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2013/06/15(土) 06:58:21.61 ID:x3h76RAXo
◇
丘の下の街並みは、実際に歩いてみると、見下ろしていたときよりも、ずっと大きく、広く思えた。
石畳の通りを歩きながら、雨の降り続く街を歩く。
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2013/06/15(土) 06:58:48.51 ID:x3h76RAXo
シラユキは黙り込んでいる。
わたしが街に向かうと言ってから、彼女の態度は明らかに変だった。
何か言いたいことがあるのに、それを言うことができないというような表情。
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2013/06/15(土) 06:59:17.17 ID:x3h76RAXo
背の高い石造りの建物が通りの両側を囲んでいた。
わたしはなんだか奇妙な気分になってくる。
わたしも、シラユキも傘をさして歩いていた。
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2013/06/15(土) 06:59:46.83 ID:x3h76RAXo
「……ねえ、シラユキ。わたしはずっと思っていたんだけど」
わたしは彼女の横顔をひそかに眺めながら、訊ねた。
シラユキの表情は透明で、雨の街の中で、静かに消えてしまいそうにすら見えた。
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2013/06/15(土) 07:01:27.29 ID:x3h76RAXo
それは、つまり、どういうことなのだろう。
よく分からない。でも、このままでは不可能、という言葉は、なんだかわたしを不安にさせた。
彼女の言葉が本当なら、わたしは一度出直すべきなのか。
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2013/06/15(土) 07:02:04.38 ID:x3h76RAXo
わたしはその言葉に、さらに不安を掻き立てられた。
シラユキはわたしを促すと、広場への道を先導した。
「シラユキ?」
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2013/06/15(土) 07:04:01.71 ID:x3h76RAXo
輪の中心の地面は大きな円形に高く盛り上がっている。
ちょうど人々の胸のあたりの高さで、奥から昇るための階段があるらしい。
その中央には、背の高い男性二人に捕らえられた、ツキの姿が見えた。
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2013/06/15(土) 07:04:45.47 ID:x3h76RAXo
静寂が広場を包む。
ほかの人々に遅れて、ツキが顔をあげ、わたしを睨んだ。
思わず、息を呑む。
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2013/06/15(土) 07:05:32.28 ID:x3h76RAXo
「御嬢さん」
と声がした。聞き覚えのある声。わたしはその声に、強い抵抗を覚えた。
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2013/06/15(土) 07:06:04.56 ID:x3h76RAXo
男は首をかしげた。心底不思議そうな顔。
「ツキ」
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