりか。こんなトコロで終わりか。人間ってのは死ぬ時はやけにあっさりと死んじまうモンなんだなと俺の頭が諦念でいっぱいになるまでには一秒と掛からなかっただろう。
多分、走馬灯みたいな感じで時間が圧縮される現象がそこには起きていたんじゃないかと思う。なぜかっつーとそれは美女が俺から飛びのく様がスローモーションで見えたからであり、また俺と彼女との間に飛んできた刃物の軌跡がやけにはっきりと見えた事から俺はそう思ったのだが。
……助けに来るのおせーよ、ったく。
「その人は赤神イリアではありませんよ、赤神オデットさん。よく見て下さい。そもそも彼は男性です。その人を赤く染めたところで貴女の本懐は達成出来ません。悪しからず」
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2011/01/19(水) 20:32:54.48 ID:IClwZiHj0
「カッターナイフ? の刃?」
「ええ。ほら、一応僕って機関の構成員と学生っていう二束の草鞋な訳じゃないですか。となるといざという時に武器に出来そうで持っていられる物は筆記用具関係しかないんですよ」
なるほどなるほど。つまり、コイツは常在戦場って感じなのか。不味いな。そんなの知っちまったら迂闊にからかう事すら出来ねえじゃねえか。あー、知らなきゃ良かった。
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2011/01/19(水) 20:37:37.06 ID:IClwZiHj0
「古泉!」
非難の意味を込めて少年の名前を呼ぶ。しかし、ソイツは無言で足元を見ていた。その視線の先には物言わぬ屍が転がっている、はずだった。
だが、俺の予想はここでも外れる。「それ」は口を聞いた。最早物言わぬはずの「それ」は、物を言った。
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2011/01/19(水) 20:43:43.68 ID:IClwZiHj0
「いいえ、姉さまはちゃんと分かって下さいます。貴方さえいなくなれば、邪魔者さえいなくなれば、紅茶とスコーンを用意してゆっくりと話し合えば優しいイリア姉さまは私の事をちゃんと受け入れて下さいます」
ですよね? と同意を求められても俺に頷ける訳が有るかよ、オイ? こんな妹持った覚えは無いし、本物の妹は今頃、兄の不遇も知らずに温泉旅館で夜もぐっすり熟睡モードだ。ああ、こんな事になるんだったら俺も一緒に温泉に行っておくべきだった!
誰だ、後の祭りであるとか後悔先に立たずとか上手い日本語作りやがったヤツは。大きなお世話にも程が有るだろ。そんなんは言われんでも今、骨身に染みて理解してるっつーの!
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2011/01/19(水) 20:46:32.69 ID:IClwZiHj0
よく考えれば。あんな小さな弾を撃ち込まれただけで血があそこまで噴き出すだろうか。冬に、コートを別にしても三枚は着ている服を抜けてコートの外にまで血が滴るものだろうか。
そして、なぜ古泉はずっと右肩を左手で押さえていたのか。俺はそれをずっと出血を抑えていたのだと勘違いしていたが。それが。
血糊を肩口で押し潰しているだけだったとしたら、どうだ?
「え!?」
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2011/01/19(水) 20:51:18.80 ID:IClwZiHj0
以前気絶しっぱなしの朝比奈さんを背に負って歩く俺の、隣を古泉は歩いていた。
いわく、心苦しいがいざという時に自分は戦わなければならない為に朝比奈さんを背負っては歩けないとの事だ。いや、今しがたまで謎のホラー美女と大立ち回りやらかしてたヤツにそこまでさせるのは流石に俺だって出来ねえよ。
それに、ま、これはこれで役得ってヤツだしな……現状が緊急事態でさえ無ければ表情筋を一筋残らず弛緩させていてもおかしくはない。
しっかし、去年の七夕(正確には四年前の七夕になるのだろうか)以来だよな、こうやって朝比奈さんを背負うのも。
なんかちょっとした既視感だぜ。
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2011/01/19(水) 20:55:00.23 ID:IClwZiHj0
「ええ。非常識極まりありません。ちなみにこうやって貴方に種明かしをしている僕ではありますが、その道のプロではないので正直貴方と逸れないようにするのが精一杯なんですよ、これでも」
そうかい。そりゃ……って、おい、ちょっと待て古泉!?
「気付きましたか。僕たちは危機から逃れたつもりでいて実はまだ敵の術中、その只中に居るのです」
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2011/01/19(水) 20:56:24.94 ID:IClwZiHj0
「良い忠犬ぶりだ。玖渚機関の『情報操作室』、弐栞らしい掌の返しようだね」
「勿体ないお言葉です」
古泉はその姿勢のままに動かない。頭を上げる事も無く地面に向けて言葉を発するが……どういうこった? 玖渚ってのはコイツが所属してる機関の正式名称で……ダメだ、分からん。
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2011/01/19(水) 20:59:52.51 ID:IClwZiHj0
戯言遣いを先頭に歩く俺たち四人。道すがら俺は古泉に耳打ちした。
「なあ、あのいーさんってのはお前が畏まるくらい凄い人なのか? 正直、俺にはその辺に居る普通のヤツとあんまり変わり映えしないんだが」
白ウェディングドレスの殺人鬼に黒スーツでめかし込んだ金属バット、着流しに狐面を付けた長身痩躯や全身真紅の人類最強と今日見た「そっち側の人間」っていうのはどいつもこいつも服装からしてどっか螺子が吹き飛んでいた。
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