過去ログ - キョン「7月8日」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/08/13(土) 12:22:22.22 ID:Gu3hpdcq0
ふと、気がついた。
思えば毎年この日は必ず晴れている。いや、毎年ではないな。
この、煩悩で溢れかえってむしろ叩けば「パコーン」と乾いた音がしそうな
俺の脳内の引き出しをなにやらガサゴソとまるで空き巣に入った泥棒のようにあさると
それが正確には3年前からである、ということに驚きあきれる。
それと同時に、なんだか胸の、両肺の真ん中あたりがくすぐったく感じられ
あわてて俺は思考回路にルート変更の届出を出すことにした。

そのことに気がついたのはあと少しで昼飯にありつけるが、
しかしその「あと少し」の時の流れがなんとも石の上を箒でなで続けるくらい
とてつもない長さに感じられる、かのアインシュタインも相対性理論を考えたとき
こんな気持ちが最初のきっかけだったのでは?と思わせるくらいの4限目の終わり近くであった。

昨日とは違った自分の思考に少しほっとさせられながら、
それでも、少しぐらいはデジャブでもあっていいはずなのに、
毎度ちんぷんかんぷんの化学の授業内容理解をさいさんに諦めた俺の身体は
授業開始直後に眠気に負け、授業終了間際には空腹に負けて目が覚める、といった体たらくである。

教室の中の鬱陶しい暑さのせいで少々汗ばんだ身体にまとわりつくYシャツの感触が、
いかにも夏らしくて、それでいて不快だった。



2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:23:58.38 ID:Gu3hpdcq0
教室の窓際、後ろから2番目の席からの眺めは、もう、見飽きてしまった。
流れる雲を見上げてでもして、徒然なるままに時がうつろふ様をあはれに感じてみたいものだが、
いかんせん、雲にかげりどころか動きが全くない。
上空は風があまり吹いていないのだろうか。

以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:26:09.80 ID:Gu3hpdcq0
教室の窓際、後ろから1番目の席のやつにとって一体「ジョン・スミス」とはどのような存在なのだろうか。

少なくとも、「あの日にたまたま通りすがった北高生」では・・・ないのだろう、なんだろうな。
もう1度繰り返す。142857回目の、七夕である。

以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:28:37.51 ID:Gu3hpdcq0
ふと、毎晩出会っている真後ろの席のやつ(中学生バージョン)のことを考える。
142856回会っているが、中学生バージョンが校門を乗り越えようとしている後ろ姿は、どうにも俺をざわつかせる。
こう書くとただのロリコン野郎のようだが、そうではない。

142856回だ。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:35:44.65 ID:Gu3hpdcq0
さて。「あの日あの時あの場所で」とは歌えども、
この歌詞をこれほどうらめしく思うこと10989回目。その思いが日に日に強くなっていることをひしひしと感じながら、
俺は今宵も1人、校門の上でもぞもぞと動く、嫌でも見慣れてしまった、しかし昼間とは一回り小さなヒトカゲを見ていた。

朝比奈さん(小)は27回目ぐらいから公園のベンチに置いてきている。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:38:04.52 ID:Gu3hpdcq0
その声によって、そいつは142857回目の驚きを、その小さな背中のわずかなびくつきによって俺に示す。
俺にとっては毎夜毎夜の別に人目を忍んでいるわけでもなんでもない逢瀬まがい。
そして、こいつにとってはそれでもやっぱり初めての顔合わせである。

「なによっ」
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:41:05.33 ID:Gu3hpdcq0
もうこのやり取りを繰り返すのもめんどうだ。
999回目に朝比奈さん(大)に教えてもらったのだが、この場面での言動はけっこう融通が利くらしい。
つまり、このいけすかない中学生バージョンに「出会う」という条件さえクリアしてさえいれば、
ある程度はアレンジが可能であるというわけだ。
というか、この現象、今回のループ。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:42:43.91 ID:Gu3hpdcq0
「おい」

