85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:16:51.30 ID:eYA5xb04o
  
  昼食を取ったあとも、シラユキの仕事は続く。わたしはそれを追いかける。 
  夕方を過ぎ、日が沈み、雨音が夜の闇に沈む。 
  
  夕食を作らなくては、と言ったシラユキを追って、わたしも厨房へ向かう。  
86:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:17:17.92 ID:eYA5xb04o
  
  そもそもわたしは、自分がなんなのかすら、よくわかっていない。 
  何が起こっているのかも、まったくわからない。 
  
  考えるな、とわたしは思った。忘れるんだ、何もかも。 
87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:17:51.21 ID:eYA5xb04o
  
 ◇ 
  
  夕食を食べ終えて、シラユキが食器を片づける。 
  部屋に戻る気にもなれなかったけれど、シラユキを追いかける気にもなれなかった。 
88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:18:54.16 ID:eYA5xb04o
  
  シラユキが洗い物を終えて戻ってくる。彼女は食事を作るのも片付けるのも、手際がいい。 
  もっとも、二人分なのでそう手間がかからないだけかもしれないが。 
  今日は買い物に行かなかったから、明日、シラユキは街に行くのだろう。 
  
89:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:19:23.07 ID:eYA5xb04o
  
  彼女は少し困ったような顔になる。わたしは少し後悔した。 
   
 「わたしには直接、何かが起こったわけではありませんから。上手く実感できないのかもしれません」 
  
90:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:21:52.24 ID:eYA5xb04o
  
 「いくつか、理由を言うことはできます」 
  
  ゆっくりと口を開いたシラユキの表情は、どことなく考えをまとめるのに苦労しているようにも見えた。  
   
91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:22:59.57 ID:eYA5xb04o
  
 「それから、この屋敷に人を呼んで見張りをしてもらうこともできません。 
  街にはあまり人がいませんし、ここは丘の上ですし……。 
  ましてや、そうなると寝ずの番か、それに近いことをしてもらうことになります。 
  証拠もなしにそんなことをしていただくわけにはいきません」 
92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:23:30.54 ID:eYA5xb04o
  
  けれど最後に、ひとつだけ、わたしは訊ねることにした。 
  
 「本当に大丈夫だと思う?」 
  
93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:24:37.21 ID:eYA5xb04o
  
 「だめかな?」 
  
 「子供じゃないんですから」 
  
94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 08:26:11.81 ID:eYA5xb04o
  
 ◇ 
  
  それからわたしたちは一緒にお風呂に入って、シラユキの部屋で一緒に眠った。 
  不思議と、穏やかな夜だった。雨の音がとても優しく聞こえるような。 
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