13: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:25:24.91 ID:ltIw3edqo
そこでボールは一旦止った。
ぎゅっと強くボールを握りしめて、憂は精一杯笑った。
「じゃあさ」
14: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:26:08.62 ID:ltIw3edqo
「どうぞ!」
純は嬉しさに、外気以上に内側から体が熱くなるのを感じて力いっぱいボールを投げた。
15: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:27:26.65 ID:ltIw3edqo
生徒会室はいよいよもって冷え切って、山中教諭は肩を摩っていた。
全く、夏に寒い思いをしなきゃならないなんて、馬鹿馬鹿しい。
「和ちゃあん……クーラー切りましょうよお」
16: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:28:36.83 ID:ltIw3edqo
「どうぞ」
生徒会長が歳不相応に大人びた笑顔で差し出した麦茶を受け取って、さわ子は目を伏せた。
口をつけて、グラスをくいと傾けると、冷たい水が体を内側から冷やした。
17: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:30:05.62 ID:ltIw3edqo
窓の外には空があった、雲があった、鳥もいたし、緑もあった。
けれど、冷房で冷やされたガラス窓が、そんな夏の暖かさを完全に遮断していて、さわ子はその明媚な光景を見ても何も感じることが出来なかった。
何かを感じたいとは思っていた。
18: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:31:22.37 ID:ltIw3edqo
さわ子は熱気を感じた。
顔にむんとした空気が当たって、額にうっすら汗が滲んだ。
ああ、化粧が落ちてしまうかも知れない、そんなことを思ったけれど、さわ子は楽しそうに笑った。
19: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:32:31.82 ID:ltIw3edqo
「壁当てでもしたらいいじゃないですか。一人で出来ますよ」
「壁当て?」
20: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:34:09.31 ID:ltIw3edqo
和は見た。
さわ子の細い、長い腕が、質量はそのままに体積だけ大きくなった、薄い柔らかい夏の空気を纏って、しなった。
ふっ、と高い音がなった。ぱん、と綺麗な音が響いた。
ボールは相手の胸元に真っ直ぐに届いた。
21: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:35:07.73 ID:ltIw3edqo
和は麦茶を飲んだ。ぐい、と一気に。
それでも下がらない、彼女の体は火照るばかりだ。
「そうかも、しれませんねえ」
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/01/23(日) 17:36:11.33 ID:ltIw3edqo
「あれ、和ちゃ……さん……汗だくだ」
純の投げたボールを取って、憂は、急に走ったせいで肩で息をしている和に声をかけた。
隣では、さわ子が、こちらも息を弾ませて、けれどげらげらと可笑しそうに笑っていた。
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