過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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50: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:25:17.03 ID:zNvxktpKo
『勇者と魔王の物語』がある。
世界のどこに行っても、細部は違えど同じ物語を描いた本があった。
だが、結末はみな同じだった。
すなわち――――『勇者』が、『魔王』を討滅する、あの栄光の勝利。
そしてそれを三人は、目の前で見る事ができた。
以下略



51: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:26:18.71 ID:zNvxktpKo
――――――――

決戦を終えた大広間の大きく重い扉をくぐると、彼らの背後で続けざまに轟音が鳴り響いた。
崩れた天井が瓦礫と化して、大広間を埋め尽くしていく。

以下略



52: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:26:46.12 ID:zNvxktpKo
戦士「……!?」

ふと、戦士が前方に目をやり、立ち止まる。
そのまま手を広げ、後方に続いた二人を制して立ちはだかった。

以下略



53: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:27:28.23 ID:zNvxktpKo
僧侶「諦めてはいけません」

力強さを秘めた呟きが、今なお轟音とともに崩壊を続ける魔王城に、はっきりと響いた。

僧侶「諦めてはいけません。……私たちは、生きなければならないのですから」
以下略



54: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:28:19.83 ID:zNvxktpKo
直後、金属が石畳へ落ちる音がけたたましく鳴り響いた。
先ほどまで動いていたはずの甲冑達が、次々に崩れてゆく。
高次にある霊体の魔物が、憑代であるはずの甲冑から抜け出ていく。
それに気付けたのは、僧侶だけだ。

以下略



55: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:29:15.16 ID:zNvxktpKo
もはや、時間は無かった。
背後を見ればほぼ瓦礫に埋まり、行きて戻りし魔城の回廊は存在しない。
最後の勇者の『作戦』を反故にはできなかった。

魔法使いが杖を一振りすると、赤く輝く光の扉が、目の前に開いた。
以下略



56: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:29:46.08 ID:zNvxktpKo
彼女の体の、どこからこんな力が生まれるのか。
僧侶が必死に踏ん張りを効かせても、ずるずると寄り切られる。
魔法使いは瓦礫の山となった回廊を、聞かん坊のように戻ろうとしていた。

僧侶「もう、戻れません! もう――――」
以下略



57: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:30:37.89 ID:zNvxktpKo
*

虫の声で目が覚めた時、最初に見えたのは、厚手の暗緑の布だった。
眼球を動かしてみれば、視界の全てがそれに覆われていて、少し思索を巡らせれば思い当たった。
ここは、『旅』で使っていたテントの中だ。
以下略



58: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:31:06.99 ID:zNvxktpKo
僧侶からの答えは、無い。
代わりに彼女の視線は揺れて、焚き火を、見つめるでもなく見た。

魔法使い「……あ、っそ。…………やれやれ、参るわ」

以下略



59: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:31:36.20 ID:zNvxktpKo
魔法使い「『まほー』なんて使えたってさ。結局こんなもんなのよ。……ねぇ、教えてくれる?」

僧侶「はい、何でしょうか?」

魔法使い「……『神さま』を持ってるって、どういう感じなの?」
以下略



60: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/24(金) 00:32:42.85 ID:zNvxktpKo
地面に直に座り、帽子を深くかぶり直す。
夜露で湿った草が尻を湿らせ、不快だった。
しかしそのまま、膝を抱え込むような姿勢で火を見つめた。

朝が来れば、転移の呪文で最寄りの村へ飛ぶ。
以下略



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