過去ログ - 男「だったら俺が悪いのかよ!」
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31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:43:23.43 ID:PjuOVipoo

 自動車学校に通うことで、彼は少しずつ冷静な考えを取り戻し始めた。
 とにかくこれ以上、部屋に引き篭もり続けるという選択だけはしたくなかった。
 どうにかして現状から抜け出すのだという気負いとも言える意気込みもあった。

以下略



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:44:34.31 ID:PjuOVipoo

 教習券を買い、予約を取り、学科講習を受け、教習所の狭い道路を走ることにも徐々に慣れていき、次第に自然と振る舞うことができるようになってきた。
 待ち時間は本を読んで過ごす。教官と車内で世間話をしたりもする。夕方になると騒々しくなり始めて憂鬱になるが、彼はそもそも以前から喧騒や人ごみを嫌うタチだった。

 何かをしているという実感が沸いてくると、今度は今までならなんとも思わなかったようなことで楽しい気分になったりもした。
以下略



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:45:00.65 ID:PjuOVipoo

 その日、彼は騒々しさに煩わしさを感じながら、教習所の待合室で本を読んでいた。
 とにかく時間を潰すなら何でもいいと思っていたせいで、よりにもよって恐ろしく読みづらい翻訳書を持ってきてしまった彼は、読書にあまり集中できず、時間の流れを遅く感じていた。

 仕方なしに立ち上がり、自販機で飲み物を買うことにする。
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34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:45:26.88 ID:PjuOVipoo

「よう」

 背の高い男だった。どこかの高校の制服を着ていて、親密そうな笑みを浮かべている。うしろには数人の少年が控えている。この男の友人だろう。
 彼が黙っていると、男は少し不安そうな顔になった。
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35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:45:52.79 ID:PjuOVipoo

 たとえば「○○は××だ」という文章を書くとき、ヤマトの日記では「○○ゎ××だ」と記されていた。
 一般的な高校生がこのような書き方をするかどうかは分からないが、ヤマトがそういう文章を書くことは、彼にとってはひどく大きなことだった。

 日記にはさまざまなことが記されていた。
以下略



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2011/08/29(月) 11:46:19.30 ID:PjuOVipoo

 こうして実際に会ってみると、内面はともかく、さまざまな面でヤマトが変わったことに気付いた。

 まず、前はどんなにくだらない言葉にも笑顔を見せる人物だったのに、今は笑わなくなった。
 後ろに居並ぶ友人たちにかける口調も、少し違うものに聞こえる。
以下略



37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:46:45.58 ID:PjuOVipoo

 自分の中で落ち着き始めていた劣等感が、またうねり始めたのを彼は感じた。
 帰りのバスのなかで、彼は文庫本を広げたが、目が滑っているかのように文章の意味が頭に入ってこない。
  
 落ち着かない気持ちで、自分以外に乗るもののいない車内を見回す。
以下略



38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:47:11.96 ID:PjuOVipoo

 家についてから階段を駆け上がり、また自室に篭る。鍵を噛ませて、床に荷物を投げ捨ててベッドの上に体を投げ込む。

 ことあるごとに、この不安は身を貫くように暗い穴倉から這い出してくる。

以下略



39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:47:38.55 ID:PjuOVipoo

 夕方を過ぎると、仕事が早く終わったらしい姉が帰ってきた。
 なんとなく誰かに会いたい気持ちになって、彼がリビングに降りると、姉は冷蔵庫からジュースを取り出していた。
 
 姉は彼の表情を見て、何かを察したのか、不審そうに眉をひそめた。
以下略



40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:48:05.20 ID:PjuOVipoo

 本でも読もうかとページをめくるが、やはり頭には何も入ってこない。

 ぐるぐると堂々巡りを続けている。これはひょっとして、ずっと続くのではないだろうか。
 仮に社会復帰できたとしても、また何かが起これば、すぐにこうして部屋にこもりたくなるのではないか。
以下略



41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:48:36.16 ID:PjuOVipoo

 ――本当に? 

 頭の中で自分を疑う声がした。耳を貸すな、と彼は胸中で呟く。

以下略



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