過去ログ - 見習い魔法使いのいつもと違う一日
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:26:17.37 ID:kZDZdb8No
ある朝、リリーは目を覚ました途端に悲しくなってしまって涙をこぼした。
なんでなのかすぐには分からなかったけれど、少し考えてみて気づいた。
今日は友だちのタビとお別れする日だ。
それもただのお別れではない。きっと、もう絶対に会えなくなってしまう、そういうお別れなのだ。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:28:24.55 ID:kZDZdb8No
猫のタビはいつも眠そうで、それでも朝は誰よりも早く起きだしてくる。のだけれど。
今日はリリーが寝間着のまま部屋を飛び出して探しまわっても、どこにも見当たらなかった。
いつもは来ることのない屋根裏に上ってみると、黒いふさふさが古びたクッションの上に丸まっていた。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:29:03.45 ID:kZDZdb8No
「タビ、タビ!」
声をかけてゆすってみてもタビはうんともすんとも言わない。
いろいろ試しても駄目なので、リリーは慌てて師匠の部屋に向かった。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:29:38.13 ID:kZDZdb8No
リリーは走り寄って毛布を剥がしにかかった。
それに抵抗しながら師匠がむにゃむにゃと言う。
「訳分からなくはないよ。今は朝だけど夜なんだ」
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:30:15.27 ID:kZDZdb8No
師匠は一瞬動きを止めて、それからゆっくりと身体を起こした。
「……リリー。これはなんだい?」
「さあ。適当に棚にあったのを持ってきました」
抵抗がなくなったので、リリーは毛布を完全に奪い取ってやった。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:30:42.39 ID:kZDZdb8No
「で。今日はこんな朝早くにどうしたんだい?」
「そうです、大変なんですよ!」
「寝ぼけて魔法で壁に穴開けたとか?」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:31:08.94 ID:kZDZdb8No
屋根裏に引き返すと、タビはまだそこで丸まっていた。
師匠を起こしに下りる前と少しも変わっていない。
師匠はそれを見てやっぱり眠そうにぼりぼりと頭を掻く。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:31:39.19 ID:kZDZdb8No
「そうだっけ?」
「ああ、師匠はいつもおそ起きですから知らないかもしれませんね」
ふうむ、と師匠は顎に手を当てた。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:32:07.15 ID:kZDZdb8No
「ちがいますよう。だってわたし、嫌な感じがしましたし」
リリーがそう言うと、師匠は鋭く目を細めた。
「それは、本当かい?」
「はい」
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:32:33.87 ID:kZDZdb8No
「そんなの分かってますよ。分かってても言わないようにしてたのに!」
さすがにむかっ腹がたって強く師匠を睨んだ。
それでも動じてくれないのが師匠なのだが。
「分かってても本人が言えないことは、誰かが代わりに言ってあげなくちゃいけないね」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/05(月) 22:33:30.15 ID:kZDZdb8No
「タビ……」
タビの体は温かかった。
いつもは触ろうとすると怒るので、こうやって体温を感じることすらなかったのだけれど。
なんだかそのぬくもりが無性に悲しい。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/11/05(月) 22:34:49.31 ID:kZDZdb8No
つづく
短めに話を組んだので、多分三日四日で終わるはず
もしよかったらどうかお付き合いを
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)[sage]
2012/11/05(月) 22:37:58.79 ID:ikuxvg+yo
おつ。面白そう
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/11/06(火) 18:16:13.35 ID:F7JvMVSIO
ほう
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/07(水) 22:08:44.83 ID:go5bAEUEo
リリーは勘の良い、というか"見えてしまう"女の子である。
といっても別にお化けとかは見えない。そういうのはいないと思う。
けれど、普通の人が気づかないことに気づいたり、知りえないことを知ってしまうことがあるのだ。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/07(水) 22:09:17.62 ID:go5bAEUEo
そんな人に預けられるのだからまあ、ていよく厄介払いされたと見ることもできる。
ただ、リリーはそのことについてはあまり考えない。
考えてももう仕方ないし、魔法の勉強に忙しいのでそれどころじゃなかったから。
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/07(水) 22:09:47.20 ID:go5bAEUEo
書かれているのは薬の調合方法だ。
「"むやみやたらと元気になる薬"!」
元気がない人もこれ一本。飲めばたちまち元気百倍。ただし予想外の方向に元気になっても責任は負いません。
最後の注意書きが気にはなったがとにかく、タビを助けるためにリリーが知恵を絞った結果がこれだった。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/07(水) 22:10:24.85 ID:go5bAEUEo
他の材料は問題ない。その辺や森に入れば大体手に入るし屋敷の蔵にもいろいろある。
ただ、月王草だけはそこらで摘んでくるというわけにはいかない。
不老長寿の力を持つとも言われる、珍しい、貴重な草なのである。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/07(水) 22:10:55.97 ID:go5bAEUEo
森のほとりの屋敷を出てしばらく。
風が肩までの金髪をもてあそぶのに任せて歩いていると、道の先に粗末な柵囲いが見えてきた。
村の境界だ。ここを抜けてもっと歩くと町がある。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/07(水) 22:11:26.13 ID:go5bAEUEo
「あー!」
悲鳴とも怒りともとれる声がして、近くの家の陰から帽子をかぶった少年が姿を現した。
「なにするんだよせっかく仕掛けたのに!」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/07(水) 22:11:58.54 ID:go5bAEUEo
「誰かが引っかかったら、その人困っちゃう」
「そこがいいんだろ」
「誰かが困るのを防いだんだから、わたしは悪魔じゃなくていい人よね?」
「うん? ううん……」
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