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2013/06/12(水) 20:51:10.57 ID:vLNSj/6Bo
 真奥「……うーむ」 
  
 時刻は深夜に差し掛かる頃。 
 花の金曜日ということもあり、酒に酔う人々で溢れる中、彼は目的の店の前に立っていた。 
 あらかじめ目星をつけていた店。あとは入店するだけだったが、彼の足は動かなかった。 
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2013/06/12(水) 20:51:37.45 ID:vLNSj/6Bo
 悩んでいたのは一瞬か、数分か、数十分か。 
 その間俯いていた真奥が、ふと顔を上げた。 
 その表情は晴れやかで、だがどこか寂しげだった。 
  
 真奥(……やめよう) 
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2013/06/12(水) 20:52:11.19 ID:vLNSj/6Bo
 店員「申し訳ありません、ただ今カウンターも満席でして……」 
  
 真奥「あ、そうですか。えーと……」 
  
 さすがに週末だけあり、入った店は満席だった。 
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2013/06/12(水) 20:52:38.01 ID:vLNSj/6Bo
 真奥「……鈴木さんだっけ? あの、何なのこれ」 
  
 真奥は立ったまま、憂鬱な顔で梨香に向かってそう言った。 
 恵美の顔は真っ赤に紅潮しており、目は虚ろだ。明らかに出来上がっていた。 
 どうにも嫌な予感しかしない。 
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2013/06/12(水) 20:53:13.86 ID:vLNSj/6Bo
 恵美は話を聞いている様子もなく、枝豆の皮を剥く作業に熱中していた。 
 手がすべり落下する枝豆を見て、それでいいのか勇者と敵の心配をする真奥。 
  
 梨香「恵美のことどう思ってる?」 
  
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2013/06/12(水) 20:53:41.50 ID:vLNSj/6Bo
 残存魔力のほとんどない今の真奥を殺すのは、恵美にとって容易いことだ。 
 だが行きがかり上共闘し、馴れ合いのような関係になり、いつのまにか争い合うような空気はなくなった。 
 口喧嘩はするものの、本気の殺し合いなど日本に来てからしていない。 
 それは改めて指摘されれば、確かに腑に落ちないことだった。 
  
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/12(水) 20:54:12.17 ID:vLNSj/6Bo
 真奥「お前らよくこの辺で飲むの?」 
  
 恵美「たまにね。このクズ」 
  
 真奥「……お前実年齢十七だよな? 酒いいのか?」 
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2013/06/12(水) 20:54:42.45 ID:vLNSj/6Bo
 ああ、やはり大して興味もない話題など振るんじゃなかった。 
 そう頭を抱える真奥だったが、意外にも恵美が会話を繋いだ。 
  
 恵美「……どうせ、私は根に持つ女よ」 
  
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2013/06/12(水) 20:55:15.84 ID:vLNSj/6Bo
 真奥「戦争責任って言葉があるよな」 
  
 真奥「なるほど確かに、俺らは侵略者だ。お前ら人間には恨む権利があるし、俺らは文句を言える立場じゃない」 
  
 真奥「だがな、そういうことを全部置いといたとしたら――」 
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2013/06/12(水) 20:55:45.03 ID:vLNSj/6Bo
 恵美「梅酒。ロックで」 
  
 真奥「梅酒ロックもう一つ。あとナスの漬物。……なあお前、飲み過ぎじゃね?」 
  
 恵美「何が……余裕に決まってる、でしょ」 
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2013/06/12(水) 20:56:11.67 ID:vLNSj/6Bo
 真奥「くっそ、起きろよお前……つーか金払えよ! 割り勘だからな!」 
  
 恵美「んー……」 
  
 真奥は恵美の腕を自分の肩に回し、無理やり立たせていた。 
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