312:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:24:49.96 ID:3SORN3Q00
「ああ」
「どのボタンを押せばいいの?」
「赤いボタンだ。一個しかねーだろ?」
313:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:25:18.38 ID:3SORN3Q00
食い入るように見ている。
画面から流れてくる音は、彼女の知らない言語だ。意味なんて分かっていないのだろう。
いや、どうせ。
覚えてもすぐ忘れてしまう。
彼女が集中しているのを見て、ゼマルディはそっと扉に鍵をかけた。そして外から何重にもロックをかけ、最後に開かないかを確認する。
314:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:25:47.01 ID:3SORN3Q00
*
「ずっとあの調子なのかい?」
ドクにそう聞かれ、ゼマルディは目の前のテーブルに置かれた酒に手をつけようとはせずに、ソファーに寄りかかった。そしてマントにつけてあるフードを目深に被る。
315:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:26:20.61 ID:3SORN3Q00
「それなんだが……」
そこでゼマルディが言いにくそうに口を挟んだ。
「ん?」
316:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:27:01.71 ID:3SORN3Q00
「なあ俺の心臓を使ってくれよ。ちょっとくらいならいいんじゃ……」
食いつくように身を乗り出した彼を見て、困ったようにドクは息をついた。そして空になったコップを上げて、ウェイトレスに追加注文の意思を伝える。
「話ィ聞いてくれ!」
317:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:27:29.93 ID:3SORN3Q00
冷静に諭され、ゼマルディは口をつぐんだ。
ウェイトレスがジロジロとフードを被りピエロのマスクをした彼を見ながら、ドクの前にお代わりの酒を置いて去っていく。
白衣の青年は二杯目に口をつけながら、少し考えて口を開いた。
「まーでも、キミは俺の命の恩人なわけだし、友人なわけだし。考えてみるよ。ちょっと待っててくれな」
318:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:28:27.29 ID:3SORN3Q00
「で、腕の調子はどう?」
「俺のこたぁどーでもいーよ」
「そういうわけにはいかないな。医者として患者を途中で投げ出しはしないよ」
319:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:31:48.95 ID:3SORN3Q00
ドクの手術は、神経系に操作系統を接続して、脳波、発汗具合、体温、そして動悸の割合により体の各部の動きを制御するというシステムを確立させるものだった。
多少動きは鈍いが、普通の腕とほぼ差しさわりのない動作が可能になっている。
いわば、アンドロイドではない。これは人間のほぼ完璧な一部サイボーグ化といっても良かった。
それぞれの関節部などを丹念に見て、一部にポケットから出した油を差し、そしてものの数十秒でドクはまた手袋を嵌めた。
腕を戻しながらゼマルディが口を開く。
320:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:34:13.34 ID:3SORN3Q00
「俺なんかよりカランを見てやってくれよ」
「あの子は君みたいに動き回らないから、そもそも動作不良は起きないよ。俺のマシンドパーツはナノシステムを組み込んでるから、大概なら組成修復はするからね」
「用が済んだなら、帰りたいんだけど……」
321:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:34:50.31 ID:3SORN3Q00
少し迷った後に、青年はマスクを直し巨体をソファーに沈み込ませた。
「早く戻らねぇとカランが……」
「大事な事なんだ。とりあえず、これを見て欲しい」
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