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2011/03/06(日) 00:53:14.59 ID:UJglJRMW0
6月も終わろうとしていたある日の昼下がり。見滝原中学の屋上から見渡せる街並みの上には、雨雲が低く垂れ込めていた。
「授業たりー。このままここでさぼっちゃおうか」
屋上の片隅にあるベンチに腰掛けていた女生徒がそう言うと、隣に座っていた眼鏡の女生徒が手を目の高さにかざしながら言った。
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2011/03/06(日) 00:54:18.95 ID:UJglJRMW0
巴マミが教室を覗くと、中には誰もいなかった。
(あれ……?教室が空っぽだ。移動教室かしら……?でもあの子の机は畳んだままになってるし、やっぱり今日も……)
「うちのクラスになんか用?」
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2011/03/06(日) 00:54:45.48 ID:UJglJRMW0
「なんだ、あんた聞いてないんだ」
女生徒がそう言うと、マミは少しだけ口ごもってから言った。
「さっきまで図書室にいたから……。何かあったの?」
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2011/03/06(日) 00:55:15.33 ID:UJglJRMW0
そのとき、ものすごい勢いで誰かが階段を駆け降りてきた。
「おい、お前何してんだよ。すぐ屋上来いよ!」
どうやらマミの相手をしていた女生徒を呼びに来たらしかった。
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2011/03/06(日) 00:55:46.05 ID:UJglJRMW0
(どうやら、あの子の知り合いだったみたいね。……そんなことより)
「キュゥベえ。聞こえる?近くにいたら返事して」
「僕はここだよ、マミ」
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2011/03/06(日) 00:56:32.03 ID:UJglJRMW0
雨の屋上には既に救急隊員が到着していた。生徒たちは傘もささずに、その様子を遠巻きに見守っている。
「これじゃあ私は近寄れないわ。キュゥベえ」
「了解だよ」
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2011/03/06(日) 00:56:57.33 ID:UJglJRMW0
マミが戻ろうとすると、男子生徒を乗せた担架が階段の方に向かってきた。
(……?)
「どうしたんだい、マミ?」
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2011/03/06(日) 00:57:41.73 ID:UJglJRMW0
(入院だなんて……どうして私に何も教えてくれなかったのかしら)
午後の授業が始まっても、マミは全く身が入らなかった。屋上での出来事も気にかかったが、それよりもその前に聞かされた事実の方がマミにとっては衝撃的だった。
(まあ、仕方がないかも知れないわね。幼なじみとは言っても、この頃は……ほとんど話をする機会もなかったし)
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2011/03/06(日) 00:58:06.80 ID:UJglJRMW0
(もし……なんて考えても仕方のないことだけれど)
交通事故に遭い、失われる筈だった命をつなぎ止めることと引き替えに魔法少女になったマミは、二つのものを同時に失った。
家族と、ふつうの少女としての青春とを。
それまでクラスの人気者だったマミは、事故の後、だんだんと自分が周囲から浮いた存在になっていくのを感じた。事故で一度に家族を失った悲劇の主人公にうまく接していくには、マミの友人たちはまだ幼すぎたのだった。もちろん、それだけなら時間が解決してくれたのかも知れない。孤独の影をひきずりながらも、一人の十代の少女として、人並みの青春を送れていたのかも知れない。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/03/06(日) 00:58:34.58 ID:UJglJRMW0
「で、これからどうする気だい、マミ?」
放課後、黄色い傘をさして家路につくマミの肩にしがみつきながら、キュゥベえは尋ねた。
「今日の事件が魔女の仕業だと分かった以上、放っておくとまた次の犠牲者がでることになるよ」
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2011/03/06(日) 00:59:10.75 ID:UJglJRMW0
「あったわ。小さく記事になってる」
見滝原市立図書館の閲覧室で、マミは一人目の生徒の自殺を報じた新聞記事を見つけた。
「『……10日朝9時頃、見滝原市のショッピングセンター△△の屋上で、少女が血を流して倒れているのを警備員が見つけた。倒れていたのは見滝原中学2年の××(14)で、すぐに病院に運ばれたが既に死亡していた。少女の右手首には切り傷があり、警察では自殺を図った可能性もあるとみて捜査を進めている……』ですって」
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