過去ログ - 男「銀河鉄道は」女「夜の街に」
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41:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:38:37.30 ID:bOaug2Ec0

河原のれきは、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃに曲がった地層のかけらや、また角から霧のような青白い光を出す鋼玉やらだった。

男はその渚に行って、水に手をひたした。
けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのだ。
以下略



42:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:39:30.43 ID:bOaug2Ec0

男「女、あっちにも行ってみようよ。」

女「うん、ちょっと待ってて。」

以下略



43:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:41:08.10 ID:bOaug2Ec0

その白い岩になった処の入口に、
〔プリオシン海岸〕という、瀬戸物のつるつるした標札が立って、向うの渚には、
ところどころ、細い鉄の欄干も植えられ、木製のきれいなベンチも置いてあった。

以下略



44:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:42:14.17 ID:bOaug2Ec0

だんだん近付いて見ると、一人のせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長靴をはいた学者らしい人が、手帳に何かせわしそうに書きつけながら、鶴嘴をふりあげたり、スコープをつかったりしている、三人の助手らしい人たちに夢中でいろいろ指図をしていた。

「そこのその突起を壊さないように。スコープを使いたまえ、スコープを。
おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない。なぜそんな乱暴をするんだ。」
以下略



45:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:43:43.71 ID:bOaug2Ec0

「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。
ごく新らしい方のバタクルミというやつさ。
ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。
いま川の流れているとこに、そっくり塩水が寄せたり引いたりもしていたのだ。
以下略



46:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:45:13.74 ID:bOaug2Ec0

女「いま何時?」

女が男の腕時計を覗き込みながら言った。
男も見ると、もう少しで汽車が出る時間だった。
以下略



47:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:49:34.11 ID:bOaug2Ec0


八、鳥を捕る人


以下略



48:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:50:58.00 ID:bOaug2Ec0

汽車はもう、しずかにうごいていたのだ。
車室の天上の、一つのあかりに黒い甲虫がとまってその影が大きく天井にうつっていた。

女は、なぜか先生に怒られている生徒のように、下を向いてじっとしていた。
以下略



49:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:52:36.31 ID:bOaug2Ec0

ところがその人は別に怒ったでもなく、頬をぴくぴくしながら返事した。

「乗客の行くべきところです。わっしは、鳥をつかまえる商売でね。
仕事場所に向かうときに、よくこの汽車にお世話になるんですよ。」
以下略



50:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:54:02.69 ID:bOaug2Ec0

「そいつはな、雑作ない。さぎというものは、みんな天の川の砂が凝って、ぼおっとできるもんですからね、
そして始終川へ帰りますからね、川原で待っていて、鷺がみんな、脚をこういう風にして下りてくるところを、
そいつが地べたへつくかつかないうちに、ぴたっと押えちまうんです。
するともう鷺は、かたまって安心して死んじまいます。
以下略



51:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:55:24.29 ID:bOaug2Ec0

「違うもなにもありませんや。そら。」

その男の人は立って、網棚から包みをおろして、手ばやくくるくると解いた。

以下略



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