過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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61:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:56:24.49 ID:A45p+aH70
シャンデリアが形成する『影』……。
それは、数百の電球により、幾重にも分かれて床や壁に投影されていた。
毎日、そうだった。
それくらい言葉が不十分な自分でも分かる。
しかし……その影が今日はやけに濃いのだ。礼拝席の下の方……つまり人間達の足元に、幾重にも分かれず、墨のように真っ黒なそれが広がっている。
以下略



62:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:57:04.20 ID:A45p+aH70
こっちに来る。
慌ててステージの方を見ると、何故かそこだけはその真っ黒い影は到達していなかった。
何だ、これ……。
近づいてくる。
カーペットの、影なんて出来ないはずの場所に生き物のように広がっていく。さながら本当に墨汁を投げ落としたように。
以下略



63:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:57:37.28 ID:A45p+aH70
飛びのいて待機室の隅に移動し、爪は首筋の痛みに顔をしかめながら右手を、入り口から入ってきた黒い影に伸ばした。
首筋の黒い球が強く、濡れた光を発し始め。

「何ダ貴様。ナゼソンナに殺気ヲダシテル」

以下略



64:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:58:23.61 ID:A45p+aH70
次の瞬間、鋸が鉄を引っかくような金属音が響き、壁についている掌の回りの空気が蜃気楼のように揺れ。
間髪をいれずに、人型に壁が抉れた。
身長は二メートル前後だろうか。
背後の影が、ポケットに手を突っ込んだような形に壁ごと後方に吹き飛ばされる。厚さ二十センチはある壁を、表面も……鉄骨に至る内部までもを紙にパンチで穴を開けるように後方に、爪の掌底は抉り吹き飛ばした。
まるで漫画のような、綺麗な人型に壁に穴が開いていた。
以下略



65:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:59:01.68 ID:A45p+aH70
爪は首筋の黒い核を押さえ、自分が壁に開けた穴から、ためらいもなく空中に身を躍らせた。そしてなにもない虚空を足で蹴り宙を舞う。数秒後、実に驚異的な距離を弾丸のように舞い、正体不明の侵入者が突き刺さったビルのその土煙を上げている崩れた壁に難なく着地する。
オフィスビル。何かの事務所のようだ。慌てふためき出口に殺到する人間達を一瞥もせず、爪は白煙の中でベロリ、と上唇を伸ばした舌で舐めた。
何人か、崩れた瓦礫の下敷きになって呻いている。
手を刺し伸ばすことも、それどころか場所を変えようともせずに。
爪はまだもくもくと煙を上げている、眼前の部屋の壁……合成強化コンクリートの穴に向けて左手の人差し指を伸ばした。そして激鉄を起こすように、親指を上に向かってクイッと上げる。
以下略



66:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:59:34.04 ID:A45p+aH70
穴の中から、ポケットに手を突っ込んだまま……カラスのようなコートに身を包んだ大男がゆらりと立ち上がったのと。
その彼の胸に、爪の指先から撃ち出された空気の渦が突き刺さったのは殆ど同時のことだった。
石灰岩を握りつぶすような、胸骨が粉々に破砕される不気味な音が響く。大男の体は、後方に吹き飛びもしなかった。ただその空気が回転しながら弾痕を広げ、胸部全体にクシャリと、ドリルのように抉りこむ。
それ自体が衝突の瞬間一秒半ほどで消滅したが、与えた影響は甚大だった。
煙が晴れ、体から合成コンクリートの破片を零しながら立っている大男。百メートル以上もの距離を弾き出され、強化素材のコンクリートを突き砕いても悠然と立ち上がってきたそれの口から、ボコリと泡を立てた血痰が逆流する。床に相手が血を吐き散らし、膝を突いたのを見て、爪は面白そうにゾクゾクと体を震わせた。そして猫が鼠をいたぶるように、また大男に指を向け……思い直して下ろす。


67:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 17:00:05.04 ID:A45p+aH70
黒コートの男は、同様に黒色の細いサングラスをかけていた。あまりにもその色が濃いため、奥の瞳を確認することは出来ない。首から上以外が全てコートで隠れてしまっている。血を吐かされたというのに、彼は未だにコートのポケットから手を出そうとしなかった。
髪はオールバックにまとめられた灰色がかった黒髪。体格はかなり凄まじい。盛り上がった筋肉。肩幅が爪の比較にならない。
そして相手の顔面……その右半分からは、機械のコードのようなものが、いびつに所々飛び出していた。

(……アンドロイドか……?)
以下略



68:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 17:00:32.32 ID:A45p+aH70
「……選べ」

ボソリ、と言葉を発する。
それは、彼が師と話しているときのような、おぼつかなくあどけない喋り方ではなかった。もっと残悪な……邪悪で、どうしようもなくドス黒い、ドロ沼のようなへばりつく喋り方だった。

以下略



69:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 17:00:58.22 ID:A45p+aH70
それを見て、大男は地面を転がってフロアの向こう側に転がり込もうとした。馬鹿にするように鼻を鳴らし、次いで爪は、また上唇を舌でベロリと舐めた。

「メル、ア・レテナ、ゥルポス(逃げんなよ溝鼠)」

そして突き出した右手を、相手に向けて握りこむ。
以下略



70:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 17:01:26.70 ID:A45p+aH70
見た目は、ただのビンタだった。
しかし渾身の力で放たれたそれは、フロアの床をまるでウェハースのように貫通し、そしてその下のフロアも同様に突き抜け……実に五階建てのビル、地下フロアの床下まで突き飛ばした。
床に撃ち当たった瞬間に、大男の体は半分以上が四散してしまっていた。そもそも爪が手を叩きつけた部分が、泥玉を地面にぶつけた時のように握り拳大の肉片に破裂し、周囲の壁に前衛芸術のように張り付いている。
もくもくと立ち昇る床の破片。
そして、頭からずぶ濡れになった――他ならぬ、今しがた爆裂させた相手の血液で――若い魔法使いは、数秒間腰を落とした姿勢のままじっとしてから、大きく深呼吸をした。
以下略



71:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 17:02:01.25 ID:A45p+aH70
叩きつけた相手がぶつかった床は、直径一メートルほどの大穴になっていた。鉄骨や樹脂タイルなどが全て、破砕鉄球で砕かれたかのごとく粉々になっている。その周囲はおびただしい量の血液と肉片でコーティングされていた。

――人間一人が、弾丸のように吹き飛ばされて爆裂した。

その単純な事実をすぐに理解できる者は、おそらく警察でさえもいないだろう。
以下略



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