「な、なによ?」

俺を見下ろす、街灯の逆光のせいでさっきよりもかげりのある相変わらずの無愛想に声をやる。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:45:00.83 ID:Gu3hpdcq0
中学生バージョンは無言で俺に鍵を投げた。投げるな。手渡せよ。危ないだろうが。
1回目のこいつのように閂を固定していた南京錠を開け、校門の鉄扉を中学生の女の子1人ぐらいが通れる程度ずらした。
1287回目に初めてこの校門の鉄扉を開けてみた。

それは見た目以上に重く、よく1回目にこいつはこの扉をこんな小さな身体であけたもんだなと感心したもんである。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:45:50.09 ID:Gu3hpdcq0
「さっきから、あんたなんなの・・・・・・?」

これから自分のする行動をすべてお見通しであるかのように行動する俺は、
こいつに毎晩どのように思われているんだろう。
まだ、不審者のままなのだろうか。それは少しものがなしいが、まぁ、仕方のないことではある。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:47:23.17 ID:Gu3hpdcq0
まるでさっきの俺のようにぼけっと突っ立っている中学生バージョンに声をかけた。
が、しかし、その沈黙もつかの間であることすら俺は知り尽くしてしまっている。

それから、「ふ、ふーん、やるわね」だかなんだか言った後、
中学生バージョンはピラミッドを作る奴隷が如く俺をこきつかった。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/08/13(土) 12:47:50.54 ID:NvY/T90Ao
>>1の時間スゲーな


13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:49:28.84 ID:Gu3hpdcq0
「ほら、そこはもっとしっかり引いて!!線の太さは均一にしなさい!!」

「・・・へいへい」

俺としては、どんなに同じ時間を繰り返したとしても犬ではなく人間として
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:51:25.88 ID:Gu3hpdcq0
「まっいっか」

そう言うと、こいつは俺を上目遣いに見上げてくる。
しつこく言うが、俺にロリコン趣味はない。

以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:53:35.46 ID:Gu3hpdcq0
「・・・それで、これはいったい何なんだ?」

「見れば解るでしょ。メッセージ」

「まさか、織姫と彦星宛とかいうんじゃないだろうな?」
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:56:47.80 ID:Gu3hpdcq0
しばし考えごとをするかのように顎に左手を当て、伏し目がちになる。
沈黙がやたらと耳にうるさくなったかと思えば、いきなり行動に出て、その沈黙を急激にしり込みさせる。

「帰るわ。目的は果たしたし。じゃあね」

以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 12:57:51.31 ID:Gu3hpdcq0
その後の俺はといえば、
もはや心の友といっても過言ではないくらいの錆びだらけリアカー氏、車輪つき白線引きくん、
そして石灰の袋さんを体育倉庫へお返しした後、
公園へ赴き、朝比奈さん(小)と合流して長門のマンションに向かった。

以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 13:01:15.70 ID:Gu3hpdcq0
三人そろえば文殊の知恵だかなんだか知らないが、
もうとっくにお手上げ状態のお葬式モードの中で眠りについた。

電気が消えた。と思ったらまた点いた。これを人は点滅という。それくらいの時間の隙間だった。

以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 13:03:14.33 ID:Gu3hpdcq0
俺は思ったね、ああ、朝比奈さんですら行動の短縮化を行っている。
女ってのはこうやってだんだん要領がよくなっていく生き物なんだ、と。
俺の妹もいつかはこんな風に少女から女へと、その階段を登っていってしまうんだろうか。

それに比べて、男の俺の無様なことである。
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 13:05:49.53 ID:Gu3hpdcq0
帰り際、長門と目が合った。
そのタイミングで目が合ったことが今までなかった。
朝比奈さんは「また同じ朝ですか・・・」とつぶやきながら俺の横を通りすぎて先に歩いていってしまった。
朝比奈さん、せめて待っててほしかったな。新鮮みがなくなったとしても一緒に帰りたかったぜ。

以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/13(土) 13:07:50.64 ID:Gu3hpdcq0
長門の言葉はそれで終わった。
俺はいぶかしく思いながら、142858回目の家路に就いた。

短い睡眠時間ではさして変わらない倦怠感でが詰まっている頭の中で
長門の言葉が、
以下略



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