83: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:05:17.30 ID:yIkrPX16o
「いけない、いけない、いけない!いけないんだよ、キミ"が"そんなことをしちゃあ!」
と、唐突に少女が叫びだす。中性的に甲高い声が路地に響いた。
あからさまに咎めるような口調だ。やはりこの頭がおかしいとしか思えない少女といえど、殺人行為は容認しがたいものであるようだ。
そして、魔法少女。彼女は自分からそう言った。であるとすれば、やはりこの子は口封じするべき相手なのだろうか。
84: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:06:01.11 ID:yIkrPX16o
屋敷に帰った織莉子は、例によって自室でシーツに包まりベッドの上にいた。
押し寄せるのは自責の念ばかり。
ジェムを砕く瞬間、あの子は唇を微かに動かした。
85: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:06:29.26 ID:yIkrPX16o
キリカは再び織莉子に跪いた。実に恭しい動きだった。
「美しいひと、どうか私をキミの傍に置いてやってほしい。
私はどうにも不勉強で、キミがいかなる状況に置かれているのか知らないんだ。
けれど約束する。私はキミを、決して裏切ったりはしない。
86: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:07:04.84 ID:yIkrPX16o
***
それから奇妙な同棲が始まった。
キリカと名乗った少女は美国邸の一室を間借りし、そこに住みつき始めたのだ。
キリカはいつも織莉子と共にあった。食事を摂るときも、とっ散らかったまま放置されていた庭や悪意に満ちた罵詈雑言がぶちまけられた庭を掃除するときも、いつだって。
87: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:07:38.53 ID:yIkrPX16o
*
「それにしても驚いたね、まさか魔法少女が魔女になるなんて」
「……私の方が驚いたわ。貴女、全然動じてないじゃない」
88: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:08:41.93 ID:yIkrPX16o
***
キリカはこれまで、基本的に新米魔法少女のみをターゲットに狩りを行ってきた。
より効率的に魔法少女狩りを行うために、予め魔女結界にキリカの固有魔法――時間遅延魔法を巡らせ、次いで魔法少女とソウルジェムの関係を明かす。
魔法少女になったばかりで希望に胸満ち溢れている彼女らは、その事実に精神的に強いゆさぶりを受け、本来の戦闘能力の半分も発揮できず一方的に狩られる運びとなるのだ。
89: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:09:12.07 ID:yIkrPX16o
織莉子はベッドに横たわるキリカを見遣った。
その身体は小さかった。
その手脚は細かった。
90: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:09:50.22 ID:yIkrPX16o
キリカは語った。
小銭を拾ってもらったことが全ての始まりであること。
もう一度会いたくて街中を探し歩いて、ようやく見つけた自分には、話しかける勇気が無かったこと。
その勇気のなさを打破するために、キュウべえと契約して魔法少女になったこと。
91: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:10:23.73 ID:yIkrPX16o
翌日の朝、織莉子とキリカは市立見滝原中学校――鹿目まどかの通う学校――の放送室をジャックした。
魔法少女としての身体能力があれば、変身などしなくとも一般人風情を制圧するなどは容易いことだった。
織莉子は演説をする。
この学校に在るすべての人に向けて。
92: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:10:54.19 ID:yIkrPX16o
そうこうしているうちに、追加の魔法少女たちが現れた。
キリカに致命傷を浴びせた巴マミと、隣町を縄張りとする佐倉杏子、織莉子自身がそそのかして契約させた千歳ゆまの3名だった。
4対二、方やベテラン3人に回復能力特化型魔法少女の組み合わせ、方や契約して一月も経っていないルーキーが二人。
彼我の戦力差は明らかだと言えるだろう。下手を打てばリンチにすらならない。
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