過去ログ - 妹「なぜ触ったし」
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845:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:01:37.12 ID:5zJPOgVlo

 俺はアキに背を向けて駆け出した。彼女は何も言わなかった。

 頭が混乱して、うまく回らない。
 おいおい、と俺は思った。俺はまた、アキの言葉を信じるのか?
以下略



846:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:02:07.21 ID:5zJPOgVlo

 アキにしては珍しく、たしかにマトモな発言だ。
 もし彼女の言葉をすべて信用するなら。

 そうだ、嘘っぱちなのかもしれない。
以下略



847:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:02:39.86 ID:5zJPOgVlo

 けれど、俺は走っている。とにかく走っている。足は自然とある方向へと動いていった。
 彼女がどこに逃げたのか、俺には分かっていた。
 いや、俺は彼女が逃げる場所を知っていたのだ。

以下略



848:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:03:27.94 ID:5zJPOgVlo

 俺が足音を立てても、彼女は俯けた顔をあげようとはしなかった。
 鳥居をくぐって少し進んだ右手に、大きな樹がある。その枝が、上空を暗く覆っているのだ。
 夏になると葉陰が心地よく、風のざわめきが心地よい。そういう場所だ。

以下略



849:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:03:55.64 ID:5zJPOgVlo

 小さな声だった。俺は戸惑う。
 初めて見る態度だった。こんなことを言われたことは一度もなかった。いままで一度も。

 だから俺は一瞬立ち止まっておきながら、また一歩踏み出した。
以下略



850:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:04:28.35 ID:5zJPOgVlo

 泣き疲れたような声だった。彼女の目に涙は浮かんでいなかったし、表情は眠たげなだけで、寂しそうにも見えない。
 それでも彼女は泣いていたのかもしれない。あるいは俺の自意識過剰なのかもしれない。

 俺はこいつの考えていることが分からない。ずっと前からなにひとつ。
以下略



851:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:04:54.77 ID:5zJPOgVlo

「だからあの子の言ってることが嘘だなんて知ってる。でも、きみの気持ちまでは分からないから」

 彼女の声は曇天の下の神社に透明に溶けていった。何もかもを透き通ってしまいそうな声だった。

以下略



852:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:05:20.66 ID:5zJPOgVlo

 彼女は自嘲するように笑った。

「ストーカーみたい。気味悪がってくれて、いいですよ」

以下略



853:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:05:55.67 ID:5zJPOgVlo

「それ、どういう意味です?」

 俺は言えなかった。その言葉を自分で言うのは、ひどく白々しいことだと思えたからだ。
 彼女は呆れたように言う。
以下略



854:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:06:27.47 ID:5zJPOgVlo

「あの子なんて、放っておいたって害はないですよ。どうせ口先だけで、何もできやしないんです。そういう子です。よく分かります」

「……どうして?」

以下略



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