96:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:29:15.09 ID:vAi26PND0
「うーん……」
「考え込まない。何も考えることなんてないでしょ? もう元老院はお姉ちゃんで決めてるんだよ。それなのに祭で羽なしだって分かったら、どんな辱めに遭うか分かんないよ」
「……うーん……」
97:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:30:05.67 ID:vAi26PND0
妹はそれを聞き、額を抑えてまたため息をついた。
「……分かった」
「ん?」
98:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:30:51.73 ID:vAi26PND0
「……ちょっと、今何て言ったの?」
「ルケンの花なんていらないよ。私の部屋のゴミ箱にあるから、拾ってきていいよ」
「ちょ、ちょ……ちょっとお姉ちゃん!」
99:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:31:59.13 ID:vAi26PND0
「早く服を着る!」
「で……でも、まだ三十分くらいは誰も来ないんじゃないかしら?」
「おばか! 早く花を回収しないと、本当に捨てられちゃうじゃない!」
100:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:32:59.11 ID:vAi26PND0
「え……えぇ…………まぁ……」
「ルケン様の誘いを断ったなんて知ったら、今度はまたどんな嫌がらせされるか分からないじゃない! もういい加減にしてよ。全くこの人は! この人はもう……」
ぶつぶつ言いながらヤナンは濡れたままゆったりとした白いローブを着て、そして頭にすっぽりとフードを被った。
101:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:33:34.56 ID:vAi26PND0
「だって……」
「…………」
「汚いから……」
102:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:34:06.07 ID:vAi26PND0
「……ヤナンは子供なんだよ……」
「子供で結構です。ほら、とっとと着替えてよ早く」
「う……うん……」
103:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:35:41.79 ID:vAi26PND0
取り出されたのは、女性の小指ほどの長さの小さな造花だった。
「これ」
植物繊維で織られているのか、緑色の芯……その先に、まるで針の先で作ったような数重もの白い、五つの花びらを持つ小さな小さな花がくっついている。
104:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:36:14.36 ID:vAi26PND0
思わず唾を飲み込んだ妹の目の前で、姉はあっけらかんと微笑んで、すらりと言い放った。
「マルディがくれたの。綺麗でしょう?」
「は……?」
105:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:36:44.05 ID:vAi26PND0
「マルディって……あれ? ……何? もしかしてあんなのの花受け取って、ルケン様の花捨てたの……?」
「だ……だって。ヤナンも見たでしょう。あんなに綺麗な花を作るのよ彼。それにあの人はルケンなんかよりずっと」
「行くよ! 早く花を回収しなきゃ!」
106:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:37:12.01 ID:vAi26PND0
ヒステリックに返して、青くなりながら妹は廊下を走り出した。もはや後方の姉を気にしている余裕なんてなかった。手を離し、姉の部屋へと駆け出す。
(あの人は本当に……)
走りながら、胸の中が電撃を孕んだ毒液に満たされたようにギリギリと痛むのが分かった。
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