94:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:27:37.01 ID:vAi26PND0
「んもう! 私真面目に言ってるんだけど? お姉ちゃん……本当にどうにかしないと、次の姫巫女の祭で乗り遅れちゃうよ」
「んー……」
また上の空といった感じで天井を見上げ……そして彼女は再びプカリとお湯の上に仰向けに浮かんだ。まるで劇画のように滑らかな、シルクのような白髪が周囲にばらけていく。
95:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:28:36.05 ID:vAi26PND0
「はぁ? だってお姉ちゃん……ルケン様からサクサンテの花もらったんでしょ。もう殆ど姫巫女決定だよ? もしかして分かってないの?」
「……決定? うーん……そうねぇ……」
分かってなかったらしい。
96:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:29:15.09 ID:vAi26PND0
「うーん……」
「考え込まない。何も考えることなんてないでしょ? もう元老院はお姉ちゃんで決めてるんだよ。それなのに祭で羽なしだって分かったら、どんな辱めに遭うか分かんないよ」
「……うーん……」
97:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:30:05.67 ID:vAi26PND0
妹はそれを聞き、額を抑えてまたため息をついた。
「……分かった」
「ん?」
98:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:30:51.73 ID:vAi26PND0
「……ちょっと、今何て言ったの?」
「ルケンの花なんていらないよ。私の部屋のゴミ箱にあるから、拾ってきていいよ」
「ちょ、ちょ……ちょっとお姉ちゃん!」
99:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:31:59.13 ID:vAi26PND0
「早く服を着る!」
「で……でも、まだ三十分くらいは誰も来ないんじゃないかしら?」
「おばか! 早く花を回収しないと、本当に捨てられちゃうじゃない!」
100:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:32:59.11 ID:vAi26PND0
「え……えぇ…………まぁ……」
「ルケン様の誘いを断ったなんて知ったら、今度はまたどんな嫌がらせされるか分からないじゃない! もういい加減にしてよ。全くこの人は! この人はもう……」
ぶつぶつ言いながらヤナンは濡れたままゆったりとした白いローブを着て、そして頭にすっぽりとフードを被った。
101:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:33:34.56 ID:vAi26PND0
「だって……」
「…………」
「汚いから……」
102:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:34:06.07 ID:vAi26PND0
「……ヤナンは子供なんだよ……」
「子供で結構です。ほら、とっとと着替えてよ早く」
「う……うん……」
103:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:35:41.79 ID:vAi26PND0
取り出されたのは、女性の小指ほどの長さの小さな造花だった。
「これ」
植物繊維で織られているのか、緑色の芯……その先に、まるで針の先で作ったような数重もの白い、五つの花びらを持つ小さな小さな花がくっついている。
104:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:36:14.36 ID:vAi26PND0
思わず唾を飲み込んだ妹の目の前で、姉はあっけらかんと微笑んで、すらりと言い放った。
「マルディがくれたの。綺麗でしょう?」
「は……?」
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